「道の駅」は車椅子で利用出来る施設です。しかし現地のバリアフリー状況はそれぞれ。車椅子目線での情報と施設の特徴を紹介します。
本稿は千葉県の安房エリア(鴨川市、鋸南町、館山市、南房総市)にある「道の駅」情報です。開業年が新しい順に紹介します。
「道の駅保田小学校」(鋸南町)
2015年開業。廃校になった小学校をリノベーションした道の駅で、毎時00分にはチャイムが鳴ります。
障害者用駐車区画は屋根付きで2台分を用意。一般駐車場エリアから施設ゾーンへ移動する箇所には、1㎝ほどの小さな段差があります。障害者用駐車区画からなら、この1㎝段差はありません。
障害者用トイレは一つ。インフォメーションの横にもう一か所ある案内ですが、使用出来ないことが多いようです。
施設は「元体育館」と「元校舎」で構成されます。
元体育館が「里山市場 きょなん楽市」。産直ショップ兼物産コーナーです。出入口はフラットで自動ドア、店舗内の通路幅は広く、車椅子で利用しやすいショップです。
鋸南はお花の栽培が盛んで「きょなん花MARCHE」があります。企画商品では「保田小学校に行ってきました」という印字のあるお菓子や、保田小学校の印字のある体操着風のTシャツなどがあります。
元校舎の施設は、1Fが専門店街とインフォメーション。カフェは「cafe金次郎」。中国料理の店名は「3年B組」です。ほかにイタリア食堂とおふくろの味が自慢の「里山食堂」。雑貨ショップ、市民ギャラリー、ミニコンサートができる音楽室、子供向けの屋内遊具コーナーなどがあります。
1Fと2F間はエレベーターが1基あり、車椅子でのフロア間移動は可能です。
2Fは宿泊施設「学びの宿」。元教室で一泊素泊まり4,000円という価格設定です。元廊下を利用した「まちの縁側」があり、土足禁止で一般利用できます。車椅子ではタイヤを拭いて利用します。「まちの縁側」から、宿泊する部屋の様子が丸見えです。したがって、夜間は宿泊客専用のスペースになります。
「里の小湯」という有料のお風呂がありますが、入口からすぐに段差があり、車椅子での入場は出来ません。
「道の駅和田浦WA・O!」(南房総市)
2012年開業。JR和田浦駅に近く電車での来館も可能です。国道から一本横に入る、奥まった場所にあります。
メイン施設棟とその正面に独立トイレ棟、敷地の奥に一般駐車場があります。障害者用駐車区画は、トイレ棟の隣に2台分用意されます。
障害者用トイレは、独立トイレ棟と施設棟屋内トイレにそれぞれ一つあります。
施設棟内は、無料休憩コーナーと産直物産ショップ、そして食事処があります。施設全域、段差の無いバリアフリー設計で構造上の問題はありません。通路幅も広く車椅子で使用しやすい施設です。
和田浦の特産品であり食文化である、クジラがテーマの道の駅です。
ショップ「みなみや」は、レジ周りの箇所がやや狭くなりますが許容範囲。産直農産物、お菓子類など並びます。その他の加工品も充実していますが、やはり目につくのは“クジラ”。瓶詰、缶詰、真空パックものなどが豊富にあります。和田浦でとれたクジラの“しぐれ煮”がパックに入って売られます。
無料休憩コーナーは広さに余裕があり、動かせるテーブルと椅子がランダムに置いてあるので、使いやすいように動かして車椅子で利用できます。
食事処「和田浜」は、フラットでスペースに余裕があり、可動式のテーブルと椅子席で、車椅子での利用は可能です。クジラ料理など海の幸中心のメニューです。営業時間は18時までです。
「道の駅南房パラダイス」(館山市)
道の駅登録は2006年ですが、動植物園「南房パラダイス」は1970年の開業です。現在有料観光施設は「アロハ・ガーデンたてやま」となり、その入口周辺の無料エリアが「道の駅南房パラダイス」となっています。
道の駅として、障害者用駐車区画は3台分を用意。トイレ棟に障害者用トイレは一つ。和食のレストランと、クジラの資料館「レインボーホエール」があります。
「道の駅白浜野島崎」(南房総市)
2006年開業の小規模な施設です。2018年に別棟で小さな直売所がオープンしました。軽食コーナーが併設されています。
障害者用駐車区画は2台分。障害者用トイレは一つ用意されます。
「道の駅おおつの里」(南房総市)
道の駅としての登録は2003年。フラワーパークとしては1993年から営業しています。「花倶楽部」というサブネームがあるように、複数の巨大な温室でお花が栽培される施設です。花鑑賞だけなら無料、花摘みは有料です。
障害者用駐車区画は1台分。障害者用トイレは2つ用意されます。
温室以外には、小規模な直売所と売店、カフェがあります。
駐車場からトイレ、直売所と売店、カフェがある施設棟は車椅子で利用できます。
温室内は基本的には未舗装で、車椅子での散策は難しい構造です。イチゴ狩りは、車椅子利用が可能なハウスがあります。
「道の駅富楽里とみやま」(南房総市)
2003年開業。1Fは一般道に面した道の駅。2Fは自動車専用道路のPAでハイウェイオアシス。1Fと2Fの移動はエレベーターあり。障害者用トイレは1Fと2Fのそれぞれに配置。1Fは農産物系産直ショップに加えて、鮮魚もある漁協直営ショップを配置。2Fには漁協直営食堂とフードコートがあります。
障害者用駐車区画は、2Fハイウェイオアシス上下線それぞれ1台分。道の駅駐車場も1台分。計3台分です。
食事処は「海鮮レストラン網納屋」、高速道路直結の2Fに入店しています。テーブル席とお座敷席がほぼ同数。お座敷席は文字通りのお座敷で、車椅子での利用は出来ません。テーブル席には段差なく車椅子で行くことが出来ます。食事処の内部にトイレがありますが、障害者用トイレはありません。
エレベーターは小型で、一般的な車椅子が入るとプラス2名が限界です。
観光案内コーナーはパンフ類が置かれています。
1Fのショップは、農産物系、加工品や土産品、そして鮮魚もある魚売り場が充実しています。いずれの売り場も通路幅は狭く、混雑時の車椅子での買い物はやや苦戦します。
「道の駅ちくら・潮風王国」(南房総市)
道の駅登録は2002年ですが、施設の供用は1997年です。大型施設で、ショップ&レストランの「潮風王国本館」と、広い公園スペースで構成される道の駅です。施設全般、段差構造をスロープで回避して利用します。
駐車場は3カ所に分かれ、身体障害者用区画はそれぞれ1台分を用意。障害者用トイレは、第二第三駐車場の独立トイレ棟に各一つ用意。「潮風王国本館」内に2つ用意されます。
段差解消スロープルートを通り、施設ほぼ全域を車椅子で移動できます。「潮風王国本館」のショップとレストランは、一部に段差や狭いドアなどがありますが、頑張れば車椅子で利用可能です。食事処は座敷席が多いのですが、テーブル席を確保できれば車椅子で利用可能です。
「道の駅ローズマリー公園」(南房総市)
道の駅登録は1998年、「シェイクスピアカントリーパーク」としての営業開始は1997年です。シェイクスピアカントリーパーク時代からの洋館風の建物や風車、イギリス庭園などは撤去されていません。数店舗、アクセサリー販売などのお店が入店しています。通路は多少ごゴツゴツしますが、車椅子からの旧パーク見学は可能です。
2012年に産直ショップ「はなまるマーケット」が誕生しました。名称はローズマリー公園ですが、現在では産直ショップがある道の駅です。
「はなまるマーケット」とその駐車場はバリアフリーです。店舗の前に2台分の障害者用駐車区画を用意。公園敷地内に広大な駐車場がありますが、「はなまるマーケット」の利用なら、店舗前の駐車場利用が便利です。
障害者用トイレは、敷地内の2つの独立トイレ棟に各一つと、「はなまるマーケット」内に健常者兼用でスペースに余裕のある個室トイレが一つ用意されます。
「はなまるマーケット」内はフラットですが、通路幅はあまり余裕がありません。混雑時は車椅子での買い物は少し苦戦します。売り場として「びわゾーン」や「落花生ゾーン」があります。また小規模なテイクアウトショップがあり、ソフトクリームなどを販売。車椅子での購入は可能です。
「道の駅鴨川オーシャンパーク」(鴨川市)
1997年開業。まだバリアフリーの概念がない時代に設計された施設です。駐車場にある障害者用トイレを利用するだけなら迷いません。障害者駐車区画が2台分用意されます。
物産館やレストランが入る施設棟内を利用する場合は、メインの動線は段差があるので車椅子では通行できません。「青空市場」方面から施設を迂回して、海側から施設1Fへ向かいます。施設内にはエレベーターがあります。
「道の駅きょなん」(鋸南町)
道の駅登録は1996年ですが、供用は1988年です。「鋸南町観光案内所」と、食事処と産直ショップがある「鋸南町観光物産センター」、隣接して「中央公民館」と地元出身浮世絵師「菱川師宣記念館」があります。
障害者用駐車区画は1台分。トイレ棟に障害者用トイレが一つ用意されます。
「菱川師宣記念館」は有料施設で、出入口はスロープ対応になっています。
「道の駅三芳村」(南房総市)
道の駅登録は1993年。農産物直売所「土のめぐみ館」は1988年に開館した産直ショップで、その大規模な改修は行われていません。レストランや休憩所が入る別棟と、その横の独立トイレ棟は、バリアフリーレベルが高い新しい施設です。同一施設内で設備レベルの違いが大きい道の駅です。
駐車場は農産物直売所の前と、新しい別棟の裏の2か所にあります。農産物直売所の前の駐車場にも1台分障害者用の駐車スペースがありますが、その先やや傾斜やデコボコのあるルートを通り、手動ドアから農産物直売所に入りことになります。
別棟裏側の駐車場からなら、トイレも含めて全ての施設にフラットルートで行くことが出来て、農産物直売所にも自動ドアの入口から入ることが出来ます。
トイレも旧トイレ棟と別棟横の新トイレ棟があります。お薦めは新トイレ棟で、障害者用が併設され、子ども用のトイレが独立して設けられています。
農産物直売所「土のめぐみ館」内部に段差はありません。通路幅は並みレベル。よほど混雑していない限り、車椅子での利用に問題はありません。
新しい別棟は広くて天井が高い、気持ちの良い空間です。お土産品が並び、ソフトクリームなど乳製品も販売しています。フリー席もゆったり用意されているので、インドアでも座ってソフトクリームを食べられます。またアウトドア席やベンチもあり、季節良い時は人気です。
「三芳村」は「日本酪農発祥の里」。道の駅の別称は「鄙(ひな)の里」。牛乳のブランドは「三芳」です。乳製品、地ビールは名産品です。
レストランは地場の食材を中心にした“おふくろの味”志向。オープンキッチン形式で、手ごろな値段で食事がいただけます。もちろん車椅子利用は可能です。
直売所前の駐車場に面して、独立した売店形式でハンバーガー屋さんがあります。本格的なハンバーガー、いわゆる“千円バーガー”を売る売店です。
「道の駅とみうら」(南房総市)
1993年に千葉県で最初に誕生した道の駅です。別称は枇杷倶楽部。農産物の販売所はなく、お土産品、特に枇杷の加工品が並びます。そして食事処ではなく、“カフェレストラン”があります。
障害者用駐車区画は4台分を用意。障害者用トイレは独立棟トイレの中に一つあります。
施設内は段差構造箇所が多く、半地下のアトリウムや2Fのギャラリーへは階段の利用になりますが、1Fの各コーナーは車椅子で利用できます。
周辺には商業施設が並び建ちます。
隣接する「物産館とみうらマート」は、道の駅の一部のようですが違う経営のお土産、お食事のお店です。お土産コーナーは半地下で車椅子は不可。お食事処は2Fになりますが、裏にエレベーターがあり車椅子でも利用できます。
横に並ぶ「お百姓市場」は地元資本の産直ショップで、干物にも力を入れています。道の駅の敷地とはフェンスで仕切られ、駐車場も完全に区分されていますが、フェンスが2か所切られて、道の駅への移動ルートが確保されています。ただし路面はデコボコで車椅子では辛い道です。店内に小型の障害者用トイレがあります。
道を隔てた反対側に建つ「わくわく広場」は産直農産物を中心にしたスーパーのようなお店です。バリアフリー上の大きな問題はありません。
その隣の「とみうら元気倶楽部」は公民館で、入浴施設や足湯設備などもあります。
千葉県「道の駅」の紹介記事は、別に「千葉県東葛・印旛・京葉・君津エリア編」「千葉県香取・海匝エリア編」「千葉県山武・長生・夷隅エリア編」を掲載しています。クリックすると別稿が開きますので、ぜひご覧下さい。