東京の郷土資料館・歴史民俗博物館 お薦めの文化施設

東京の郷土資料館・歴史民俗博物館

東京都には各区や市が運営する、地元の歴史、民俗、産業、偉人などを紹介する文化施設が数多くあります。その中から、お薦めの穴場的施設をまとめて紹介します。これらの施設の多くは無料か低廉な観覧料で利用できる文化施設です。

施設名称をクリックすると、施設のバリアフリー状況を紹介するページにリンクします。ご参照ください。

国や都、大学や企業が運営する個性的な博物館、資料館、記念館は、別稿「東京のユニークな博物館 お薦めの穴場的な文化施設」で紹介しています。ご覧ください。

港区立みなと科学館・気象庁気象科学館(港区)

虎ノ門の気象庁本庁舎内に2020年に開館した2つの科学館です。ハイテク系の常設展示は、子供から大人まで楽しめます。またハイテク武装したプラネタリウムの最終上映時間は19時から。大人も楽しめるプログラムが用意されています。「都会の真ん中で科学にふれる」「ふみ出そう防災への第一歩」がコンセプトです。

みなと科学館・気象科学館

港区立郷土歴史館(港区)

1938年に竣工した歴史的建造物「公衆衛生院」の外観と内装を残しながら、2018年に開業した施設です。外観の異形を見学して、4Fの「旧講堂」などを内覧し、そして展示レベルの高い郷土歴史館で港区の歴史を学びます。白銀台の高台に建つ、他に類を見ない歴史館です。

港区立郷土歴史館

勝海舟記念館(大田区)

洗足池の国登録有形文化財「清明文庫」をリノベーションして2019年に開館した施設です。「海舟の功績や大田区との縁を紹介するとともに、海舟の想いと地域の歴史を伝える」大田区立の記念館。小規模な施設ですが、新しいので展示がハイテク。勝海舟は自身がデザインした墓石の下で洗足の地に眠っています。

勝海舟記念館

大田区立郷土博物館(大田区)

2021年に展示がリニューアルされました。ユニークな常設展は「馬込文士村」。かつて馬込・山王・新井宿には、数多くの文士や画家が在住し、交流がありました。どのような人がいつ住んでいたのか、どんなグループがあったのかを展示解説しています。川瀬巴水もその一人です。

大田区立郷土博物館

森鷗外記念館(文京区)

鷗外の住居「観潮楼」跡地に2012年に開館した文京区立の施設です。建物はデザイン設計の新築で、中庭には観潮楼当時からあった大銀杏が残されています。場所は団子坂上。千駄木界隈は往時のまま、鷗外が歩いた坂道が幾つも残っているということ。記念館で歴史を学習して、周辺を散策するのがお薦めです。

森鷗外記念館

文京ふるさと歴史館(文京区)

文京区の歴史を真面目に紹介する歴史館です。このエリアが大きく発展したのは江戸時代。そのため江戸時代の展示紹介コーナーが充実。当時の各階層、各職種の人の生活を詳しく学ぶことができます。また昌平坂学問所など、江戸から明治にかけての教育の歴史も詳しく紹介されています。展示のすべてが真面目な施設です。

文京ふるさと歴史館

漱石山房記念館(新宿区)

新宿区は漱石です。晩年の9年間を暮らした「漱石山房」があった地、そして終焉の地に2017年に開館しました。1Fには夏目漱石が創作に励んだ書斎を再現して展示。2Fは資料展示で様々な箇所に「黒猫」がいます。記念館周囲の「漱石公園」には、漱石の胸像や「猫塚」、「道草庵」という施設があります。

漱石山房記念館

新宿歴史博物館(新宿区)

現在の新宿になるまでの歴史を知る博物館です。江戸時代の宿場町、内藤新宿から、急速に発展した昭和初期の新宿の様子が分かります。文化住宅や東京市電、パノラマカーの展示、また新宿の縁のある近代文学者の紹介もあります。中庭はサンクンガーデンで、ガラス越しに景観を楽しめます。

新宿歴史博物館

足立区立郷土博物館(足立区)

浮世絵をはじめ江戸時代の美術工芸品のコレクションが充実。定期的に開催される企画展は美術館のようです。常設展は一般的な展示。企画展狙いの観覧がお薦めです。また隣接して「東淵江庭園」という入園無料の日本庭園があり、自由に散策できます。屋外展示物も面白い、ハイレベルな区立郷土博物館です。

足立区立郷土博物館

中野区立歴史民俗資料館(中野区)

区立としては大規模な、そして無料としてハイレベルな展示がある、とても真面目な施設です。2020年にリニューアルオープン。真っ向勝負の正統派歴史民俗資料館です。屋外展示される沢庵漬に使われた大きな樽「とうご」は、ユニークな逸品です。

中野区立歴史民俗資料館

石神井公園ふるさと文化館(練馬区)

練馬区立の練馬区の歴史、民俗、そして観光情報を紹介する施設。練馬大根を深く知る展示などがあります。2010年に新設された施設なので新しくて綺麗。武蔵野うどんのメニューがある休憩コーナーもあります。隣接して明治時代の古民家「旧内田家住宅」があり、自由に見学できます。

練馬区立石神井公園ふるさと文化館

牧野記念庭園記念館(練馬区)

日本の植物分類学の父、牧野富太郎博士が晩年の30年間を過ごした邸宅跡です。2010年にリニューアルオープン。博士の書斎がそのまま保存されている「書室展示室」と「企画展示室」「常設展示室」があります。庭園には、博士の研究成果である300種類以上の草木類が植栽されています。博士が居を構えた大正15年当時の住所表記は「北豊島郡大泉村上土支田」でした。

牧野記念庭園

えこっくる江東(江東区)

清掃事務所に併設された「江東区環境学習情報館」です。ごみ問題を切り口に地球環境問題を学習。メインターゲットは小学生です。常設展示室は1F。2Fではワークショップや企画展を開催。隣接地はビオトープが造営されています。東京都のごみ処理の負担は今も江東区が背負っています。

環境学習情報館えこっくる江東

中川船番所資料館(江東区)

江戸時代、この地に200年以上存続した中川船番所をテーマにした資料館です。3Fの番所を再現した展示が資料館のハイライト。良く出来たジオラマです。2Fには江東区の歴史や民俗を紹介する郷土資料館らしい一般的な展示があります。船番所を専門的に紹介する施設は他にありません。

中川船番所資料館

葛飾区郷土と天文の博物館(葛飾区)

区の施設としては大規模で、名称が示す通り大きな「天体観測室」と、本格的なプラネタリウムがあります。2Fが葛飾区の歴史と民俗を紹介する郷土展示室で、ここの展示も凝っている上に、デジタル化、バリアフリー化が進んでいます。「郷土」「天文」両面でハイレベルな設備を有する博物館です。

葛飾区郷土と天文の博物館

すみだ郷土文化資料館(墨田区)

資料館としては3フロアの小型施設。床面積は広くはありません。面白いのは墨田区ではなく「隅田川」がテーマの中心であること。花火の歴史などが紹介されます。したがって墨田区民以外の人でも、十分に興味がもてる展示です。3Fで開催される企画展や特別展示も、幅広い層が惹かれる面白いテーマが組まれます。

すみだ郷土文化資料館

板橋区立郷土資料館(板橋区)

赤塚溜池公園に隣接して建つ、公園と一体化した資料館です。庭には江戸時代後期に建てられた古民家が移築され自由に見学できます。常設展示は板橋区の歴史民俗を紹介。3Fで開催される企画展や特別展は面白く、かつ無料公開されることが多いので人気があります。西高島平駅から徒歩13分。穴場立地の郷土資料館です。

板橋区立郷土資料館

板橋区立熱帯環境植物館(板橋区)

板橋清掃工場の余熱を活用し、東南アジアの熱帯雨林を水面下から山地まで再現した大温室がある施設です。B1から2Fまでの構造で、海から高山帯までの熱帯環境を立体的に鑑賞できます。アクセスは高島平駅から徒歩7分の案内。低廉な入館料で子供から大人まで楽しめる、お薦めしたい穴場施設です。

板橋区立熱帯環境植物館

武蔵野ふるさと歴史館(武蔵野市)

博物館と公文書館の機能を併せ持つ施設で、展示室は無料で観覧できます。井の頭公園の池は旧石器時代から生活用水に利用されていたなど、原始から近現代までの歴史民俗を学べます。正統派の資料館です。

武蔵野ふるさと歴史館

鈴木遺跡資料館(小平市)

小平市にある都内最大級の遺跡「鈴木遺跡」。その資料館です。下の地層では約3万5千年前の旧石器時代、上の地層からは江戸時代の田んぼの跡などが発見されています。資料館には、石器時代の「落とし穴」や「バーベキューの跡」など興味深い大型展示があります。また定期的に出土品の展示入れ替えが行われます。知る人ぞ知る資料館です。

鈴木遺跡資料館

清瀬市郷土博物館(清瀬市)

1987年に「東京建築賞最優秀賞」を受賞した博物館です。歴史展示室、民俗展示室は一般的な展示内容。特徴的なのは、土間のかまどなど古民家の中が再現されている「伝承スタジオ」。ここで「餅つき」など昔の生活を体験するイベントが開催されます。年間5本程度行われる企画展開催時は、臨時駐車場が用意されることがあります。

清瀬市郷土博物館

府中市郷土の森博物館(府中市)

広い庭園がある有料の大規模な施設です。庭園は、四季のお花が楽しめる散策路、古民家などの移築エリア、芝生広場などがある市民の憩いの場。博物館の展示室は大きく、展示物はお金がかかっています。プラネタリウムがあり大人気。質量ともに都内の郷土博物館としてはトップクラスの施設です。

府中市郷土の森博物館

東大和市郷土博物館(東大和市)

多摩湖の近くにある施設で、東大和市の歴史というよりは、狭山丘陵の自然、歴史、民俗をテーマにした博物館です。太古から人々の生活の営みがあった狭山丘陵に、多摩湖が完成したのは昭和2年。160戸が湖底に沈みました。博物館にはプラネタリウムが併設されています。

東大和市郷土博物館

瑞穂町郷土資料館「けやき館」(瑞穂町)

齢300年の大きな欅とニホンオオカミ像がシンボルの資料館です。2014年に開館したバリアフリーな施設で、常設展は無料で観覧できます。テーマは「瑞穂の自然」と「瑞穂の歴史と文化」。無料とは思えない質の高い展示で、狭山丘陵の一日を光と音で体験できる展示などがあります。

瑞穂町郷土資料館

以上、東京にある区や市が運営するお薦めの穴場的文化施設です。それぞれに個性がある面白い郷土資料館・歴史民俗博物館ばかりです。

(本稿は2021年6月に執筆しました)