電車・バスなど交通機関の車椅子「接遇ガイドライン」をやさしく解説

交通機関の車椅子「接遇ガイドライン」

電車、バス、タクシー、旅客機、客船など公共交通機関で働く人たちは、車椅子利用者への対応について、どのような教育研修を受けているのか。

2018年5月に国土交通省が「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン」を公開しています。このガイドラインを「交通事業者各社が自社のマニュアルを作成・改訂する際」の指針とすることが望まれるとされています。

接遇ガイドラインから、車椅子利用者向けの対応指針を抜粋して紹介します。

○車椅子利用者本人の意向を確認する

ガイドラインは、主に一人で交通機関を利用する車椅子利用者への接遇を想定しています。そのため、困っている様子の車椅子利用者をみかけたら、同じ目線の高さに腰を落とし、車椅子利用者に声をかけることとされています。

そして利用者本人から支援の申し出があった場合に速やかに対応するとしています。

またどのような支援を望むのか、よく本人に確認すること、としています。

○声をかけながら支援する

車椅子を押す支援行為をするときは、「動きます」など必ず本人に声をかけながら支援を行うことが推奨されています。

そしてなるべくゆっくり慎重に動き、衝撃を与えないように気を配ります。

上り坂は前向きか後ろ向きか希望を聞くこと、下り坂や溝越えをする場合は、後ろ向きにすることとされています。

○エレベーターは直角に乗降

床とエレベーターのかごの間の溝に車椅子のキャスターが落ちないように、エレベーターに対して直角に出入りすることが推奨されています。

○階段は4人以上で対応

階段しかなく、車椅子を人力で持ち上げて移動する際には、4人以上で対応することとしています。その際、「せーの」などの掛け声は、荷物運びを連想させるので好ましくないと注意しています。

○身体に触れる介助は特に気を付ける

車椅子の移乗など、身体が密着する支援を行う場合は、必ず事前に了解をえること、また触れられたくない場所があるか確認をすること、とされています。

○ユニバーサルデザイン 2020と心のバリアフリー

「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン」は、平成 29 年 2 月に決定された政府の「ユニバーサルデザイン 2020 行動計画」に基づいて作成されました。その中ですべての支援にとって重要なのは「心のバリアフリー」とされています。

そして「心のバリアフリー」を体現するためのポイントとして以下の3点が挙げられています。

(1) 障害者への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」 を理解すること。

(2) 障害者(及びその家族)への差別(不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供)を行わないよう徹底すること。

(3) 自分とは異なる条件を持つ多様な他者とのコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し、共感する力を培うこと。

この3点を座学と実践研修を通じて学ぶことが、接遇ガイドラインの基本です。

公共交通機関で働く多くの人たちは、以上のようなガイドラインに従った教育研修を受けています。

(本稿は2020年11月に執筆しました)

別稿で「障がい者差別・合理的配慮 交通事業者を悩ます障がい者の言動」を掲載しています。ご参照ください。