令和3年9月施行 医療的ケア児支援法をやさしく解説

医療的ケア児支援法をやさしく解説

「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が、2021年6月18日に公布され、同年9月18日に施行されます。法律は21条。その全貌を平易に紹介します。

第1条(法律の目的)

社会全体で医療的ケア児を支援し、児の成長と、家族の離職を防止し、安心して子どもを生み育てることができる社会を実現する。

第2条(医療的ケア児の定義)

人工呼吸器による呼吸管理、喀痰かくたん吸引その他の医療行為が必要な、高校生までの児童生徒。

第3条(基本理念)

社会全体で医療的ケア児と家族を支え、インクルーシブ教育を受け、高校卒業後も十分な支援が継続すること。またそれらの支援は本人と家族の意思が尊重され、地域間格差がないこと。

第4条(国の責務)

国が支援施策を総合的に実施すること。

第5条(地方自治体の責務)

地方公共団体は、国と連携して自主的に主体的に支援施策を実施すること。

第6条(保育所の責務)

保育所ほかすべての医療的ケア児を支援する施設の設置者や事業者は、医療的ケア児に対して適切な支援を行うこと。

第7条(学校の責務)

在籍する医療的ケア児に対して適切な支援を行うこと。

第8条(政府の責任)

必要な法律の整備と予算を編成すること。

第9条(保育所における支援)

保育所、認定こども園、放課後等デイサービス事業まで、医療的ケア児が在籍する施設は、看護師など医療的ケア行為を行えるスタッフを配置すること。国と自治体はそれを支援すること。

第10条(学校における支援)

医療的ケア児が在籍する学校は、看護師など医療的ケア行為を行えるスタッフを配置すること。国と自治体はそれを支援すること。

第11条(日常生活の支援)

医療的ケア児の成長や生活実態に応じた日常生活における支援が受けられるように、国と自治体が責任をもつこと。

第12条(相談体制の整備)

国と自治体は、当事者からの相談に総合的に応じることができる体制を整備すること。

第13条(情報の共有)

個人情報に配慮しながら、国と自治体は医療的ケア児と家族の情報を、有効な支援につながるように関係者と共有すること。

第14条(医療的ケア児支援センターの創設)

都道府県知事の責任で、総合的な支援を推進する医療的ケア児支援センターを創設すること。

第15条(医療的ケア児支援センターの守秘義務)

医療的ケア児支援センターの役職員は、個人情報の守秘義務がある。

第16条(医療的ケア児支援センターの管理)

都道府県知事、医療的ケア児支援センターの運営状況を管理監督すること。

第17条(医療的ケア児支援センターへの改善命令)

都道府県知事は、医療的ケア児支援センターに対して、必要に応じて適正な運営を求める改善命令を行うこと。

第18条(医療的ケア児支援センターの指定取消)

医療的ケア児支援センターが命令に違反したときは、都道府県知事はその指定を取り消すことができる。

第19条(啓発活動)

国と自治体は、国民に医療的ケア児への支援の重要性が伝わるように、様々な広報を行うこと。

第20条(人材の確保)

国と自治体は、地域間格差がない医療的ケア児への支援を実現するために、人材確保のための予算措置などを行うこと。

第21条(研究開発の推進)

国と自治体は、医療的ケア児のための医療機器の研究開発や調査研究が進むように、予算措置などを行うこと。

以上が全21条のポイントです。医療的ケア児支援法における、国と地方公共団体の責任は重大です。

別稿で「医療的ケア児への障がい者福祉 法律の歴史をやさしく解説」を掲載しています。ご参照ください。

(本稿は2021年6月に執筆しました)