農林水産業で働く障がい者のための令和3年度農福連携施策

農林水産省が推進している農福連携。令和3年度の予算では「農山漁村振興交付金」が概算で98億円計上されています。その予算から、以下の農福連携事業を実施することが公表されました。事業目標は「令和6年度までに農福連携に取り組む主体を新たに3,000件創出する」ことです。

・農福、林福、水福連携の取組において、障害者や生活困窮者等の農林水産業に関する技術習得や作業工程のマニュアル化等を支援(上限150万円等)

・障害者等の雇用、就労に配慮した農林水産業用施設(農業生産施設、苗木生産施設、水産養殖施設等)及び安全・衛生面にかかる付帯施設等の整備を支援(上限1,000万円、2,500万円等)

・農福、林福、水福連携の全国的な展開に向けたプロモーション等を支援(上限1,000万円等)

・都道府県が実施する農林漁業者向けの普及啓発、農福、林福、水福連携の定着に向けた専門人材の育成等、現場の課題に即した取組を支援(上限500万円)

農福連携が目指している成果については、別稿「障がい者と仕事 農福連携事業 表彰審査基準からみる成果目標」を参照してください。

《生きるちから舎ニュース 2021年3月16日付》

脳性麻痺児のための産科医療補償制度 対象基準の改定

脳性麻痺児に対して3,000万円が補償される産科医療補償制度。2022年1月の分娩から対象基準が改定されます。

※現行制度については、別稿「脳性麻痺児に総額3千万円 産科医療補償制度をやさしく解説」を参照してください。

現行の基準は「在胎週数32週以上」でかつ「出生体重が1,400g以上」が保証の対象となる一般審査要件です。

「在胎週数28週以上」で、「出生体重が1,400g未満」の児は、「所定の低酸素状況の要件を満たすこと」という条件を満たしていると、個別審査で補償の対象と判断されます。低酸素状況の要件の「所定」とは、医学的に詳細な要件が設定されています。

これが2022年からの改定で、対象基準は「在胎週数が28週以上であること」だけに変わります。

この改定は、2009年の制度発足以後に収集分析された具体的な事例やデータに基づいています。

公益財団法人日本医療機能評価機構の見解では「個別審査で補償対象外とされた児の約 99% で、分娩に関連する事象または帝王切開が認められ、医学的には分娩に関連して発症した脳性麻痺と考えられました」としています。

また「胎児心拍数モニター等で感知できる範囲に限界があること、および個別審査は一定の低酸素状況を基準としているので、低酸素状況以外の状態で分娩に関連して発症した脳性麻痺は補償対象外となることが主な理由と考えられました」としています。

2009年から2015年までは「個別審査では約50%が補償対象外となっている」実績で、「同じような病態でも補償対象と対象外に分かれることがあり不公平感が生じている」「医学的に不合理な点があり、周産期医療の現場の実態に即していない」という意見が出されました。

ただし「28 週以上の早産児については、最近は脳性麻痺の発生率の減少が見られるように、近年の周産期医療の進歩により、医学的には未熟性による脳性麻痺ではなくなっています。また、実際の医療現場においては、成熟児と同じような医療が行われています。」としています。

したがって対象基準は「在胎週数が28週以上であること」に一本化されることになりました。

対象基準以外の改定はありません。対象は身体障害者手帳2級以上の重度障がいがある児。補償金額は3,000万円。申請期限は満5歳の誕生日までです。

《生きるちから舎ニュース2021年3月16日付》

国交省のバリアフリートイレ調査研究結果をやさしく解説

2021年3月「共生社会におけるトイレの環境整備に関する調査研究検討会」の報告書が取りまとめられました。事務局は国土交通省総合政策局安心生活政策課で、2020年からアンケート、インタビュー、ヒアリングなどを行なった、トイレに関わる現状が報告され、今後の方向性が提言されています。その中から、注目すべき3つの調査結果を抜粋して紹介します。

〇バリアフリートイレの使用理由

障がいの有無に関わらずにモニター908人を対象にした調査です。バリアフリートイレを使用した人が約40%。その使用理由の第一位は「一般のトイレが空いていなかったから」で58.2%。第二位が「一般のトイレが近くになかったから」で20.5%でした。

別の集団を対象にした調査でも、ほぼ同様の回答が得られています。

障がいなどの理由でバリアフリートイレを使用したい人だけを対象にした調査では、70%強の人が「多機能トイレが使用中のために待たされた経験」があるとしています。

一般のトイレが近くにあり、かつ空いていれば、バリアフリートイレの混雑が緩和されることが証明されました。

この結果、今後の提言には「一般トイレの混雑解消のため、適正な一般便房数の確保が望ましい」とされました。

〇駅のバリアフリートイレの利用者

乗降者数が違う5駅で、バリアフリートイレの利用者を目視チェックした結果です。

12時間調査の結果、利用者数は少ない駅で17人(組)、多い駅で105人(組)でした。その中で「肢体不自由者、視覚障害者、子ども連れ等の視覚的に属性がわかる者は各駅とも数名程度の利用」しかなく、「キャリーケースを持った者や高校生と思われる2名程度での着替え利用が見られた」と報告されています。

見た目ではわからない障がい者もいるので、断定はできませんが、駅のバリアフリートイレは、多目的に利用されています。

提言では「一般トイレの利用で支障ない人も含めて誰でも使用できるような「多機能トイレ」「多目的トイレ」等の名称ではなく、設置された設備や機能が必要な人が対象であることが伝わる情報提供、表記等とすることが必要」とし、「車椅子対応トイレ」「オストメイト対応トイレ」などの名称が例示されています。

〇ユニバーサルベッドの認知度

障がいの有無に関わらずにモニター936人を対象にした調査です。

「トイレに設置されている障害者等用設備の認知状況」では、「大人が利用できる大型ベッド」の認知度は 16.2%でした。オストメイトなど他の設備の認知度は、50%以上なので、ユニバーサルベッドの認知度が突出して低い現状が明らかになりました。現状の設置数が少ないこと、重度障がい児者などユニバーサルベッドを必要とする当事者の絶対数が少ないことなどが、認知度が極端に低い要因かもしれません。認知度が低いことが、事業者などバリアフリートイレの設置者側に、ユニバーサルベッドの重要性が認識されない原因となり、設置が進まない現状があると推定されます。

提言では「様々な利用者のニーズに配慮したトイレ整備」の中で「おむつ等の利用である場合には大型ベッドの設置が必要」としています。

検討会によるトイレの今後の在り方は、以下の4つの方向性でまとめられています。

・車椅子使用者用便房等の機能分散の推進

・多様な利用者特性への対応

・多様な利用者が必要とする設備・機能の有無・位置に関する情報提供の推進

・適正利用の推進に向けた広報啓発・教育等の充実

障がいのある人にとって、より安心して外出ができる社会に進むことが期待されます。

(本稿は2021年3月に執筆しました)

別稿で「外出先で多目的トイレを利用する障がい者・介助者の意見と要望」を掲載しています。ご参照ください。