「道の駅」は車椅子で利用できる施設ですが、し現地のバリアフリー状況はそれぞれです。車椅子目線での情報と施設の特徴を紹介します。
本稿は埼玉県の秩父地区(秩父市、横瀬町、皆野町、長瀞町、小鹿野町)にある「道の駅」情報です。開業年が新しい順に紹介します。
なお道の駅の名称をクリックすると、より詳しいバリアフリー情報ページにリンクします。ご参照ください。
「道の駅和紙の里ひがしちちぶ」(東秩父村)
2016年10月に道の駅として開業した新施設です。
「東秩父村和紙の里」として30年前から営業していた施設をベースに、フードコート付き産直ショップ棟とバスターミナル等を新設し、観光情報館を増設。駐車場は再整備。古い施設と新築施設が融合した複合施設です。
新しい施設から紹介します。
駐車場は施設正面の第一駐車場は舗装され段差がなく、身障者用駐車区画が2台分あります。ここが満車の場合は、道を隔てた未舗装の第二・第三駐車場に利用になります。
第一駐車場の横にある大型建造物は、バスターミナル施設です。
施設正面に建つ新しい建物が、新設された産直ショップ棟です。和紙的な装飾が施されています。
この棟に屋外から出入りするトイレがあり、バリアフリートイレが1つ設置されています。
産直ショップ「JA埼玉中央東秩父農産物直売所」の出入口及び店内はバリアフリー。通路幅は広く、車椅子で買い物ができます。
店舗の裏側には、屋外型のフードコートがあり、ラーメンやうどん、お団子ほかの軽食や喫茶を楽しめます。飲食コーナーには30cmほどの高さの台が置かれて、その上に簡易テーブルや椅子が配置され、段差回避スロープが設置されています。一部のラーメン店は、イートインタイプになっていますが、狭いカウンター式のお店で、車椅子で快適に利用できる構造ではありません。
ここからは「東秩父村和紙の里」時代からある、古い施設の紹介です。
「ふるさと文化伝習館」は和紙や竹籠などの展示会場。正面入口は段差で、車椅子では建物横にあるスロープの利用になります。施設内に入れば床面はほぼフラット。1F内は車椅子での移動が可能です。2階へは階段しかありません。
「特産品販売所」は和紙などの販売コーナー。入口はスロープで店内は狭く、車椅子での店内移動は苦戦します。
この横には増築したと思われる「トータルサポートセンター」があり、スタッフが常駐。インフォメーション兼観光案内所で、観光パンフレットがあります。車椅子での利用は可能です。
ひときわ大きな古い建物は「和紙製造所」。その名の通りの製作工場です。傾斜角度が強いスロープを上り館内へ。基本はバリア構造ですが、ギャラリーコーナーは車椅子でもそれなりに動けます。和紙を製造する道具などを自由見学できる施設。有料の製作体験企画もあります。
その奥が「日本庭園」と呼ばれるお庭で、段差がある構造です。お庭をとりまいて、研修会館、ギャラリー、古民家が並びます。いずれも車椅子で建物の前までは行けますが、内部は段差構造で車椅子では利用できません。
食事処「すきふね」は、段差構造を一部改修。席を選べば車椅子利用が可能です。
和紙「細川紙」はユネスコの無形文化遺産に登録されました。伝統を守り製品を紹介をする施設をベースにして、新しい施設を造り、道の駅として登録したユニークな施設です。
「道の駅みなの」(皆野町)
2012年開業。皆野寄居有料道路のICから近い、山の斜面を開発した立地で、施設は農産物直売所と食事処のシンプルな構成です。
身障者用駐車区画は4台分用意。前後から利用出来る設定で、駐車スペースの幅は余裕があります。
バリアフリートイレは独立トイレ棟と、施設棟の中にあります。施設棟内のトイレは、バリアフリートイレの入口に見える扉を開けると、そこは建物内への入口で、数歩先に本当のバリアフリートイレがある構造です。
農産物直売所はJAちちぶの直売所です。施設規模に比して大規模な売り場で、床面はフラットで通路幅は一般的なサイズ。混雑していなければ、車椅子で買い物が出来ます。秩父の山の産物がメイン。野菜、きのこ、漬物、そばやうどん粉、こんにゃく・・・、そして地元のお菓子やお酒などの加工品が並ぶコーナーもあります。
食事処「レストハウスみなの」は、車椅子で利用可能なテーブル席があります。地元素材の田舎料理が自慢。手打ちうどんが自慢です。
「道の駅果樹公園あしがくぼ」(横瀬町)
2004年開業。道の駅ですが、西武秩父線の駅前立地です。産直ショップと食事処が入る棟とトイレ棟、うどん打ちが体験できる交流施設棟で構成されます。
身障者用駐車スペースは3台分。バリアフリートイレは計3つ用意されます。
産直ショップは小規模で通路は狭く、空いているとき以外は車椅子での快適な店内回遊は難しいショップです。商品は地元の山の恵み系の農産物と、季節によっては果物が充実。花売り場があり、焼き立てパンのショップも入っています。
食事処はうどんなどの田舎料理が相応の価格で食べられます。また交流施設棟内に、あしがくぼ名物「ずりあげうどん」を提供する食堂があります。店内はフラットでテーブル席ですが、テーブルが簡単には移動できないタイプなので、車椅子で利用できるかは車椅子の仕様によります。
横瀬川の横に整備された広場はフラットで、車椅子で移動できます。
「道の駅ちちぶ」(秩父市)
2001年に開業した高速道路SAのようなイメージの施設。交通の要所に立地し、集客力があります。商業施設が入るメイン棟とトイレ棟の構成です。
身障者用駐車区画は2台分用意。バリアフリートイレは、トイレ棟の男女別入口付近にそれぞれ、計2つあります。異性介護での利用は可能です。
駐車場から施設へは段差のある構造ですが、段差解消箇所を通り車椅子で移動できます。
メイン棟の約半分は農産物と土産品の売店コーナー。店内はフラット構造で、通路幅は並みレベル。空いていれば車椅子での買い物は可能です。
棟の中央部は観光情報コーナー。残り半分はグルメコーナーで、蕎麦処と食事処があります。蕎麦処はフードコート形式の「秩父そばの会」。食事処は「秩父食堂」。どちらも車椅子で食べやすい席が確保できれば利用できます。
施設敷地内に「名水ちちぶの水」があり、飲料用の自然水が源水かけ流し。車椅子からでも汲むことができます。
「道の駅両神温泉薬師の湯」(小鹿野町)
道の駅登録は1999年ですが、施設は1991年から供用されています。農林産物直売所と休憩所、そして日帰り温泉施設「薬師の湯」があります。「薬師の湯」は、特別なバリアフリー対策がある施設ではありませんが、浴室は2Fでエレベーターあり。ご自身やご家族の障がいの状況に応じて、利用の可否をご判断下さい。
身障者用駐車区画は2台分用意。トイレ棟が2つあり、その一つにバリアフリートイレがあります。
「両神農林産物直売所」は段差をスロープで迂回して利用します。店内はフラットで通路幅は余裕あり。車椅子で利用しやすいショップです。
隣接して「両神国民休養地」という広大な自然公園があります。県道から国民休養地内の公園管理道路に入り、3kmほど進むと道路は終点に。そこに無料駐車場があり、週末は公園係員が常駐します。この駐車場周辺の舗装路は、アップダウンがありますが車椅子で散策可能です。
「道の駅龍勢会館」(秩父市)
道の駅としては1998年の登録ですが、1992年に旧吉田町が立ち上げたロードサイド施設です。産直ショップ棟とトイレ棟、そして「龍勢会館」、2005年に開館した「秩父事件資料館」で構成されます。
駐車場が3つに分かれる構造。施設の両サイドと道を渡った側の3カ所にあります。身障者用駐車区画は計3台分あります。
バリアフリートイレは駐車場にあるトイレ棟に1つあります。
産直ショップはフラットな構造で通路幅はやや狭い設定。混雑すると車椅子での買い物は苦戦します。
併設される食事処は、2021年4月にオープンした「にぐるまやダイニング」です。
「龍勢会館」と「秩父事件資料館」は有料の施設で、入場料の障がい者減免制度はありません。段差箇所にはスロープがあります。
「龍勢会館」は旧吉田町に伝わる「龍勢祭り」という、手製のロケットを飛ばす伝統神事を紹介する施設。土足禁止の施設で、入口で車椅子を拭いて入館します。
「秩父事件資料館」は、秩父事件を題材にした映画の撮影のために復元された、事件首謀者である井上伝蔵邸を撮影終了後に移築したもの。車椅子での見学は可能です。
産直ショップ棟と「秩父事件資料館」の間の通路を進むと「福寿草園」があります。福寿草園の周辺はオフロードですが、霜などで道がグチャグチャになっていなければ、車椅子で行くことが出来ます。
「道の駅大滝温泉」(秩父市)
道の駅登録は1995年ですが、施設は1994年から供用されています。大規模な複合施設で、日帰り温泉、歴史民俗資料館、食事処、CVSという構成です。
高低差のある施設でCVSは上部、それ以外は下部にあります。上部と下部にそれぞれ駐車場があり、身障者用駐車区画の用意があります。
日帰り温泉「遊湯館」の休憩所は和室です。バリアフリートイレはありますが、他には車椅子のための特別な施設はありません。障害者手帳の等級により利用料金の障がい者減免制度があります。
「大滝歴史民俗資料館」は有料施設で障がい者減免制度はありません。出入口は車椅子で通行しにくい手動ドアが2枚連続してある構造です。展示室は1つでフラット構造です。館内にバリアフリートイレはありません。奥秩父の自然と生活を紹介する小さな資料館です。
食事処「郷路館」はウッディーな造り。食券制のテイクアウト方式で、蕎麦など山の田舎料理系メニューが用意されます。テーブル席ですが、テーブルは固定タイプで、車椅子の足がテーブルの下に入り難い構造です。
CVSの入口にはスロープがあり、車椅子での利用は可能です。
トイレ棟は下部にありバリアフリートイレが1つあります。徒歩での上部下部の移動は階段ルートのみ。車椅子では車で移動するのが最善です。
「道の駅あらかわ」(秩父市)
登録は1993年で埼玉県第一号の道の駅ですが、施設の供用開始は更に早く1987年です。国道から横道に入った秩父鉄道の線路沿いで、週末は蒸気機関車がすぐ横を通ります。
緩やかな傾斜地に施設があります。傾斜の上から「食事処鈴ひろ庵」と「山里自然観」がある棟、「農産物直売所」棟という順番に配置され、「農産物直売所」の裏側に「トイレ棟」があります。
バリアフリートイレは、トイレ棟内と「山里自然館」棟内にあります。
身障者用駐車区画は、敷地の傾斜上部「食事処鈴ひろ庵」の前に2台分、農産物直売所前に2台分、トイレ棟側に1台分、計5台分あります。
食事処は小さな施設ながらコストパフォーマンスが良く人気。うどん類などが自慢のメニューです。やや手狭なテーブル席ですが、なんとか車椅子でも利用できます。
展示館「山里自然館」は地元の自然や動植物と、クラフトワーク系名産品の紹介など。無人・無料の施設で小規模ですが、車椅子での見学はできます。
「農産物直売所」も小規模な施設で、店内通路幅に余裕はありません。内部にスロープ箇所がありますが、混雑していなければ車椅子での利用は可能です。
地元産の農産物が並びます。山の恵みが中心です。行者にんにくが名物。そばの名産地なので、そば粉、そば麺、各種そば加工品が充実しています。小さいながらも、魅力的な地元の商品があるショップです。
埼玉県「道の駅」の紹介記事は、別に「埼玉県東部・中央地区編」「埼玉県北部・西部地区」を掲載しています。クリックすると別稿が開きますので、ぜひご覧下さい。