障がい福祉サービスの利用者数と社会的費用をやさしく解説

生活介護、就労支援、放課後等デイサービスなど、障がい福祉サービスは、何人の障がい者に利用され、どれくらいの予算が執行されているのか。2020年11月に公開された厚生労働省の資料から、具体的な数値を紹介します。

○利用者数は127万人

2020年7月の月間合計利用者数は127万人でした。大人と子供の内訳は、障がい者が90.6万人、障がい児が36.3万人です。

この利用者総数127万人は、一年前の2019年7月に比べて103.8%、3年前の2017年7月に比べると122.2%となっています。

2016年7月に利用者総数が100万人を突破しました。それ以後も、毎年数万人単位で利用者が増加しています。

○年間総費用は2兆7500億円

障がい福祉サービスへの社会費用の総額は、2019年度の実績で2兆7,493億円でした。

前年の2018年度は2兆5,540億円、2017年度は2兆1,892億円、2016年度は2兆0,225億円、2015年度は1兆8,455億円、2014年度は1兆6,798億円です。5年間で1兆円増加しました。

○一人当たりの平均月額費用は21万円

2019年度の実績で一人当たりの月額費用が計算されています。

それによると大人の障がい者は月額21.1万円で前年比102.2%、子供の障がい児は月額11.4万円で前年比104.6%です。

○生活介護に7千億円

サービスの種類別に社会的費用がどれくらい使われているのか。2019年度の総額2兆7,493億円の内訳です。

費用額の1位は生活介護サービスで、年間7,673億円。2位が就労継続支援B型で、3,814億円、3位が放課後等デイサービスの3,287億円です。以上の3サービスで費用総額の約54%を占めています。

○生活介護の一人当たりの月額費用は22万円

総費用額が多い上位3サービスの一人当たりの月額費用です。

生活介護サービスは223千円、就労継続支援B型は120千円、放課後等デイサービスは121千円です。

一人当たりの月額費用が多いサービスは、1位が重度障害者等包括支援サービスで821千円、2位が重度訪問介護サービスで673千円、3位が福祉型障害児入所施設で290千円です。

現在の日本では、127万人の障がい者・児が、月額平均で21万円の助成を得て、障がい福祉サービスを利用しています。

(本稿は2020年11月に執筆しました)

別稿で「障がい児・者向けサービスの事業所数と利用者数の概況」を掲載しています。ご参照ください。

「バリアフリーマップ」市町村作成マニュアルをやさしく解説

全国各地でバリアフリーマップが続々と作成されています。2018年にバリアフリー法が改正され、市町村によるバリアフリーマップの作成に法的な根拠ができました。そして2020年3月には、国土交通省によって「みんなでつくるバリアフリーマップ作成マニュアル~市町村による一元的なバリアフリー情報提供の手引き~」がまとめられ、公開されています。

バリアフリー法に基づく「バリアフリーマップ」には、何が求められているのか。作成マニュアルからポイントを抜粋して紹介します。

○マップ作成が推奨される3種のエリア

どのようなエリアを対象としたマップの作成が望ましいのか。マニュアルでは以下の3種のエリアを例示的に推奨しています。

・公共施設や商業施設の集積エリア

市民の外出先となる、町の中心部が推奨されています。町の中心部は、バリアフリー基本構想の重点整備地区に指定されているケースが多く、実際に市町村によって作成されているバリアフリーマップの約4割が重点整備地区を対象にしています。重点整備地区の面積の目安は、400ha以下とされています。

・観光地

観光客や買い物客を誘致したい観光地や商店街などが推奨されています。市町村が手がける前から、観光協会など民間団体によって、バリアフリーマップが作成されているケースが多々あります。その場合は官民一体になって、バリアフリーマップのメンテナンスや高度化に取り組みます。マニュアルには民間に丸投げしないようにというニュアンスが記載されています。

・イベント会場

市町村内で開催されるイベントにあわせて、会場へのアクセスルート、会場内外のバリアフリー設備状況などを、バリアフリーマップとしてまとめることが推奨されています。この場合は会場周辺で配布することにも配慮した、情報の編集に気を配ります。

○エリア全体の経路情報が重要

特定の施設内の情報だけではなく、エリア全体、または施設から施設への移動ルートの情報が重要とされています。

段差が回避できるルート、安全な歩道が整備されているルート、雨天で濡れないルートなどの情報に加えて、ルート途中にあるトイレの情報などを付加することが推奨されています。

○バリア情報の提供も効果的

ここに段差がある、この区間が坂道など、バリア情報の記載が薦められています。現地現場の現実を正確に知ることで、利用者側が正しく判断できる情報の掲載が推奨されています。

○現地現物の写真は役立つ

写真の掲載が強く推奨されています。バリアフリー設備などの写真に加え、曲がり角など経路案内に関わる写真の掲載も薦められています。

○トイレとエレベーター情報は最重要

設備の中では、トイレとエレベーターは特に詳しい情報の提供が推奨されています。トイレは、広さと設備の詳細な状況がわかる、複数枚数の写真の掲載例が示されています。

○ピクトグラムを多用し、多言語対応する

マップの作成手法として、ピクトグラムを使用し、可能であれば多言語対応することが推奨されています。

○情報提供方法やメディアを工夫する

市町村が作成するバリアフリーマップをみれば必要な情報がすべてわかる、利用者側からみて一元的な情報提供になるように、しかし情報過多にならないように、工夫をすることが提案されています。

そのためには知りたい情報が検索できる機能を実装するなど、なるべく高機能なシステムによるバリアフリー情報の提供が推奨されています。

その一方で、情報内容の更新が簡単にできるPDFによるバリアフリーマップの提供も薦められています。

またWebを利用できない人のために、紙媒体での提供も必要としています。

マニュアルにははっきりとした記載はありませんが、「ペーパー版」「デジタル簡易版」「Web詳細版」など、複数のバリアフリーマップの作成が理想です。

○当事者と共にまち歩き点検をする

バリアフリーマップの作成にあたり、障がいのある人と一緒にまち歩きをして、現地現場のバリアフリー状況を点検することが推奨されています。

その行動を通じて、障がい者の意見を聞き、エリアのバリアフリー状況を正しく評価し、そして今後の見直しにつなげることが求められています。

○よりよい計画のための現状把握に役立てる

バリアフリーマップの作成によって、エリアの現実と障がい者の希望を把握し、バリアフリー法で市町村による作成が規定されている「マスタープラン・基本構想」と連動させることが求められています。

また、災害時の障がい者避難に役立てる「逃げるバリアフリーマップ」などへの応用が推奨されています。

「市町村による一元的なバリアフリー情報提供」を推進することで、現在と未来の町がつながることが期待されています。

(本稿は2020年11月に執筆しました)

別稿で「バリアフリー法によるマスタープラン基本構想制度をやさしく解説」を掲載しています。ご参照ください。

電車・バスなど交通機関の車椅子「接遇ガイドライン」をやさしく解説

電車、バス、タクシー、旅客機、客船など公共交通機関で働く人たちは、車椅子利用者への対応について、どのような教育研修を受けているのか。

2018年5月に国土交通省が「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン」を公開しています。このガイドラインを「交通事業者各社が自社のマニュアルを作成・改訂する際」の指針とすることが望まれるとされています。

接遇ガイドラインから、車椅子利用者向けの対応指針を抜粋して紹介します。

○車椅子利用者本人の意向を確認する

ガイドラインは、主に一人で交通機関を利用する車椅子利用者への接遇を想定しています。そのため、困っている様子の車椅子利用者をみかけたら、同じ目線の高さに腰を落とし、車椅子利用者に声をかけることとされています。

そして利用者本人から支援の申し出があった場合に速やかに対応するとしています。

またどのような支援を望むのか、よく本人に確認すること、としています。

○声をかけながら支援する

車椅子を押す支援行為をするときは、「動きます」など必ず本人に声をかけながら支援を行うことが推奨されています。

そしてなるべくゆっくり慎重に動き、衝撃を与えないように気を配ります。

上り坂は前向きか後ろ向きか希望を聞くこと、下り坂や溝越えをする場合は、後ろ向きにすることとされています。

○エレベーターは直角に乗降

床とエレベーターのかごの間の溝に車椅子のキャスターが落ちないように、エレベーターに対して直角に出入りすることが推奨されています。

○階段は4人以上で対応

階段しかなく、車椅子を人力で持ち上げて移動する際には、4人以上で対応することとしています。その際、「せーの」などの掛け声は、荷物運びを連想させるので好ましくないと注意しています。

○身体に触れる介助は特に気を付ける

車椅子の移乗など、身体が密着する支援を行う場合は、必ず事前に了解をえること、また触れられたくない場所があるか確認をすること、とされています。

○ユニバーサルデザイン 2020と心のバリアフリー

「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン」は、平成 29 年 2 月に決定された政府の「ユニバーサルデザイン 2020 行動計画」に基づいて作成されました。その中ですべての支援にとって重要なのは「心のバリアフリー」とされています。

そして「心のバリアフリー」を体現するためのポイントとして以下の3点が挙げられています。

(1) 障害者への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」 を理解すること。

(2) 障害者(及びその家族)への差別(不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供)を行わないよう徹底すること。

(3) 自分とは異なる条件を持つ多様な他者とのコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し、共感する力を培うこと。

この3点を座学と実践研修を通じて学ぶことが、接遇ガイドラインの基本です。

公共交通機関で働く多くの人たちは、以上のようなガイドラインに従った教育研修を受けています。

(本稿は2020年11月に執筆しました)

別稿で「障がい者差別・合理的配慮 交通事業者を悩ます障がい者の言動」を掲載しています。ご参照ください。