コロナ禍による障がい福祉サービス利用者数の変化をやさしく解説

コロナ禍に襲われた2020年。障がい福祉サービスの利用者の行動はどのように変化したのか。2020年11月に、厚生労働省から同年2月から7月までの利用者実績が公表されました。利用者数の対前年同月比をもとに、注目すべき変化を紹介します。

○ショートステイは5割減

利用者数が最も減少したのは短期入所(ショートステイ)でした。

2020年2月までは右肩上がりに利用者数が増加していましたが、3月が-14.8%、4月は-39.5%、5月は-52.8%、6月は-34.2%、7月が-24.5%です。

5月が底で、6月からは上向き傾向ではありますが、大幅な利用者減が続いています。この数値には、施設側の判断で利用を中止または縮小しているケースも含まれます。

一方、短期入所利用者の月間平均利用日数は、2月の6.4日から、3月は6.9日、4月は7.3日、5月は8.6日、6月は7.4日、7月は7.1日と、利用者数の減少と反比例して伸びています。ベッドに空きがあるので、利用日数を増やした人が多くいることが想像されます。

○訪問系サービスは2桁減

利用者減少のピークであった5月の数値で、居宅介護が-3.5%、重度訪問介護が-5.1%、そして同行援護が-18.9%、行動援護が-25.8%でした。

ただしその後は回復基調で、7月にはほぼ前年並みから一桁減に戻しています。

○地域移行支援は3割減

2月は+5.1%と前年対比増でしたが、3月は-15.8%、4月は32.5%、5月は32.8%、6月は-14.9%、7月は-14.5%でした。

コロナ禍により、地域移行の動きは、ブレーキがかかったことが推定されます。

○放課後等デイサービスは利用者増

多少の影響はありますが、対前年利用者数では伸び止まっていません。

2月は+12.5%。これを基準にすると鈍化しますが、3月は+4.4%、4月は+3.2%。利用者減のピーク5月は-2.5%になりましたが、6月は+7.5%、7月は+7.2%と、すぐに回復しています。

放課後等デイサービスは、利用者の二桁増が続いていたので、この数値でもコロナ禍のマイナス影響はあります。しかし利用者数は増加しています。

利用者数が多い、この他の主なサービスは、総じて5月が底、6月以後は回復し、7月には前年増に転じています。

利用者数と施設数が多いこと、利用者数の減少幅および回復基調の弱さからみて、コロナ禍でもっとも短期的なマイナス影響を受けている障がい福祉サービスは、短期入所(ショートステイ)です。

(本稿は2020年11月に執筆しました)

別稿で「障がい福祉サービスの利用者数と社会的費用をやさしく解説」を掲載しています。ご参照ください。

障がい福祉サービスの利用者数と社会的費用をやさしく解説

生活介護、就労支援、放課後等デイサービスなど、障がい福祉サービスは、何人の障がい者に利用され、どれくらいの予算が執行されているのか。2020年11月に公開された厚生労働省の資料から、具体的な数値を紹介します。

○利用者数は127万人

2020年7月の月間合計利用者数は127万人でした。大人と子供の内訳は、障がい者が90.6万人、障がい児が36.3万人です。

この利用者総数127万人は、一年前の2019年7月に比べて103.8%、3年前の2017年7月に比べると122.2%となっています。

2016年7月に利用者総数が100万人を突破しました。それ以後も、毎年数万人単位で利用者が増加しています。

○年間総費用は2兆7500億円

障がい福祉サービスへの社会費用の総額は、2019年度の実績で2兆7,493億円でした。

前年の2018年度は2兆5,540億円、2017年度は2兆1,892億円、2016年度は2兆0,225億円、2015年度は1兆8,455億円、2014年度は1兆6,798億円です。5年間で1兆円増加しました。

○一人当たりの平均月額費用は21万円

2019年度の実績で一人当たりの月額費用が計算されています。

それによると大人の障がい者は月額21.1万円で前年比102.2%、子供の障がい児は月額11.4万円で前年比104.6%です。

○生活介護に7千億円

サービスの種類別に社会的費用がどれくらい使われているのか。2019年度の総額2兆7,493億円の内訳です。

費用額の1位は生活介護サービスで、年間7,673億円。2位が就労継続支援B型で、3,814億円、3位が放課後等デイサービスの3,287億円です。以上の3サービスで費用総額の約54%を占めています。

○生活介護の一人当たりの月額費用は22万円

総費用額が多い上位3サービスの一人当たりの月額費用です。

生活介護サービスは223千円、就労継続支援B型は120千円、放課後等デイサービスは121千円です。

一人当たりの月額費用が多いサービスは、1位が重度障害者等包括支援サービスで821千円、2位が重度訪問介護サービスで673千円、3位が福祉型障害児入所施設で290千円です。

現在の日本では、127万人の障がい者・児が、月額平均で21万円の助成を得て、障がい福祉サービスを利用しています。

(本稿は2020年11月に執筆しました)

別稿で「障がい児・者向けサービスの事業所数と利用者数の概況」を掲載しています。ご参照ください。

障がい児・者向けサービスの事業所数と利用者数の概況

生活介護、居宅介護、就労継続支援、地域移行支援、放課後等デイサービスなど、障害者総合支援と児童福祉法に基づく、様々な障がい児・者向けのサービスが実施されています。

各サービスの事業所数と利用者数はどれくらいなのか。2020年10月に公表された「令和2年版厚生労働白書」で示された数値から、概況を紹介します。

○事業所数最多は2万カ所ある「居宅介護(ホームヘルプ)」

厚生労働省の推計値では、全国で20,488の事業所が活動しています。利用者数は183,236人。一事業所当たりの平均利用者数は8.9人になるので、小規模な事業所が数多く存在していることがわかります。

身体障がい児・者の内、在宅している人が429万人程度と推計されているので、これを分母にすると利用者は4%程度になります。「居宅介護(ホームヘルプ)」は、重度の障がいがある18万人が利用しています。

○利用者最多は29万人の「生活介護」

通所系サービスである「生活介護」の利用者数は、286,074人です。「居宅介護(ホームヘルプ)」よりも、約10万人多くの障がい者が利用しています。

事業所数は10,967ヵ所。一事業所当たりの平均利用者数は26.1人になります。就労が難しいレベルの大人の障がい者、約29万人が、「生活介護」施設に通所をして日中の時間を過ごしています。

○知的障がい児の多くが利用している「放課後等デイサービス」

「放課後等デイサービス」の利用者数は、216,848人です。18歳未満の知的障がい児の総数が22万5千人で、内施設入所児が1万1千人、在宅児が21万4千人と推定されているので、未就学の児童も含めた在宅の知的障がい児数と「放課後等デイサービス」の利用者数は、ほぼ等しくなります。知的障がいを伴わない身体障がい児が利用するケースもありますが、「放課後等デイサービス」は、在宅で通所が可能な体力がある知的障がい児のほぼ全員が利用している状態に近いのかもしれません。

「放課後等デイサービス」の事業所数は、14,465ヵ所。一事業所当たりの平均利用者数は15.0人になります。

○34万人が働く「就労継続支援(A型・B型)」

「就労継続支援」はA型とB型を合わせて、16,959事業所が活動しています。利用者数はA型B型合計で、341,536人です。34万人が働く労働市場に成長しました。一事業所当たりの平均利用者数は20.1人。職場としては平均すると小規模です。

一般企業等への就労を希望する人が利用する「就労移行支援」は、事業数が3,090ヵ所、利用者数は33,548人。一般就労に移行した人を支援する「就労定着支援」は、事業数が1,215ヵ所、利用者数は11,037人です。

「就労継続支援(A型・B型)」と比べると、「就労移行支援」及び「就労定着支援」は、一桁少ない利用者数にとどまっています。

○「児童発達支援」を利用する幼児は12万人

未就学の障がい児が利用する「児童発達支援センター」と「児童発達支援事業所」は、7,275事業所あり、122,441人の児童が利用しています。一事業所当たりの平均利用者数は16.8人です。利用者数を5学年で割り算した場合、1学年当たり約2万5千人の児童が「児童発達支援」を利用しています。

保育所等に通う障がいのある児童を対象とした「保育所等訪問支援」は、事業数が595ヵ所、利用者数は3,663人と、サービスの規模は大きくありません。

○ショートステイ、グループホーム、夜間サービスは18万人が利用

サービスの意味合いは異なりますが、「短期入所(ショートステイ)」は4,745事業所で利用者数は48,629人、「共同生活援助(グループホーム)」は9,111事業所で利用者数は131,627人です。重複利用者は多くはないと推定出来ますので、両サービスを単純加算して、合計利用者数は180,256人となります。

一方、施設等から一人暮らしに移行した人へのサービス「自立生活援助」は、今回の白書でデータでは、事業数が198ヵ所、利用者数が918人と、極めて少ない数値になっています。

各種の障がい福祉サービスは、大勢の障がい児・者に利用されています。

(本稿は2020年10月に執筆しました)

別稿で「現状調査からみる 放課後等デイサービス 今後の課題」を掲載しています。ご参照ください。