「道の駅」は車椅子で利用できる施設ですが、現地のバリアフリー状況はそれぞれです。車椅子目線での施設の特徴を紹介します。
本稿は栃木県の北部(日光市、那須町、那須塩原市、大田原市、塩谷町、矢板市)にある「道の駅」情報です。開業年が新しい順に紹介します。
なお道の駅の名称をクリックすると、より詳しいバリアフリー情報ページにリンクします。ご参照ください。
「道の駅日光 日光街道ニコニコ本陣」(日光市)
2015年に開業した道の駅です。日光とはいっても、場所は旧今市市の中心部。基本構造は段差がない今どきのバリアフリー設計です。そして複数の企画が詰め込まれた商業施設です。
敷地内の駐車収容能力は普通車52台、身障者用3台、大型バス用7台。満車になると道路での入場待ちになります。
農産物直売所に煎餅、スイーツ、パンなどのグルメショップ、それらをいただけるイートインスペース、食事処は2軒、日光伝統の「彫刻屋台・花屋台」の展示コーナー、「市民ギャラリー」に「観光情報館」、コンビニと24時間利用できるトイレ棟、そして「日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館」、350席の「多目的ホール」があります。
新しい施設なので、いずれも車椅子で利用できます。直売所などが入る棟内は、通路幅に余裕があり、2軒の食事処も車椅子で利用し易い店舗です。イートインスペースも車椅子での利用は可。そして独立トイレ棟と各施設棟内とバリアフリートイレがあります。
「日本のこころのうたミュージアム・船村徹記念館」は有料の施設ですが入館料の障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。3階建て構造で、バリアフリートイレは1Fにあります。
「道の駅湧水の郷しおや」(塩谷町)
2012年6月に開業した道の駅です。段差が全くない設計が標準になる前の設計で、車道と施設の間には段差があり、バリアフリートイレは1カ所です。それでも実用には十分なバリアフリー水準の、自然豊かな塩谷町のバリアフリー観光拠点です。
施設の構成は直売所と食事処、そして地域交流施設、道の駅として一般的な構成です。トイレは別棟方式で、そのトイレ棟の前に身障者用駐車スペースが3台分あります。
「農村レストラン そば処かみざくら」という食事処が2012年の開業時から営業しています。2013年4月には5店舗が入る「飲食館」が誕生。屋台形式や簡易テーブル方式のお店で、アユの塩焼き屋、焼きそば店、アイス、氷り、カフェという構成です。
直売所は中規模な「道の駅」の標準レベルのお店で、通路幅は一般的なサイズです。車椅子での利用は可能ですが、ところどころに狭い箇所があり、混みあっていると車椅子では苦戦します。産物は豊富、塩谷町は美味しい自然の恵みに溢れた町です。
塩谷町の観光資源は全国名水100選「尚仁沢湧水」。高原山の中腹にある原生林に覆われた湧水群から、日量65,000トンの湧水が流れ出ています。この湧水群には、最寄りの駐車場から約1.5kmの遊歩道を進みます。この遊歩道は悪路で、車椅子での通行は困難を伴います。
「道の駅やいた」(矢板市)
2011年に開業した「道の駅やいた」は、贅沢な身障者用駐車区画が用意されています。大きくて立派な木材を使用した屋根付きの駐車区画が、2台分2か所で計4台分あります。トイレ棟前にある2台分駐車スペースは、トイレ棟まで屋根続きなので、雨の日でも全く濡れずに車椅子でトイレを利用できます。施設棟よりの2台分スペースは、施設まで屋根続きではありません。
トイレは独立棟と施設棟内の2か所で、どちらにもバリアフリートイレが1つ用意されています。
施設棟は一棟方式で、直売所と食事処が入ります。構造は一段高い高所式で、車椅子ではスロープを利用します。
直売所は「旬鮮やいた」。店内はフラットで通路幅は余裕があるので、車椅子で利用しやすいショップです。新鮮野菜やリンゴが名産です。
食事処は「農村レストランつつじ亭」。地元のおふくろの味を提供します。店内はフラットで可動式のテーブルと椅子席なので、車椅子での利用は可能です。
施設敷地内にエコハウスがありました。地元産の「たかはら材」などを使用した木造住宅で、環境を活かし、自然で再生可能なエネルギーを利用。内部見学ができますが、入口に段差があり内部は土足禁止です。エコモデルハウスがある道の駅は、全国でここだけという案内でしたが、エコモデルハウスは2021年3月末で休館になりました。
エコハウスは2024年5月に障がい者就労施設継続支援A型事業のお店「お食事・甘味処「和と光」に生まれ変わりました。
「道の駅湯西川」(日光市)
2006年に開業した道の駅で、天然日帰り温泉がメインの駅前立地です。他には食事処と土産ショップ。採れたて野菜などの農産物は、小さなイベントコーナーでの扱いになります。
施設はスロープ対応が基本です。トイレは屋内型。2Fの日帰り温泉は車椅子のための特別な設備はありませんが、エレベーターがあり、要所に手摺がある、一般的なバリアフリー仕様のお風呂です。
道の駅湯西川は、ダムにバスが入水する「湯西川ダックツアー」水陸両用バスの発着点です。このツアーは特別なバリアフリー対応はありません。
「道の駅那須与一の郷」(大田原市)
2004年に開業した道の駅で。弓名人与一の名をつけた大型道の駅で、建物自体が扇をイメージして造られています。施設は、休憩スペース付きの情報館、農産物と地元名品の直売所、レストラン、竹のギャラリー、多目的ホール、そして有料施設の「与一伝承館」で構成されます。
駐車場は施設にそって半周すべてにあり、身障者用駐車区画は施設に近い両端に、合計11台分用意されています。
農産物直売所では品数豊富に栃木の産物が販売されています。車椅子でも問題なく利用できる広めの通路設定、レジは2か所で通路幅は十分、車椅子で買い物が楽しめます。
レストランはお蕎麦が自慢。フラットで余裕のある通路の椅子席なので、車椅子での利用が可能です。ただし営業時間は11:00~14:30と短時間です。
竹のギャラリーは竹の工芸品の展示コーナーです。鑑賞は無料。ビデオで製作の様子が放映されています。屋外のトイレの他に、インドアのバリアフリートイレがあります。
「与一伝承館」はバリアフリーな有料施設です。入館料は障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。屋島の合戦の様子や那須家の家宝が展示されています。
「道の駅那須野が原博物館」(那須塩原市)
道の駅としては2004年に登録されました。ショップやレストランが無い、博物館と24時間トイレがある道の駅です。
博物館の入館料は障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。那須塩原の歴史と文化、そして自然を学ぶ展示があります。
館内はバリアフリーで、車椅子での展示見学に問題はありません。館内にバリアフリートイレがあります。
「道の駅東山道 伊王野」(那須町)
2000年に開業した道の駅。巨大な水車がシンボルです。
第一駐車場に屋根無しで身障者用駐車区画が2台分用意されます。一般駐車区画とは離れたトイレ棟の近くにあります。
トイレ棟にバリアフリートイレが2つ用意されます。男女別トイレの入口の手前にそれぞれあるので、異性介護でも問題なく利用できます。
新鮮野菜や地元の名産品を販売する「物産センター」は、2019年3月にリニューアルオープンしました。出入口はフラットで自動ドア。館内もフラット構造で、店内の通路幅は車椅子で通行できる余裕があります。
独立棟の「まつり伝承館」には、伊王野秋祭りで町を練り歩く2台の山車が展示されています。入館無料。出入口はスロープで車椅子での見学は可能です。
水車が曳くそばの実を手打ちした蕎麦処が「水車館」と、「和食処あんず館」があります。車椅子で利用できる稼働式のテーブル席やカウンター席、そして小間上がりの席があります。
「道の駅明治の森・黒磯」(那須塩原市)
1998年に開業した道の駅。7.5haの広大な敷地の中に、農産物直売所、レストラン、パン工房、「旧青木家那須別邸」、芝生広場、保存林「明治の森」などがあります。
明治の森は傾斜地ではなくフラットな敷地ですが、散策路の多くは未舗装路面です。
産直ショップ内の通路幅は余裕が無く、段差をスロープで回避します。トイレは別棟タイプでバリアフリートイレは一つ。設備は更新されています。
またパン工房が入る棟の中にも、少し狭いトイレですが、バリアフリートイレがあります。
「旧青木家那須別邸」は有料の施設ですが、入館料の障がい者減免制度があり、本人は無料、1級の人は介助者1名まで無料に減免されます。駐車場からバリアフリー通路で別邸まで行けます。スロープで玄関に上ると、そこから先は土足厳禁。別邸は屋根裏部屋付き2階建て構造ですが、エレベーターはないので、車椅子では1階フロアを無理のない範囲でみることになります。玄関横のウッドデッキには車椅子で行けます。別邸周辺は車椅子で散策できます。
「道の駅那須高原友愛の森」(那須町)
1997年に開業した道の駅。交通の要所にある施設で、夏休み期間やゴールデンウィークのお昼前後に利用される場合は、混雑を覚悟して利用してください。2015年より「那須高原友愛の森」内に臨時駐車場が開放されました。これにより駐車台数がほぼ2倍になりました。
施設は「農産物直売所」「物産センター」「食事処」、工芸品の製造販売を担う「工芸館」、「観光案内所」という構成です。
直売所はそれほど広くはありません。また通路幅も余裕はありません。トイレは設備更新されています。
食事処は「なすとらん」。地場の食材をつかった「おふくろの味」がコンセプトのレストランです。営業はランチタイムのみ。混雑が問題ですが、施設としては車椅子での利用は可能です。
「工芸館」は1986年の開館。地元の工芸師の手作り作品が製造販売されています。昭和の建物ですが、スロープが設置され、車椅子でも店内回遊ができます。また製作体験もできます。
「観光交流センター」は巨大な樽のような建物で、内装も面白い施設です。那須の観光地のカタログや割引券が置いてあります。
「道の駅湯の香しおばら(アグリパル塩原)」(那須塩原市)
1996年に開業した道の駅。古い施設ですが2020年に大規模にリニューアルされた、車椅子で利用できる施設です。身障者用駐車区画は3か所に合計で7台分用意されています。
フラットな広場を中心にして、コの字型に農産物直売所、食事処、カフェなどが並びます。
農産物直売所はリニューアルで大きくなりました。車椅子で利用できる通路幅が確保されています。
食事処はフラットな構造で、可動式テーブル席があるので、車椅子での利用は可能です。
バリアフリートイレは、独立トイレ棟と施設棟内に用意されています。
「アグリのパン屋 あ・グッド」は少し離れた場所、一段低い左側駐車場の前にあります。
道の駅湯の香しおばらは、地元産の美味しいものと出会える道の駅です。
(本稿は2019年1月に初稿を執筆しました)
栃木県「道の駅」の紹介記事は、別に「栃木県東編」「栃木県南編」「栃木県央編」を掲載しています。クリックすると別稿が開きますので、ぜひご覧下さい。