障害者政策員会で検討されている不当な障害者差別と合理的配慮の事例

障害者政策員会で「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針改定案」の検討が行われています。2022年8月1日に開催された第69回委員会で検討された改定案で示された、新たに基本方針で取り上げる障がい者への不当な差別的取り扱い事例等を抜粋して紹介します。

〇不当な差別的取り扱い事例

・障害の種類や程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて考慮することなく、漠然とした安全上の問題を理由に施設利用を拒否すること。

・業務の遂行に支障がないにもかかわらず、障害者でない者とは異なる場所での対応を行うこと。

・障害があることを理由として、障害者に対して、言葉遣いや接客の態度など一律に接遇の質を下げること。

・障害があることを理由として、具体的場面や状況に応じた検討を行うことなく、障害者に対し一律に保護者や支援者、介助者の同伴をサービスの利用条件とすること。

〇不当な差別的取扱いに該当しない事例

・実習を伴う講座において、障害の特性上、実習に必要な作業の遂行上具体的な危険の発生が見込まれる障害者に対し、当該実習とは別の実習を設定すること。

・飲食店において、タイヤカバーのない車椅子の利用者が畳敷きの個室を希望した際に、そのまま入室すると畳が傷つくおそれがあることから、カーペット敷きの別室を案内すること。

・銀行において口座開設等の手続を行うため、預金者となる障害者本人に同行した者が代筆をしようとした際に、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況や本人の取引意思等を確認すること。

・定時性確保のため、搭乗手続や保安検査に時間がかかることが予想される障害のある利用者には早めに空港に来てもらうこと。

〇合理的配慮の提供義務違反に該当しない事例

・飲食店において食事介助や自宅への送迎等を求める配慮の申出があった場合に、当該飲食店が当該業務を事務、事業の一環として行っていないことから、その提供を断ること。

・筆談で十分対応できるやり取りに手話通訳者の派遣を求められた場合に、当該要望への対応を断ること。

・小売店において、混雑時に視覚障害者から店員に対し、店内を付き添って買物の補助を求める配慮の申出があった場合に、混雑時のため付添いはできないが、店員が買物リスト に従って商品を準備することができる旨を提案すること。

・オンライン講座の配信のみを行っている事業者が、オンラインでの集団受講では内容の理解が難しいことを理由に対面での個別指導を求められた場合に、その事業の目的、内容 から対面での個別指導を可能とする人的体制、設備を有していないため、当該対応を断ること。

〇合理的配慮の提供義務違反に該当する事例

・試験を受ける際に筆記が困難なためデジタル機器の使用を求める申出があった場合に、デジタル機器の持込みを認めた前例がないことを理由に、必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること。

・イベント会場内の移動に際して支援を求める申出があった場合に、「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断ること。

・電話利用が困難な障害者から各種手続を行いたい旨求められた場合に、自社マニュアル上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とすることとされていることを理由 として、メールや電話リレーサービスを介した電話等の代替措置を検討せずに手続の実施を断ること。

・自由席での開催を予定しているセミナーにおいて、弱視の障害者からスクリーンや板書等がよく見える席でのセミナー受講を希望する申出があった場合に、事前の座席確保など の対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で対応を断ること。

〇合理的配慮の提供と環境の整備に係る事例

・不特定多数の障害者が利用することを想定し、あらかじめ携帯スロープを購入した上で、車椅子利用者から出入口の段差を乗り越えるための支援を求められた場合に、段差に携帯スロープをかける。

・視覚障害者から申込書類への代筆を求められた場合に、本人の意向を確認しながら店員が代筆するとともに、以後、他の障害者から同様の申出があった場合に円滑に対応できるよう、申込手続における適切な代筆の仕方について店員研修を行う。

・オンラインでの申込手続が必要な場合に、手続を行うためのウェブサイトが障害者にとって利用しづらいものとなっていることから、手続に際しての支援を求める申出があった場合に、求めに応じて電話やメールでの対応を行うとともに、以後、障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、ウェブサイトの改良を行う。

以上の事例が「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針改定案」に明示される方向で検討されています。

《生きるちから舎ニュース 2022年8月5日付》

障がい者スポーツ種目 パラリンピック効果でボッチャが1番人気に躍進

公益財団法人笹川スポーツ財団による調査「障害者専用・優先スポーツ施設に関する研究2021」が公表され、コロナ禍以後の障がい者スポーツの状況が分かりました。同調査は全国150の障がい者専用・優先スポーツ施設に対し、2021年11月から12月にかけて実施されています。様々な角度から障がい者スポーツの実態が分かる、社会的な価値の高い研究です。

同調査による「障害者専用・優先スポーツ施設における種目別スポーツ大会やイベントの実施内容」の結果を引用して紹介します。( )内の数値は、150施設の内、2021年度にその種目のスポーツ大会やイベントを実施した施設の比率です。

第1位:ボッチャ       (68.1%)

第2位:卓球         (58.3%)

第3位:水泳         (33.3%)

第4位:アーチェリー     (23.6%)

第5位:車椅子バスケットボール(20.8%)

同調査によるボッチャの実績は、2015年度は37.0%、2018年度は48.3%で、卓球と大きく差がある2位でした。

パラリンピック効果で、ボッチャは障がい者スポーツの人気種目に成長しています。

《生きるちから舎ニュース 2022年7月22日付》

別稿で「重度の身体障がいがある人のためのスポーツ ボッチャの概要」を掲載しています。ご参照ください。

避難所指定の公立学校 2025年度までにバリアフリートイレ整備率100%へ

障害者政策委員会で「第5次障害者基本計画」案の検討が行われています。2022年7月7日に開催された第68回障害者政策委員会で、「公立小中学校等施設のバリアフリー化整備」の目標値が検討されました。主な目標値案を紹介します。

○2025年度までに避難所に指定されているすべての学校の校舎と体育館に車椅子使用者用トイレを整備する

・避難所に指定されている公立小中学校は、2020年時点で全体の95%です。

・2020年の調査によるバリアフリートイレの設置状況は、校舎が65.2%、体育館は36.9%でした。

○2025年度までにすべての学校の校舎と体育館にスロープ等による段差解消設備を整備する

・2020年の調査にスロープ設置率は約60%程度でした。

〇2025年度までに要配慮児童生徒等が在籍する全ての学校の校舎にエレベーターを整備する

・要配慮児童生徒等が在籍する公立小中学校は、2020年時点で全体の40%です。

・2020年の調査によるエレベーター整備率は27.1%でした。

また学校の一般トイレ便器、約136万基の95%を洋式化する目標も検討されています。2020年では57%なので、2025年までに約52万基の便器を改装する目標になります。

障害者政策委員会では2022年内に「第5次障害者基本計画」案をとりまとめ、2023年度から新計画を開始する予定です。

《生きるちから舎ニュース 2022年7月8日付》