「バリアフリーマップ」市町村作成マニュアルをやさしく解説

「バリアフリーマップ」市町村作成マニュアル

全国各地でバリアフリーマップが続々と作成されています。2018年にバリアフリー法が改正され、市町村によるバリアフリーマップの作成に法的な根拠ができました。そして2020年3月には、国土交通省によって「みんなでつくるバリアフリーマップ作成マニュアル~市町村による一元的なバリアフリー情報提供の手引き~」がまとめられ、公開されています。

バリアフリー法に基づく「バリアフリーマップ」には、何が求められているのか。作成マニュアルからポイントを抜粋して紹介します。

○マップ作成が推奨される3種のエリア

どのようなエリアを対象としたマップの作成が望ましいのか。マニュアルでは以下の3種のエリアを例示的に推奨しています。

・公共施設や商業施設の集積エリア

市民の外出先となる、町の中心部が推奨されています。町の中心部は、バリアフリー基本構想の重点整備地区に指定されているケースが多く、実際に市町村によって作成されているバリアフリーマップの約4割が重点整備地区を対象にしています。重点整備地区の面積の目安は、400ha以下とされています。

・観光地

観光客や買い物客を誘致したい観光地や商店街などが推奨されています。市町村が手がける前から、観光協会など民間団体によって、バリアフリーマップが作成されているケースが多々あります。その場合は官民一体になって、バリアフリーマップのメンテナンスや高度化に取り組みます。マニュアルには民間に丸投げしないようにというニュアンスが記載されています。

・イベント会場

市町村内で開催されるイベントにあわせて、会場へのアクセスルート、会場内外のバリアフリー設備状況などを、バリアフリーマップとしてまとめることが推奨されています。この場合は会場周辺で配布することにも配慮した、情報の編集に気を配ります。

○エリア全体の経路情報が重要

特定の施設内の情報だけではなく、エリア全体、または施設から施設への移動ルートの情報が重要とされています。

段差が回避できるルート、安全な歩道が整備されているルート、雨天で濡れないルートなどの情報に加えて、ルート途中にあるトイレの情報などを付加することが推奨されています。

○バリア情報の提供も効果的

ここに段差がある、この区間が坂道など、バリア情報の記載が薦められています。現地現場の現実を正確に知ることで、利用者側が正しく判断できる情報の掲載が推奨されています。

○現地現物の写真は役立つ

写真の掲載が強く推奨されています。バリアフリー設備などの写真に加え、曲がり角など経路案内に関わる写真の掲載も薦められています。

○トイレとエレベーター情報は最重要

設備の中では、トイレとエレベーターは特に詳しい情報の提供が推奨されています。トイレは、広さと設備の詳細な状況がわかる、複数枚数の写真の掲載例が示されています。

○ピクトグラムを多用し、多言語対応する

マップの作成手法として、ピクトグラムを使用し、可能であれば多言語対応することが推奨されています。

○情報提供方法やメディアを工夫する

市町村が作成するバリアフリーマップをみれば必要な情報がすべてわかる、利用者側からみて一元的な情報提供になるように、しかし情報過多にならないように、工夫をすることが提案されています。

そのためには知りたい情報が検索できる機能を実装するなど、なるべく高機能なシステムによるバリアフリー情報の提供が推奨されています。

その一方で、情報内容の更新が簡単にできるPDFによるバリアフリーマップの提供も薦められています。

またWebを利用できない人のために、紙媒体での提供も必要としています。

マニュアルにははっきりとした記載はありませんが、「ペーパー版」「デジタル簡易版」「Web詳細版」など、複数のバリアフリーマップの作成が理想です。

○当事者と共にまち歩き点検をする

バリアフリーマップの作成にあたり、障がいのある人と一緒にまち歩きをして、現地現場のバリアフリー状況を点検することが推奨されています。

その行動を通じて、障がい者の意見を聞き、エリアのバリアフリー状況を正しく評価し、そして今後の見直しにつなげることが求められています。

○よりよい計画のための現状把握に役立てる

バリアフリーマップの作成によって、エリアの現実と障がい者の希望を把握し、バリアフリー法で市町村による作成が規定されている「マスタープラン・基本構想」と連動させることが求められています。

また、災害時の障がい者避難に役立てる「逃げるバリアフリーマップ」などへの応用が推奨されています。

「市町村による一元的なバリアフリー情報提供」を推進することで、現在と未来の町がつながることが期待されています。

(本稿は2020年11月に執筆しました)

別稿で「バリアフリー法によるマスタープラン基本構想制度をやさしく解説」を掲載しています。ご参照ください。