国立や都立の大型美術館、来館者の多い定番美術館が建ち並ぶ東京。しかしそれだけではありません。東京には数多くの、魅力あふれる個性的な美術館があります。もっと多くの方に観覧していただきたい、お薦めのアートスペースをまとめて紹介します。
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2022年にリニューアルオープンしました。積極的に告知されていませんが、エントランス前のスペースに来館者用駐車スペースが3台分あります。現代彫刻、古代東洋彫刻の常設展示と、企画展示室、そして美術館の庭園鑑賞が楽しめるコンパクトなアートスペースです。
南青山の住宅街に、2020年に開館した美術館です。500点以上の作品を蒐集した「ヨックモックコレクション」の中心は「ピカソ セラミック」。様々な企画展を通じてピカソの創造性が紹介されます。デザインされた館内、中庭に面したお洒落なカフェ&ミュージアムショップが魅力的な美術館です。
皇居のほとり、建て替えられた丸紅ビル内に、2021年に開館した美術館です。丸紅が蒐集した美術コレクションを中心に、企画展が開催されます。丸紅ギャラリーのコンセプトは「古今東西の美が共鳴する空間」。コレクションの中心は、染織品、染織図案、絵画。サンドロ・ボッティチェリの「美しきシモネッタの肖像」を所蔵しています。
人気タウン中目黒の、目黒川のほとりに建つ現代日本画を紹介する美術館です。年間4本から5本の所蔵品による企画展と「桜百景」展が同時開催され、館内では一年中満開の桜の絵を楽しめます。ここは2012年に開館した東京館。他に2006年に福島県郡山市に開館した「郷さくら美術館」があります。
大倉財閥オーナー二代が蒐集した美術工芸品が約2,500点。その内、国宝が3点、重要文化財は13点を収蔵します。伊藤忠太博士の設計による建物は都の歴史的建造物。2019年に免震構造化してリニューアルオープンしました。建物の周りには数多くの作品が屋外展示されています。外も内も、見どころ満載の美術館です。
大倉集古館の近くに建つ「非日常の空間で、作品に出合う。」がコンセプトの美術館です。2003年に現代陶芸のコレクター菊池智氏が創立。常設展はなく、年間3本から4本の展覧会が開催されています。大正期の西洋館や蔵、日本庭園が残る邸宅地にあり、地階の展示室へはガラスの手摺りがある螺旋階段を下ります。非日常が楽しめる美術館です。
上皇后様がこれまでに5回行啓されたことがある美術館です。2019年に大規模改修が行われ、新しい施設に生まれ変わりました。常設展はなく、年間6本程度の企画展が開催されます。緑豊かな赤塚城址公園の一角に建つ、お洒落なデザイン建築が魅力の区立美術館です。
美術大生に奨学金を提供する財団が運営する施設で、学生の作品を紹介する無料の企画展と、プロの作品や所蔵品を展示する有料の企画展が開催されます。常設展はありません。蒐集している作品は「花と緑、自然をテーマとする現代日本画」が中心です。興味のある企画展を見つけて出かけるタイプの美術館です。
日本画家の川端龍子が自ら設計、建設した記念館で、隣接地には龍子の居宅とアトリエを公開する龍子公園があります。記念館の展示室は龍子の大作が展示できる大きな空間。記念館、居宅、アトリエの建物の外装内装や調度品などは、龍子こだわりのデザイン。お庭にもこだわりがあります。お薦めの穴場文化施設です。
守一氏の居宅を活用した豊島区立の施設です。所蔵作品数は153点。常設展が基本ですが、たまに特別展などが開催されます。熊谷守一氏の作品を鑑賞する楽しみに加えて、守一氏の波乱の人生が紹介されている展示が面白い美術館です。ここを観覧すると、守一氏のキャラクターがよく分かります。
「都立府中の森公園」内に2000年に開館した美術館です。1Fはパブリックスペース、2Fが展示室で、企画展示室、常設展示室、牛島憲之記念館があります。企画展は年間4本程度を開催。それに併せて常設展も展示替えされます。広い公園に建つグッドデザインなバリアフリー美術館です。
目黒川沿い、複数の公共施設がある「区民センター公園」に隣接して建つ区立美術館です。コレクションは2,300点超で、蒐集方針は「明治以後海外で学んだ日本人作家」「目黒区にゆかりの作家」です。年間で7本前後の企画展が開催されます。館内は上質なアート空間です。
都立砧公園内に建つデザイン建築の美術館です。レストラン、カフェ、パブリックスペース。緑豊かな公園に溶け込んだアートスペースです。収蔵品は約1万6千点。企画展とコレクション展が、それぞれ年間5本前後開催されます。屋外展示作品も魅力です。
損保ジャパン本社ビル敷地内に新築された、ゴッホの「ひまわり」を所蔵する美術館で、定期的に企画展が開催されます。常設展はありませんが、「ひまわり」だけは常設展示され、どの企画展でも鑑賞そして記念撮影ができます。
現代アートの発信拠点、世界のアート、日本の若手アーティストを取り上げた展覧会、講演会、ワークショップなどを開催するプライベート美術館です。常設展はなく、年間3本から5本程度の企画展覧会が開催されています。1FとB1のミュージアムショップも、素敵なアート空間です。
ビル内にあるコンパクトな美術館です。キャッチコピーは「気軽に親しめるくらしの中の美術館」。年間5本程度の企画展と常設展が開催されます。面白い切り口の「気軽に楽しめる」企画展が魅力です。
吉祥寺の繁華街のビル7Fにある武蔵野市立の施設です。企画展示室と2つの常設展示室がある美術館で、企画展は年間5~6本開催されます。常設の浜口陽三氏の銅版画「浜口陽三記念室」と、萩原英雄の木版画「萩原英雄記念室」には、凛とした空気が流れます。
中村橋駅から徒歩3分。3F構造で、1Fが区立図書館、2Fと3Fが「練馬区立美術館」で、有料無料の各種企画展が開催されます。美術館の庭が「美術の森緑地」で、天然芝の広場に20種類32体の動物系彫像群が展示される「幻想美術動物園」が無料公開されています。巨大な熊像は必見です。
日本で唯一の版画専門美術館。コンセプトがユニークです。芹ヶ谷公園という大きな公園の入口に建つ、町田市立の施設です。2フロア構造で2Fが展示室。常設展示室と企画展示室が2室あり、常設展示室では、広重などの浮世絵版画や、棟方志向、池田万寿夫などの版画作品、ヨーロッパで製作された古い版画作品などが展示されます。
日本美術刀剣保存協会が運営する、日本刀の専門博物館です。隅田川沿いの旧安田庭園に隣接しています。常設展は無く、企画展が年間5本程度開催され、熱心なファンが日本刀を凝視します。初学者は、日本刀の魅力を紹介する1Fの情報コーナーから見学してください。
墨田区生まれの葛飾北斎をテーマにした美術館です。建物は4フロア構造で、3Fと4Fが展示室。4Fの半分のスペースが常設展示室で、4Fの残り半分と3Fが企画展示室です。常設展の展示はほとんどがタッチパネル方式で多言語対応。2016年に開館した、グローバルな展示が採用されている施設です。
室町時代から700年を超える家系。肥後細川家の屋敷跡、目白台の高台に建つ施設です。細川家に伝わる6千点余の美術工芸品と8万8千点余の歴史文書を所蔵。国宝が8点、重要文化財は34点あります。季節ごとにテーマを定め、展覧会が開催されます。隣接する肥後細川庭園は無料公開されている日本庭園です。
パナソニック東京汐留ビル内に、企業の社会貢献活動として設立された美術館で、電機メーカーの矜持、展示室のハイテクな照明設備が自慢です。常設展はなく、年に4本ほど企画展が開催されます。2013年の開館10周年記念特別展は「幸之助と伝統工芸」でした。
展示室は静寂の空間。そこに仏教美術が展示されます。別にハイテクシアターがあり、仏教文化に関する映像プログラムが放映されます。一つ一つの美術品にしっかり向き合える美術館です。
安藤忠雄氏が設計して建築物が並ぶ仙川「安藤ストリート」の中核施設です。デザインされた建築は、内外ともに必見。そのアート空間で企画展が開催されます。周囲の建築物もぜひご覧ください。
近代洋画家の中村研一氏の旧居宅の敷地に建つ美術館です。中村研一作品を中心にしたコレクション展が、年間4回程度の展示替えを行いながら開催されます。美術館は庭が「美術の森緑地」で通称は「はけの森」。河岸段丘「国分寺崖線」にある崖の庭園です。
三鷹駅南口の駅ビル「CORAL」5Fにあります。「太宰治展示室」と2つの展示室があるギャラリーです。アクセスは三鷹駅直結、車利用の場合は駅ビルの有料地下駐車場の利用が便利です。20時まで開館している勤め帰りに立ち寄れる市民のためのギャラリーです。
以上、東京の個性が輝くお薦めの穴場的アートスペース、美術館情報でした。
(本稿は2021年6月に執筆しました)