各地に梅の名所がありますが、フラットな舗装路の散策で観梅ができる、車椅子向きのバリアフリーな梅園はほとんどありません。関東の主な梅の名所の現地の状況と、車椅子観梅のポイントを紹介します。
「小田原フラワーガーデン」
関東の有名な梅園の中では、お薦めできる車椅子で利用しやすい公園です。「渓流の梅園」に約200品種480本の梅が植栽されています。
梅園内に観梅のための舗装散策路が整備され、多少アップダウンはありますが、一般的な車椅子利用者なら通行可能です。
アクセスは車が便利です。身障者用駐車区画がある無料駐車場から梅園までのルートは、車椅子で容易に移動ができる舗装路です。
「池上梅園」
東京都大田区の車椅子利用者への配慮がある、バリアフリーに改修された梅林です。約30種類370本の梅が植栽されています。
丘陵斜面がある梅林です。傾斜面を上る散策路は階段ですが、正面入口から続く散策路は車椅子で移動できます。
斜面の梅林は下から見上げても十分に見応えがあります。またフラットな箇所にも梅が植栽され、その間を散策する路は木製デッキで、車椅子で問題なく通行できます。
フラット通路を進むと、独立棟のバリアフリートイレがあります。広くて綺麗なトイレで、オストメイトが備えられています。
斜面の路は階段で車椅子では通行できませんが、池上梅園は車椅子で観梅が楽しめる梅園です。
「国営昭和記念公園」
東京都立川市の昭和記念公園の「花木園」には、約20品種90本の梅が植栽され、フラットな舗装路から観梅できます。
車椅子利用者にとっては、広い公園なので移動距離が問題です。電車利用なら「西立川駅」から、車利用なら「立川口駐車場」の利用になりますが、どちらからも「花木園」まで1km程度の移動距離があります。距離が気にならない車椅子利用者にはお薦めできる公園です。
「日本庭園」でも観梅が楽しめます。「花木園」から「日本庭園」まで、1km程度の距離があります。
「湯島天神」
東京を代表する名所で、境内には約300本の梅があります。「唐門」から境内に入るとすぐに「梅園」があります。ここだけの観梅なら車椅子で可能です。
湯島天神での観梅の車椅子での問題点は、混雑と狭さと傾斜と段差です。大変混雑することが多いので、境内の車椅子での移動は苦戦します。本殿拝殿の参拝はさらに苦戦します。
湯島天神は崖に建つ社で、アクセス路は傾斜路か階段路、境内の周囲にある梅は崖に咲いています。車椅子での観梅は、境内の狭い範囲になります。
「熱海梅園」
約60品種500本の梅があります。明治19年に開園した梅園で、樹齢100年を超える古木があります。熱海梅園は傾斜地にあります。車椅子での問題点は、傾斜路の克服です。
アクセスは車が便利ですが、駐車場から梅園へのルートが坂道です。入園口付近だけはフラットですが、その先の園路はすべて坂道で、傾斜は楽ではありません。車椅子で園内すべてを通行するのは、かなり大変です。体力の範囲で無理のない観梅になります。
「水戸偕楽園」
偕楽園は約100品種3,000本の梅がある、最大規模の梅園です。
梅園内および他園内の通路がバリアフリーではなく、未舗装路やデコボコがある舗装路面を通行します。また梅まつり期間中は大変混雑するので、園に近い駐車場の確保に苦労します。
車椅子での観梅の問題点は、路面の悪さです。デコボコ路の通行があまり苦にならない人なら、混雑のピークをずらせば観梅できます。
「国営武蔵丘陵森林公園」
埼玉県滑川町の森林公園。梅林に最も近いのは「南口」です。南口から高低差のある舗装路を約600m移動します。品種の多さでは日本有数の梅林です。園内の南向斜面に約500本が植栽されています。
斜面の下に「雅の広場」があります。そこから舗装された傾斜散策路が斜面の上の「古鎌倉街道」まで続きます。多少のアップダウンが通行可能な人なら、武蔵丘陵森林公園の梅林は、車椅子で観梅を楽しむことが出来ます。
「越生梅林」
2ヘクタールの敷地に1,000本の梅がある、埼玉県の巨大な梅園です。
梅まつり期間中は、来場者用の駐車場が用意されますが、満車や道路の渋滞がおこります。それでも身障者用駐車場が用意されるので、車椅子利用者は車の利用が便利です。
梅園内はほとんどが荒れた未舗装路面です。車椅子での移動は快適ではありません。
「曽我梅林」
神奈川県小田原市にある関東最大規模の梅園で、約35,000本の梅が咲きます。梅まつり期間中は、身障者用駐車場とバリアフリートイレが用意されます。
梅園全体、ほとんどがデコボコのある未舗装路面です。車椅子では無理のない範囲での移動になります。
「府中市郷土の森博物館」
東京都府中市にある、博物館と古民家園そして庭園がある施設です。梅園としての知名度は高くありませんが、舗装散策路があるので、車椅子での観梅は比較的容易にできる施設です。約60種1,100本の梅が植栽されています。
ただしフラットな敷地ではありません。正面入口から古民家など「復元建築物」があるエリアまでは上り坂で、そこから梅園がある庭園にかけては下り坂です。多少のアップダウンは通行出来るに方に、お薦めできる梅園です。
「町田薬師池公園」
東京都町田市の公園で梅園としての知名度は高くありませんが、薬師池のほとりに約250本の梅林があります。園内は舗装散策路があり、車椅子での移動や観梅は可能です。
ただし駐車場や周囲の道路から園内へ入るルートが、勾配のある傾斜路または階段路です。身障者専用駐車場か北駐車場からは車椅子で園内へ入ることができます。
「牛天神」
東京都文京区春日にある、紅梅まつりが有名な天神様です。とても小さな境内で、紅梅は数えるほどしかありませんが、その佇まいは美しく、人気があります。
車椅子利用の場合、アクセスに苦労します。参拝者用駐車場はなく、春日駅方面から富坂を上ります。また境内も未舗装で路面はデコボコです。
「谷保天満宮」
東京都国立市の天神様で、約350本の梅林があります。
国道20号線に面した参道入口の横に、未舗装路面の参拝者用駐車場があります。ここまでは車椅子で来ることが出来ます。
梅園は駐車場の裏から境内へかけての傾斜面にあり、路面はデコボコが激しい未舗装です。また梅園の横に、祈祷を受ける車のための車道がありますが、かなり荒れた傾斜路で、車椅子向きの道ではありません。したがって車椅子での本殿方面への移動も簡単ではありません。車椅子での観梅は、駐車場付近から無理のない範囲になります。
ご自身やご家族の障がいの状況に応じて、観梅をお楽しみ下さい。
(本稿は2020年2月に執筆しました)