和歌山県和歌山市の「和歌山城公園」は、無料動物園がある市民憩いの公園ですが、公園内は段差があり車椅子で一周できません。車椅子からみた現地のバリアフリー状況を紹介します。
名城和歌山城。再建された天守閣は2018年で60周年です。お城の遺構をそのまま残した公園ですから、基本は段差構造で、車椅子での観光には限界があります。ただし元々の有り様を変えない範囲での、和歌山市によるバリアフリー化への取り組みがあります。
公園内の各所に決定的なバリアポイントがあります。車椅子でそのまま通行可能なルートは、公園駐車場から動物園を経由して二の丸庭園までです。岡口門や大手門から入城しても、二の丸庭園までは車椅子で通行できます。途中にある「伏虎像」は車椅子で鑑賞可能です。
バス専用駐車場から、あるいは追廻門から入城した場合は、大外左廻りをするイメージで二の丸庭園へ向かいます。駐車場から二の丸庭園までのルートは、快適なバリアフリー路面ではありません。砂利路面や未舗装路、中途半端な舗装路などが各所にあります。
この間、駐車場内とお堀の横に、バリアフリートイレを併設した公衆トイレがあります。
決定的なバリアポイントは、天守閣へ向かう3本の坂である、表坂、裏坂、新裏坂、そして紅葉渓庭園の横の道です。お城そのままの構造が残されています。
再建された御橋廊下は二の丸庭園横の広場に、大掛かりなスロープが設置されています。これをみるとバリアフリー設計かと思いますが、廊下への入口は段差があり、車椅子での利用は出来ません。ただしスロープを利用して車椅子で入口に近づくことが出来ます。
市役所に確認したところ、御橋廊下は土足禁止ですが、車椅子を拭き、人力で担ぎ上げれば廊下内に車椅子で入ることは許可されるそうです。御橋廊下は傾斜の橋。滑り防止に床に低い段差がつけられています。ガタゴトしますが、ストッパーにはなります。入館無料。通常17時までの公開です。
決定的なバリアポイントとしてご紹介した「紅葉渓庭園の横の道」。二の丸庭園側からアクセスすると、いかにも江戸時代の石畳というゴツゴツな下り坂が車椅子の行く手を阻みます。
ここを無理して5mほど進むと視界が開けて、紅葉渓庭園から御橋廊下を見渡す、和歌山城公園のベストビューポイントにでます。無理ができる方は、5m頑張ることをお薦めします。
公園内にある小さな動物園は、大正4年の開業です。その歴史100年超。リニューアルしたのが昭和43年ということ。以来ほとんど大きな変化がなく現在に至っているそうです。車椅子での見学は可能です。
天守閣内部は階段構造。そもそも天守閣へ向かう坂が段差のある路です。この対策として、忍者サポーターが導入されました。忍者の格好をしたスタッフが、移動式のスロープ、電動車椅子を駆使して、最大2時間かけて天守閣下まで車椅子を導くそうです。要予約。水曜から日曜の活動で月曜と火曜はお休みです。
和歌山城公園駐車場は市営駐車場です。他の市営駐車場も同様ですが、障がい者減免制度があり駐車料金が半額に減免されます。出庫時に精算機のインターフォンを押し、障害者手帳等をカメラに提示する方式です。
和歌山城公園は、車椅子での移動範囲は限定的ですが、素敵な雰囲気の公園です。無理のない範囲で、車椅子で利用してください。
(本稿は2018年6月の取材に基づいています)