障害者雇用の義務化、大企業の特例子会社の現状と課題

※本稿では「障害」という漢字表記を使用しています。

 

企業に障害者雇用を義務化する法律があります。

雇用数は従業員の2.2%以上。したがって46人以上の会社から1名以上の雇用義務が課せられます。

この2.2%という数値は、労働人口に対する就業希望の障害者数の比率で決定されます。

 

例えば社員数が1万人の大企業の場合、2.2%ですから220人以上の障害者雇用が義務になります。このノルマに対して「特例子会社」を作り対応している大企業が増えています。

 

特例子会社とは、一定の要件を満たしていれば、その子会社での障害者雇用数を企業グループの雇用数とみなすことが出きる制度です。したがって1万人の企業は、220人の障害者を雇用する特例子会社を一社持っていれば、ノルマを達成したことになります。

 

特例子会社の仕事で多いのは、親会社や同系列の企業グループを対象にした軽作業や一般事務代行などです。

親会社のビルの掃除を請け負う、単純なデータ入力作業を請け負うなどの業務。このスキームであれば、企業として障害者雇用の社会的な責任を果たしながら、雇用した障害者の仕事が確保できます。

障害者雇用の義務化、大企業の特例子会社の現状と課題

ただし、別会社にしているのは人事システムを親会社とは変えるためなので、賃金テーブルや退職金制度などが冷遇される可能性があります。

そういう差別が出来ないように、2016年から施行された改正法では「障害者に対する差別の禁止」が定められています。

この法律の目的は、採用における差別と不当に安い賃金の排除です。企業は、公正な採用と正当な報酬の支払いが義務付けられています。

障害者の一般就労に関して、以上の法整備が進められています。

障害者雇用の義務化、大企業の特例子会社の現状と課題

特例子会社の現場では、とりあえず雇用して出来る仕事させる、という第一段階から、次のステップに課題が移行してきています。

同じ単純作業ばかりを続けさせていいのか、昇給賞与をどうする、社内資格や役職をどう考える、などが現在の難問です。

さらに長期的には、社員の高齢化などの課題がでることが予測されています。

 

障害者雇用の義務化を契機に、軽度の障害者の特例子会社での一般就労の定着は進んでいます。

(本稿は2015年に初稿を執筆し、2020年1月に加筆しました)

歯磨きが出来ない重度障がい者の口腔ケア用品「スポンジブラシ」

寝たきり状態など重度の障がいがあり、口を開けた状態での歯磨きが難しい人。

嚥下障害が酷く、一般的な歯磨きをすると咽る人。

知的、コミュニケーション面で重度の障がいがあり、歯磨きをすると暴れてしまう人。

家庭での家族による口腔ケア介護が難しい人がいます。

その人の障がいの状況によりますが、スポンジブラシによる口腔ケアは、通常の歯磨きが難しい人でも、家族の介護で効果が出やすい方法です。

 

スポンジブラシは、原理や使用方法は極めてシンプルです。棒状の柄の先にスポンジが付いていて、それでお口の中を掃除します。

ケアスポンジは、いろいろな形状、大きさ、固さのものがあります。

一般的な基準としては、最初はやや小さめで柔らかいタイプのブラシから始めることが推奨されています。介護に慣れてきてから、適正に応じて、大きくて、固いタイプに変更します。

 

磨き方はあくまでソフトに、優しく行うことを心がけます。介護する人が協力的なら良いのですが、実際にはそうではないことが多く、頭を振る人、口を開けない人、途中で噛んでしまう人、いろいろだと思います。

歯磨きが出来ない重度障がい者の口腔ケア用品「スポンジブラシ」

一般的な使用方法です。

スポンジを水で濡らして使用します。誤嚥防止の意味でも、濡らした後は必ず絞って使用します。

濡らし用のコップ、洗浄用のコップを2つ用意して水を入れ、スポンジ拭き取り用の清潔なペーパータオル等を用意します。

濡らして、絞って、お口を掃除して、洗う、このサイクルを繰り返します。

出来れば衛生上の観点から、使い捨ての医療ケア用の手袋をすることが望まれます。

スポンジブラシは使い捨てです。綺麗に洗ったつもりでも、菌が残る可能性はあるので、使い捨てにします。

グジュグジュペッも、うがいも難しい状態の人は、お口の中全般が汚れています。歯だけではなく舌や歯茎など、ブラシが届く限り口腔を、すべて丁寧にスポンジで拭ってあげます。

舌ブラシや口腔用ウェットティッシュなどを併用すると、なお効果的です。

ただし、噛みつかれる可能性がある場合は、指を口内に入れるのは危険です。注意してください。

 

お口の汚れは虫歯など口内の病気だけではなく、特に嚥下障害による誤嚥がある人は、口内の菌が肺に入り肺炎を起こすリスクがあります。

ケアスポンジはネット通販でも購入できます。通常の口腔ケアが難しい人に、積極的に利用して下さい。

(本稿は2020年1月に執筆しました)

航空機 車椅子を利用する重度障がい者の利用条件と搭乗方法

車椅子利用者も一般の航空機を利用することができます。

ただし様々な制約、一般利用者とは違う利用ルールがあります。

本稿では、一人での搭乗が困難な重度の障がいがある人が、航空機を利用する場合の条件や搭乗方法を紹介します。

 

○一般的な搭乗可能条件

航空機の座席が利用できることが必要条件です。したがって、空港で別の車椅子に乗り換えることが出来る、そして機内で座席に移動出来る人は搭乗可能です。

ただし医療的ケアが必要で、搭乗により命に係わるリスクがある人は、航空会社によって利用条件があります。医ケアの実際を航空会社に詳しく説明してください。

一般座席での座位保持に問題がある人は、航空会社によっては、ある程度の機能がある座位サポート器具の貸し出しサービスが用意されています。

特別な対応として、ストレッチャーでの搭乗が出来る航空会社、航空機があります。ストレッチャーは航空機に備えられたもので、自家用は利用できません。

ストレッチャー搭乗には、制約があります。一般搭乗よりも大きなスペースが必要なので、そのスペースが確保できる便であること。そして特別料金がかかります。

またそのような状態の人は、一般に高度な医療的ケアが必要なので、医師や看護師の同乗、あるいは搭乗許可書の提出などが必要です。

航空機 車椅子を利用する重度障がい者の利用条件と搭乗方法

○予約の方法

飛行機によっては、車椅子は1台だけ、などの制約がある場合があります。また座席は早いもの勝ちで埋まるので、予約は早めに入れます。

手馴れた方はWeb予約で座席までとってしまい、後で連絡を入れてもよいのですが、通常は電話で予約をした方が、間違いがありません。

航空会社としては、どういう搭乗方法が可能な障がい者なのか、どの座席がいいのか、という2点が予約時のチェックポイントになります。

旅行代理店経由で申し込みをする場合も、通常は代理店の人が電話で航空会社と話をします。

電話をすると、障がいの状況、車椅子の種類、介助者の有無、座席の希望などを聞かれます。

座席は、通常搭乗口からなるべく近い席が薦められます。

席が決まると、空港への来場の時間や受付カウンターの説明があります。

空港や航空会社によりますが、一般にかなり早い時間に来るように求められます。最近では、専用カウンターがある空港が増えています。

航空機 車椅子を利用する重度障がい者の利用条件と搭乗方法

○空港でのチェックインの方法

指定の時間までに空港に行き、チェックインをします。

チェックイン時に、空港備え付け、または航空会社所有の車椅子に乗り換えになります。

自分の車椅子は、手荷物預かりになります。

電動車椅子の場合は、バッテリーを外して折りたたみます。スタッフの方も手馴れているとはいえ、車椅子の構造はそれぞれですから、特殊な構造がある場合は、よくスタッフに説明をしてください。

搭乗口に入る際のチェックです。車椅子は金属なので、機械チェックが反応します。したがって、重度の障がいがある人も、ボディーチェックを受けます。

航空機 車椅子を利用する重度障がい者の利用条件と搭乗方法

○機内への搭乗方法

車椅子利用者は、飛行機内への搭乗案内が一番早い、優先搭乗になります。

チェックイン時に搭乗口への集合時間を指定されるので、厳守してください。

一般の搭乗客より先に、車椅子利用者と介助者1名が機内に案内されます。

通常、介助者ではなく、空港スタッフが車椅子を押します。ちょっとした段差でも後ろ向きに変えるなど、基本に忠実なとても丁寧な押し方をします。

機内の入口までくると、ここまで利用した空港内用の車椅子では機内の通路を通れないので、機内専用の小型の車椅子に乗り換えます。この乗り換えは介助者の仕事です。

座席横まで行き、座席に移ります。これも介助者が行います。

 

以上が一般的な連絡ゲートを使用した搭乗の場合です。

地上からタラップを使って搭乗する場合は、一般的なケースでは、空港に配備されている、車椅子用の特殊な昇降装置を利用します。

よくあるのは、一般搭乗客が利用する普通のタラップの反対側のドアに、特殊昇降装置がセットされます。真っ先に案内され、特殊昇降装置のリフトに乗り込み、機内入口に進みます。以後は連絡ゲートを使用した搭乗の場合と同様です。

 

○機内でのトイレ利用

長時間のフライトの場合、トイレの問題があります。

客室乗務員は、トイレの介助は一切行いません。本人と介助者だけで何とかします。

シートベルトサインが消えている安定した状態の時は、通常トイレまでの移動に機内用の車椅子を借りることは出来ます。

航空機のトイレは狭い。介助者が一緒に中に入ることは、ほぼ不可能です。

航空機 車椅子を利用する重度障がい者の利用条件と搭乗方法

○目的地到着後の手順

目的地に到着すると、機内から出るのは最後になります。一般搭乗客が全員降りてから、案内されます。

搭乗の逆で、機内専用車椅子に乗り、機外からは空港の車椅子に乗り、手荷物引き渡し場まで、空港スタッフが車椅子を押して案内していただけます。

通常ここで、自分の車椅子が介助者に引き渡されます。

空港では通常の利用者よりも、車椅子利用者は何かと時間がかかります。

航空機 車椅子を利用する重度障がい者の利用条件と搭乗方法

以上は一般的なケースです。利用条件や搭乗方法は、空港、航空会社、航空機体によって変わります。利用前に状況を確認するようにしてください。

(本稿は2020年1月に執筆しました)