「道の駅」は車椅子で利用出来る施設ですが、現地のバリアフリー状況はそれぞれです。車椅子目線での情報と施設の特徴を紹介します。
本稿は山梨県の郡内(大月市、都留市、上野原市、丹波山村、小菅村、道志村、富士吉田市、山中湖村、西桂町、富士河口湖町、鳴沢村、忍野村)にある「道の駅」情報です。開業年が新しい順に紹介します。
「道の駅つる」(都留市)
2016年開業。リニアモーターカーの実験施設を公開している「どきどきリニア館」の近くで、国道139号線から脇道に入って500mほどの立地。国道の交差点の名称は「道の駅つる入口」に改称されています。
施設全域、段差がないフラット構造です。身障者用駐車区画は屋根無しで2台分。バリアフリートイレは1つ用意されます。
施設は1棟平屋構造で、産直ショップ、食事処、テイクアウトコーナー、情報コーナー、ATM、トイレなどで構成されます。車椅子での利用に大きな問題はありません。
農産物直売所はフラットな売り場で、通路幅は余裕があり、車椅子で買い物ができます。
食事処「お勝手場」は、カフェテリア方式で好きなメニューを選んで精算します。したがって車椅子利用者は健常な同行者がいると助かります。テーブル席で椅子は可動式なので、利用しやすい席を確保できれば車椅子で利用できます。大きな窓がある眺望の良いレストランです。
施設内に芝生広場、舗装された多目的広場があります。
「道の駅こすげ」(小菅村)
2015年開業。日帰り温泉「小菅の湯」と「フォレストアドベンチャーこすげ」に隣接しています。施設は2棟構成で、物販店舗、レストラン、地域情報コーナーがあります。
身障者用駐車区画は2か所に計4台分、屋根はない一般タイプです。
トイレはインドアトイレと屋外独立棟変形タイプの2か所あり、どちらにもバリアフリートイレが1つ用意されます。
産直ショップは「物産館」。店内への入口正面ドアは自動ドア、床面はフラット、通路幅は並みレベルで、車椅子で買い物が出来ます。
品揃えは葉物や根物の農産物はほとんどなく、漬物、コンニャク、「山女魚のアンチョビ」など。木工工芸品なども陳列されています。小菅村は平地が少なく田畑はあまりありません。
レストランは「源流レストラン」。店内はフラットで一般的なテーブル席。車椅子での利用に大きな問題はありません。周辺には飲食店は全くありません。山中唯一のレストランです。石窯があり、ピザやパスタがメニューの中心です。
「ふれあい館」は地域情報コーナー。観光パンフが置かれ、デジタルサイネージやタッチパネルがあります。スペースにゆとりがあり、車椅子で利用できます。
2014年11月に「松姫トンネル」が開通して大月方面からのアクセスが大幅に改善されました。ただし大月から「松姫トンネル」までの国道139号は、見通しの悪い狭い山岳道路が残っています。
東京からは2時間圏。二輪ライダーのツーリング先に人気なエリアで、「道の駅こすげ」は二輪駐車スペースがたっぷり用意されています。
「道の駅たばやま」(丹波山村)
日帰り温泉「丹波山温泉のめこい湯」の駐車場に、「農産物直売所」「軽食堂」「トイレ」を新設し、道の駅として2008年から営業しています。
日帰り温泉の駐車場といっても、温泉施設は川の向こう側。長い坂を下り、吊橋を渡って行きます。
身障者用駐車区画として、施設寄りの区画6台分に車椅子マークがペイントされていますが、駐車スペースは一般区画と同じで広くはありません。バリアフリートイレはトイレ棟に1つあります。
食事処は「軽食堂R411」。小さな食堂です。入口はスロープ構造で、車椅子で入店できますが、店内は狭く車椅子で移動できるスペースの余裕はありません。ジビエ料理のメニューがあります。
物販ショップは小規模で通路幅の余裕はなく、車椅子での店内移動はやや苦戦します。丹波山村の山の産物、鹿のソーセージなどが並びます。
「道の駅富士吉田」(富士吉田市)
2003年開業。地ビールレストラン、富士山アリーナ、富士山レーダードーム館がある「リフレふじよしだ」エリア内の「道の駅」です。
「道の駅富士吉田」は、産直ショップ、物産コーナー、軽食コーナー、観光情報コーナーなどで構成されます。
身障者用駐車区画は屋根なしで3台分。施設へは駐車場からスロープで上ります。トイレは別棟タイプで独立したバリアフリートイレは1つ。男女別トイレの中にも広い個室が用意されています。
季節が良い好天の週末ともなると、大混雑する施設です。メインの駐車場が満車になり、遠くの駐車場に誘導されることも珍しくありません。
産直ショップと物産コーナーは、通路幅にそれほど余裕がある設定ではありません。混雑すると車椅子での買い物は苦戦します。
「吉田のうどん」を提供する軽食コーナーはテーブル席があり、車椅子で利用できます。市内には数多くの「吉田のうどん」店がありますが、お座敷席が主力のお店が多い。軽食コーナーは、車椅子で安心して利用できる希少な「吉田のうどん」のお店です。
「道の駅かつやま」(富士河口湖町)
1998年開業。かつては「勝山村」。平成の大合併で2003年に「富士河口湖町勝山地区」になりました。河口湖畔の道の駅。夕焼けの河口湖の風景がとても美しい場所です。
2013年に平屋の別棟が誕生し、名物「イトリキカレー」のレストランが移転しました。「イトリキカレー」は地元の飲み屋「糸力」の裏メニューカレーを、糸井重里氏が絶賛したことがきっかけでブレーク。1998年に道の駅が開業するにあたって、勝山村長が道の駅の目玉にしたい、と働きかけてレストランのメニューに登場。道の駅レストランの看板メニューになり現在に至っています。
このレストラン棟の他に、1Fが小規模な直売所で元レストランの2Fは「円形展望室」の棟と、観光情報コーナーと休憩室がある棟、トイレ棟があります。身障者用駐車区画はトイレ棟の近くに2台分用意されます。
直売所は小規模で通路幅に余裕はありません。2F「円形展望室」へは階段しかありません。
トイレ棟にバリアフリートイレが1つ。休憩室は車椅子で利用できるスペースがあります。
目の前は「小海公園」で河口湖沿いに湖畔遊歩道が整備されている観光地。河口湖の中でもこのエリアは釣りが盛んな場所であり、道の駅利用者だけではなく、河口湖レジャーの拠点になっています。
「道の駅どうし」(道志村)
1998年開業。最寄りの高速ICは「都留」。そこから山道を20km。相模湖ICまで30km。御殿場ICまで35km。河口湖ICまで38km。電車の駅だと橋本駅までが40km。山の中の川沿いの立地です。
道志村は人口約2000人、世帯数で500ほどの村。村を走る国道413号線は、平成になるまで完全舗装路ではありませんでした。
施設はメイン商業棟と別棟、独立トイレ棟で構成されます。身障者用駐車区画は屋根無しで3台分。トイレ棟にはバリアフリートイレが男女別に各1つあります。
メインの商業棟に入るのは、直売所&お土産ショップと食事処です。2Fが休憩所になっていますが、階段のみなので車椅子での利用は出来ません。
直売所の通路幅はやや狭く、混雑時は車椅子での買い物は苦戦します。村興しの中心は「クレソン」。1970年代から村での栽培が始まり、現在では生産高日本一の村。生クレソン以外にも、クレソンうどん、クレソンそば、クレソン饅頭、クレソンケーキなどの商品開発が行われ、この直売所で販売されています。
食事処はスペースに余裕があり、車椅子でも利用しやすいお店です。セルフサービスなので、車椅子利用者は健常な同行者がいると助かります。
道の駅の裏手には「道志川」が流れ、そこに架かる橋は「かっぱ橋」。吊橋です。橋を渡った先には、オートキャンプ場の受付があります。「かっぱ橋」は車椅子で通行可能です。
道志村は横浜市に水を供給している村です。それが縁で2005年に両市村は協定が結ばれて、道志村を「横浜市民ふるさと村」とすることで合意されました。
「道の駅なるさわ」(鳴沢村)
1995年開業。道の駅が制度化されたのが1993年。第一世代の道の駅です。構造としては段差だらけですが、スロープ設置は進み、トイレも小規模改良されています。EV急速充電器も設置されました。
身障者用駐車区画は屋根無しで4台分用意。バリアフリートイレは一つ用意されます。
食事処はありません。直売所とテイクアウトコーナー、休憩コーナー、観光案内所とトイレで構成されます。
施設棟は段差の上、スロープで上ります。施設前の通路幅は狭く、車椅子一台分程度の幅です。直売所は中規模で店内の通路幅は並みレベル。混雑していなければ車椅子での買い物は可能です。
敷地内には「なるさわ富士山博物館」があります。元は有料の博物館でしたが、2008年に土産屋になった入館無料の博物館です。
駐車場から「なるさわ富士山博物館」入口へは、スロープルートがあります。博物館入口は手動ドアです。
1Fにトイレがあり、ここに独立した個室トイレが二つ、「身障者用トイレ」と「親子連れ用のトイレ」があります。「身障者用トイレ」は手すりがついていますが、車椅子1台の収用がギリギリのサイズです。「親子連れ用のトイレ」はスペースの余裕はありますが、手すりはありません。
館内のルートは旧博物館コーナーからで、入口が車椅子では別入口になります。入口の数段の段差を回避するルートで、わずか数メートルで一般ルートと合流します。グループで行って、車椅子利用者1名だけがこちらのルートから行っても、すぐに合流できます。
その先は下りのスロープルートで「T-REX」エリア。火山の爆発で生き埋めになった恐竜が、吠えたり、噛んだり、指を動かしたりします。暗くて音が大きいので、苦手な人はご注意ください。
スロープを下りるとB1フロアに達します。このフロアには富士山を紹介するビデオが流れる「マウント・フジ・シアター」と、巨大富士山模型「これが富士山だ」があり、さらに富士山に関する疑問に答えるモニター設備「富士山アラカルト」、富士山の植生をBOXで紹介する「ギャラリー・マウント・フジ」があります。富士山徹底ガイドのフロア。いずれも車椅子で鑑賞可能です。内容はやや子供向けです。
ここから健常者は階段で1Fに戻ります。車椅子利用者はエレベーターを利用できます。
1Fは「鉱石ミュージアム」。運営会社は山梨県内で手広く観光産業を手掛けている「英雅堂」です。
山梨県「道の駅」の紹介記事は、別に「山梨県国中(峡北・峡東)編」と「山梨県国中(峡中・峡西・峡南)編」を掲載しています。クリックすると別稿が開きますので、ぜひご覧下さい。