神奈川県川崎市の生田緑地内にある美術館です。生田緑地は山を利用した自然公園で、園内は激しいアップダウンがあります。そして岡本太郎美術館も傾斜地に建ちます。車椅子で観覧する際の最大の問題は、美術館までのルート、園内の急坂対策です。現地の状況を紹介します。
○通常のアクセスルート
向ヶ丘遊園駅からは、アップダウンがあるルートを通り、徒歩17分の案内です。車椅子利用者がアクセスするなら、マイカーまたはタクシーの利用をお薦めします。
生田緑地には、東口と西口の2ヵ所の入口があり、それぞれ来園者用の駐車場が用意されています。
岡本太郎美術館への一般的なアクセスは、近いので西口の利用が薦められています。西口駐車場は障害者用駐車スペースが2台分あります。また生田緑地の駐車場は、駐車料金の障害者減免制度があり、障害者手帳の提示で無料に減免されます。西口駐車場なら「西口サテライト」、東口駐車場なら「東口ビジターセンター」で、駐車券と障害者手帳を提示すると、駐車券に減免処理をしていただけます。
しかしながら、西口からの岡本太郎美術館へのアクセスルートは、最短路は階段路で、段差を迂回して「かわさき宙と緑科学館」方面へ向かうルートは長い急坂路です。ベビーカーが苦戦する傾斜です。介助者も含めて、よほど体力がある人でない限り、車椅子での往復は困難な坂道です。ただし段差はなく、滑り止め用の路面の小さなデコボコは、路面の半分は埋められて解消されています。西口からの別ルート「生田緑地ゴルフ場クラブハウス」内からのルートも、同じく長い急坂路です。
東口からのルートも傾斜路ですが、西口からのルートに比べれば、まだ楽です。悪さ比べになりますが、車椅子利用者は東口からのアクセスをお薦めします。
○駐車場の混雑状況とマイカー特別乗り入れ
生田緑地は人気の公園で、駅からの距離があるためか、好天の週末などは駐車場が大混雑します。午前中の早い時間から満車になることも珍しくありません。ただし東口、西口駐車場とも、ある程度までは路上待機が可能です。ピーク時間帯は30分待ち以上を覚悟する駐車場です。
園内のアップダウンが激しいために、身体障がい者が岡本太郎美術館を利用する場合は、事前連絡制で園内への車両の乗り入れが許可されます。ただし駐車は認められません。美術館で降車したら、車両はすぐに園外へ出なければなりません。
したがって、車椅子利用者が自分で運転する車両は利用できません。また同行者が運転して、一緒に美術館を観覧する場合は、運転者が戻るまで待つ必要があります。往復に時間がかかることに加え、駐車場が大混雑している場合、その待ち時間が加算されます。
○美術館エントランス周辺のバリアフリー状況
美術館は1999年開館ですが、バリアフリー仕様です。通常ルートである生田緑地の「奥の池」方面からアクセスすると、美術館のB1につきます。美術館のエントランス1Fまで通常は階段で上がります。正面左側にエレベーターが1基あり、B1から2Fを結びます。車椅子ではこの外エレベーターで1Fへ上がり、美術館入口に向かいます。
美術館のエントランスは段差なく、出入口は自動ドアです。
館内に入ると円形のエントランスホールがあり、天井のドームから光が差し込んでいます。
○障害者減免制度とバリアフリートイレ
岡本太郎美術館の観覧券は通常は自動販売機で購入します。観覧料は障害者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。エントランスホールの受付に障害者手帳を提示して、無料鑑賞券を発券していただきます。
バリアフリートイレはエントランスホールの横に1つあります。小型のユニバーサルベッドが用意されています。
○展示室内のバリアフリー状況
常設展示室、企画展示室とも1Fにある構造で、エレベーターを利用せずに観覧できます。展示室内は一部段差箇所がありますが、そこを迂回してすべて観覧できます。また大型作品が多く、車椅子から見難い気になる展示品はありません。全体的に車椅子での観覧に大きな問題はありません。
岡本太郎氏は1996年没。生前からの活躍を知っているのは、概ね40代以上の人でしょうが、今回取材時は、10代20代の来館者が大勢見受けられました。太郎氏の制作風景のビデオを若い人が熱心に視聴しています。
○母の塔周辺のバリアフリー状況
展示室を出るとミュージアムショップがあります。フラットな店舗なので車椅子で利用できます。その先には記念撮影コーナーがあります。
出入口から退館します。前出の外エレベーターで2Fへ上がると「母の塔」の高さに出ます。
広場スペースを抜けた先の「母の塔」へは数段の下り階段がありますが、横に段差回避スロープが用意されています。
その先に芝生広場があります。「生田緑地ゴルフ場クラブハウス」内からの急坂路を進むルートでは、この広場に出ます。
○かわさき宙と緑科学館のバリアフリー状況
他に生田緑地内にある車椅子で利用できる施設は「かわさき宙と緑科学館」です。1Fにバリアフリートイレがあります。
1Fには無料展示室があり、川崎や生田緑地の自然を紹介しています。
またプラネタリウムがあり、観覧料は障害者減免制度があります。
エレベーターで上がる3Fには「アストロテラス」があり、生田緑地を眺めることができます。
川崎市岡本太郎美術館への車椅子でのアクセスは、マイカーまたはタクシーで東口に行き、そこから生田緑地に入り、傾斜路を上がりエントランスに向かうルートをお薦めします。
(本稿は2021年2月に執筆しました)