電動車椅子でスポーツ・トレッキング・森林浴 人生を変えるドイツ製品

車椅子でバンカーショット。この信じられない写真は現実です。

オフロードを縦横無尽に走破し、その人の姿勢に応じて立位をサポートする電動車椅子「ParaMotion(パラモーション)」。事故で下半身不随になったドイツ人プロゴルファーが開発した、スポーツとアウトドアライフのための万能車椅子です。

電動車椅子「ParaMotion(パラモーション)」

乗り込んで上半身と下半身をそれぞれ固定します。最高時速は10㎞、走行距離は40㎞。10㎝までの段差を乗り越え、傾斜30%までの坂道を安全に登る、本格的なオフローダーです。

電動車椅子「ParaMotion(パラモーション)」

そしてカスタマイズ可能なプログラムに基づき、簡単な操作で安全に立位をサポートします。

欧米諸国ではゴルフの他に、「釣り」「アーチェリー」「射撃」などのスポーツ、趣味の野外写真撮影や植物採集、そして愛する人とのハグ。様々なシーンで利用者が増えています。

電動車椅子「ParaMotion(パラモーション)」

操作はコントローラーを動かすだけ。自分で操作ができない重度障がいの人でも、介助者が横を歩きながらコントローラーを操作することで、アウトドアに飛び出せます。

電動車椅子「ParaMotion(パラモーション)」
(写真提供 トヨタ白川郷自然學校)

日本では自然路の散策にも活用され始めました。普通の車椅子や一般的な電動車椅子では移動できない、デコボコがある未舗装路や砂利の路面を通り、草生い茂る森の中へ。「ParaMotion」の走破能力を利用して、安全にトレッキングや森林浴を楽しむイベントが開催されています。オフロードタイプのタイヤを装着すると、かなり荒れた路面でも安全に走破します。ただし防水機能はないので、水中は走破できません。

電動車椅子「ParaMotion(パラモーション)」
(写真提供 トヨタ白川郷自然學校)

上の写真は白川郷のイベントでの一枚。2021年の夏以後は、知床半島、八ヶ岳高原などで、バリアフリーなアウトドア体験イベントが開催される予定です。

昔のように自由に行動したい高齢の方、突然下半身の機能を失い人生が変わってしまった中途障がいの方、そして生まれた時からスポーツやアウトドア体験ができない重度の障がい児・障がい者の方。多くの車椅子利用者にとって、人生を変える新しい体験ができるかもしれません。

電動車椅子「ParaMotion(パラモーション)」

高機能・高性能な電動車椅子であるため、一般的な電動車椅子よりも販売価格は高額ですが、希望によりリースでの利用や中古品の購入も可能ということです。

今後のイベントの予定や、「ParaMotion」の短期借用方法など、製品に関する詳しい情報は、下記輸入元にご照会ください。

輸入元:(株)テックインターナショナル

〒102‐0073 東京都千代田区九段北1‐15-15 瑞鳥ビル3F

TEL 03‐6261-5670   FAX 03‐6262-5794

URL:http://tec-inter.co.jp

このような車椅子や各種のサポート機器が様々な施設に導入されて、障がいのある人と家族が、スポーツやアウトドア活動を安全に、そして「当たり前」に楽しめるインクルーシブ社会。福祉先進国は、技術の力で新しい社会の実現に一歩踏み出しています。

(本稿は2021年6月に執筆しました)

国交省のバリアフリートイレ調査研究結果をやさしく解説

2021年3月「共生社会におけるトイレの環境整備に関する調査研究検討会」の報告書が取りまとめられました。事務局は国土交通省総合政策局安心生活政策課で、2020年からアンケート、インタビュー、ヒアリングなどを行なった、トイレに関わる現状が報告され、今後の方向性が提言されています。その中から、注目すべき3つの調査結果を抜粋して紹介します。

〇バリアフリートイレの使用理由

障がいの有無に関わらずにモニター908人を対象にした調査です。バリアフリートイレを使用した人が約40%。その使用理由の第一位は「一般のトイレが空いていなかったから」で58.2%。第二位が「一般のトイレが近くになかったから」で20.5%でした。

別の集団を対象にした調査でも、ほぼ同様の回答が得られています。

障がいなどの理由でバリアフリートイレを使用したい人だけを対象にした調査では、70%強の人が「多機能トイレが使用中のために待たされた経験」があるとしています。

一般のトイレが近くにあり、かつ空いていれば、バリアフリートイレの混雑が緩和されることが証明されました。

この結果、今後の提言には「一般トイレの混雑解消のため、適正な一般便房数の確保が望ましい」とされました。

〇駅のバリアフリートイレの利用者

乗降者数が違う5駅で、バリアフリートイレの利用者を目視チェックした結果です。

12時間調査の結果、利用者数は少ない駅で17人(組)、多い駅で105人(組)でした。その中で「肢体不自由者、視覚障害者、子ども連れ等の視覚的に属性がわかる者は各駅とも数名程度の利用」しかなく、「キャリーケースを持った者や高校生と思われる2名程度での着替え利用が見られた」と報告されています。

見た目ではわからない障がい者もいるので、断定はできませんが、駅のバリアフリートイレは、多目的に利用されています。

提言では「一般トイレの利用で支障ない人も含めて誰でも使用できるような「多機能トイレ」「多目的トイレ」等の名称ではなく、設置された設備や機能が必要な人が対象であることが伝わる情報提供、表記等とすることが必要」とし、「車椅子対応トイレ」「オストメイト対応トイレ」などの名称が例示されています。

〇ユニバーサルベッドの認知度

障がいの有無に関わらずにモニター936人を対象にした調査です。

「トイレに設置されている障害者等用設備の認知状況」では、「大人が利用できる大型ベッド」の認知度は 16.2%でした。オストメイトなど他の設備の認知度は、50%以上なので、ユニバーサルベッドの認知度が突出して低い現状が明らかになりました。現状の設置数が少ないこと、重度障がい児者などユニバーサルベッドを必要とする当事者の絶対数が少ないことなどが、認知度が極端に低い要因かもしれません。認知度が低いことが、事業者などバリアフリートイレの設置者側に、ユニバーサルベッドの重要性が認識されない原因となり、設置が進まない現状があると推定されます。

提言では「様々な利用者のニーズに配慮したトイレ整備」の中で「おむつ等の利用である場合には大型ベッドの設置が必要」としています。

検討会によるトイレの今後の在り方は、以下の4つの方向性でまとめられています。

・車椅子使用者用便房等の機能分散の推進

・多様な利用者特性への対応

・多様な利用者が必要とする設備・機能の有無・位置に関する情報提供の推進

・適正利用の推進に向けた広報啓発・教育等の充実

障がいのある人にとって、より安心して外出ができる社会に進むことが期待されます。

(本稿は2021年3月に執筆しました)

別稿で「外出先で多目的トイレを利用する障がい者・介助者の意見と要望」を掲載しています。ご参照ください。

第7回 障害者自立支援機器交流会 注目の出展機器情報

2020年11月16日に厚生労働省より「障害者自立支援機器 シーズ・ニーズマッチング交流会 2020」の開催が案内されました。2020年12月1日から4日が「Web開催」、2021年2月9日と10日は「東京開催」です。公表された「出展機器情報」から、生きるちから舎が注目した製品の概要を紹介します。

○欧州安全規格を取得した安全性の高い障がい児向けチャイルドシート(株式会社ミクニライフ&オート)

首や座位の保持が弱い、重度の身体障がい児のためのチャイルドシートです。通常のチャイルドシートよりも数多くのサポートベルトがあり、頭部や下肢はパットで保護されます。

○サポートシートαとサイドサポートのセット(株式会社帝健)

標準型車椅子に取り付けられる、シートやヘッドサポートです。簡単安価に理想に近いシーティングを実現する可能性を秘めた製品です。

○ネオシエスタⅡ(株式会社ダイレオ)

電動で、車椅子、ベッドに形、機能を変えます。ベッド形状で上下昇降も可能です。介助者の負担軽減が期待できます。

○車いす用起立補助装置 フリッツ(シャープジャパン株式会社)

車椅子の座面に取り付け、座面が前方向に上がることで、お尻を浮かす補助をします。取り付けや取り外しは簡単で、体重に合わせた設定が可能です。比較的軽い障がいの人、つかまり立ちが出来るレベルの人に役立つ可能性がある製品です。

○下肢装具ユーザーも履ける スタイリッシュなパンプス(株式会社LUYL)

足首から伸びる下肢装具を装着した上から履けるパンプスです。福祉機器とお洒落の融合がテーマです。

○片手操作可能な車いすの駆動装置(合同会社ライフスペース研究所)

車椅子の2輪をシャフトで直結させて、片手で直進・後退・右左折を可能にします。自走でも、空いた片手で物を持つことが出来るのがメリットです。未来の車椅子の常識になるかもしれません。

○医療的ケア児用ストレッチャー型車いす(株式会社マクルウ)

6輪構造で、車体はマグネシウム合金。軽くて丈夫で取り回しが楽と案内されています。医療用ベッドのように、上半身を持ち上げられる構造のストレッチャーで、かつ車椅子のように移動がしやすい、ストレッチャーと車椅子の、良いとこどりをした製品です。

なお出展情報はあくまで予定です。変更になる可能性があることをご承知おきください。

《生きるちから舎ニュース 2020年11月18日付》

別稿で「電動車椅子でスポーツ・トレッキング・森林浴 人生を変えるドイツ製品」を掲載しています。ご参照ください。