介護ロボットの開発・実証・普及を目指すプラットフォーム構築事業

介護ロボットの開発・普及が国策として取り組まれています。2020年8月3日から「令和2年度介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム構築事業」が始まりました。事業の概要と重点分野をやさしく解説します。

 

○利用者と開発者をつなぐPDCAサイクル事業

介護事業者など介護ロボットの利用者側と、開発企業からの相談窓口を、全国11カ所に開設します。あらゆる相談に対応し、総合的な活用支援を行う、ワンストップ相談窓口を目指しています。

相談窓口とは別に、介護の現場で利用された介護ロボットの実証支援、評価・効果検証を行う「リビングラボ」を全国6カ所に開設します。「リビングラボ」は、十分な活動実績がある研究所など既存の専門機関が参加します。

相談窓口と「リビングラボ」、そして介護現場がつながり、製品の企画開発、効果的な運用、導入効果の検証、製品の改良と新製品の開発を進める事業です。

なお相談窓口と「リビングラボ」の設置数は事業開始時点のもので、今後増設される可能性があります。

 

○相談窓口の機能

利用者側に対して以下の支援を行います。

・介護ロボットの製品情報の提供と体験展示

・介護ロボットの試用貸し出し

・介護ロボットの活用方法や導入事例の紹介

・利用できる補助金や基金の紹介

・各種研修会の実施

開発企業へは以下の支援を行います。

・開発に関する補助金の紹介

・出展可能なイベントの紹介などPRに関する相談への対応

・製品評価や効果検証に関する要望があった場合は「リビングラボ」への取り次ぎ

そして利用者と開発者をつなぐ事業として、協議会を運営して介護現場のニーズを反映した介護ロボット開発の提案内容を取りまとめます。

・ニーズ・シーズ連携協調協議会の設置・運営

 

○介護ロボットの重点分野

厚生労働省は2017年に、6分野13項目の介護ロボットを重点にすることを定めています。

・移乗支援

ベッドから車椅子、車椅子から食卓などへ移乗する際の介護者の負担を軽減。

・移動支援

外出や屋内移動、立ち座りを支援。

・排せつ支援

排泄を予測してトイレ誘導、下着の着脱などトイレ内の動作支援、ロボット技術を用いた排泄物の処理。

・見守りコミュニケーション

徘徊や転倒を感知する、センサーや通信機能による見守りロボットと、AIスピーカーなどによる生活支援ロボット。

・入浴支援

入浴行動の動作一連を支援するロボット。

・介護業務支援

排せつ時間、バイタルチェック、支援活動記録など、介護にかかわる情報を収集蓄積し、それを分析提案して介護に活用するシステム。

 

○介護ロボットの現状

介護施設および障害者施設、そして家庭での介護ロボットの普及状況は、正確なデータはありません。

2019年にある民間事業者がおこなったアンケート調査によると、介護施設の約3割が何らかの介護ロボットを導入しているという回答であったそうです。

現在販売されている製品で、介護施設である程度利用されていると思われるものは、

・見守りセンサー

・介護ベッド

などではないでしょうか。装着型の移乗支援パワーアシスト器具などを利用している施設は、少数だと思われます。

同アンケートで、介護ロボットを導入していない約7割の介護施設にその理由を尋ねたとろ

・価格が高い

・実用的ではない、役に立たない

・安全性に不安

以上の3点が未導入の上位理由だったそうです。

「令和2年度介護ロボットの開発・実証・普及のプラットフォーム構築事業」では、介護の現場で安全に役立つ、効果と価格が釣り合う介護ロボットの開発・普及への取り組みが行われます。

(本稿は2020年8月に執筆しました)

外出先で多目的トイレを利用する障がい者・介助者の意見と要望

バリアフリー法の効果もあり、おそらく日本は、世界一便利で綺麗な多目的トイレ王国です。国土交通省では「建築設計標準」を定め、多目的トイレに関しても、必要なサイズ、あるべき設備など、設計の見本を具体的に示しています。

より良いトイレを増やすために、実際に利用する障がい者と介助者からの、意見や要望を紹介します。

 

○大型ベッドの導入が少ない

国土交通省の「建築設計標準」では、「介助を必要とする高齢者や、肢体不自由児・肢体不自由者等には、ベッド上での着脱衣やおむつ交換、排泄 (自己導尿等)等が必要となることがあるため、大型ベッドを設置することが求められている。」とし、長さ150cm以上、幅60cm以上、高さ50cm程度を推奨しています。

ユニバーサルベッド

「大人用ベッド」「ユニバーサルベッド」など、用語もまだ不統一です。

重度の身体障がいがある人を介助する家族からの、最も多い要望は大型ベッドの配置です。配置されている多目的トイレは、現状では少ないのが実情です。

ただしベッドがあることで、不適切な利用につながるリスクはあります。対策として、通常はロック状態にしておき、利用希望者はインターフォンで管理センターに連絡をして、リモートで開錠するトイレがあります。

 

○冬季の寒いトイレは心配

夏の暑いトイレも困りますが、身体障がいがある人の場合、寒いトイレは体調不調の原因になる可能性を恐れます。

寒冷地以外でも、屋外型トイレ内の多目的トイレには、ウォームレットだけではなく暖房器具を設置し、冬季は常時可動していると安心です。

 

○異性介助で利用出来ない

古い施設を改修してバリアフリー化しているトイレなどで、男女別トイレ内にそれぞれ多目的トイレを設置しているケースがあります。家族で異性介護の場合、利用に困ることがあります。

男女別トイレ内の多目的トイレのほうが、気軽に利用しやすいという人もいます。最善なのは、独立個室と男女別内それぞれに多目的トイレ、または広いスペースの個室があることです。

 

○固定式の手摺りが邪魔

あまりスペースに余裕がない多目的トイレは珍しくありません。バリアフリー法施行以後、車椅子が入らない狭いトイレは新設されませんが、便器の横、あるいは洗面台の横に固定された手摺りがあることで、車椅子が回転できない、移動できないトイレはあります。多目的トイレの手摺は、跳ね上げ式が便利です。

 

○車椅子が洗面台の下に入らない

新しい施設のトイレでも、たまにあります。おそらく設計者は、車椅子利用者は便器から手が届く、横の小さな手洗いを利用することを想定しているのかと思われます。そういう利用者もいるでしょうが、多目的トイレの洗面台は、下部に空間があるタイプが便利です。

 

○間違って非常ボタンを押してしまう

多くのトイレに、非常ボタン、呼び出しボタンがあります。当然、押しやすい場所に、簡単に押せる構造で設置されるので、手を動かして間違って触れること、それだけで敏感に反応することがあります。

手摺のよく掴む場所の横など、誤接触が頻繁に起こりやすい場所からは、少しずらして設置すると、利用者は安心です。

 

○自動ドアは間違いで閉まる

出るときに内側からドアを閉めると、そのまま使用中の状態になります。そういうイタズラを目撃したこともあります。そのため多くのトイレは30分の連続使用で自動解除される設定になっています。

手をかざして開錠するタイプで、介助者が用を足している最中に、知的な障がいのある人が偶然ドアを開けてしまった事例があります。

ウィルス感染対策の面では、逆に手動式のドアは問題があります。

多目的トイレのドアは、手動か自動かは、難しい問題です。

 

○待ち時間がわからない

トイレが使用中で待つことは必ずあります。そのまま待つべきが、違うトイレに移動すべきか、この判断に迷います。

健常者の不適切な利用は論外ですが、オストメイトを利用する人などで、トイレ利用に10分以上の時間が必要な障がい者は少なくありません。

設備的に待ち時間対策があるトイレは、おそらくまだありません。

 

○運用上の問題、故障、節電

最後に、実際にあった、困った経験談を2つ紹介します。

その施設に1つしかない多目的トイレが故障で使用禁止になっていました。確認したところ、鍵が故障ということなので、無理を言い利用させていただきました。

利用者が少ない施設の多目的トイレのウォシュレットの電源が、節電のために意図的に切られていました。作動しないので気が付き、電源を入れてしばらく待って利用しました。

 

以上、多目的トイレを利用する障がい者・介助者から、よく聞かれる生の声を紹介しました。中でも、大型ベッドが少ないことは、重度障がいの人にとって、重大な問題です。

(本稿は2020年8月に執筆しました)

障がい児と家族の生活に役立つ福祉用具~キッズフェスタ2020から

毎年開催される「子どもの福祉用具展 キッズフェスタ」。2020年は4月に開催される予定でしたが、新型コロナウィルス感染拡大防止のため中止になりました。出展予定であった品目から、生きるちから舎が注目していた商品を紹介させていただきます。

なお掲載させていただいている写真は、すべてメーカーまたはキッズフェスタのHPなどから転載させていただいております。どうぞご了承くださいませ。

・振り子式チルト車椅子

米国ブランドの車椅子です。スムーズな動きでー5度から50度まで角度を変えられ、床ずれ防止に役立ちます。

商品名「フォーカスCR」株式会社ユーキ・トレーディング

振り子式チルト車椅子

・ティルト&リクライニング式バギー

通常バギーの状態、収納時の折り畳む状態、そしてフルフラット状態になり、おむつ替えや着替えに役立ちます。

商品名「エミオ」EREVO JAPAN株式会社

ティルト&リクライニング式バギー

・車載用姿勢保持具(ドライブシート)

チャイルドシートでは収まらない、大きくなった子供向けの座位保持カーシートです。乗せ降ろしが楽になるように工夫されています。小柄な大人も利用可能です。

商品名「viola」株式会社クリエイティブスタジオ

ドライブシート

・重度障がい児向け家庭用座位保持装置

膝立ち姿勢での腹ばいなど、座位がとれない子どもでも安全な姿勢を保つことが出来ます。

商品名「フレックス・ライダー」株式会社片山車椅子製作所

重度障がい児向け家庭用座位保持装置

・床衝撃音低減用マット

マンションに住む、飛び跳ねる子ども対策用品です。置くだけの簡単タイプ。

商品名「 yマット」大成建設株式会社

床衝撃音低減用マット

・シャワーチェア

ナイロンシート製でコンパクトに折りたたみできる入浴介助チェアです。持ち運び可能で外出先で使用できます。

商品名「アクボバスチェア」株式会社松本義肢製作所

シャワーチェア

・トイレチェア

トイレでの座位をサポートする排泄介助用具です。簡単に調整でき、シャワーチェアとしてもるよう出来ます。

商品名「HTS」アビリティーズ・ケアネット株式会社

トイレチェア

・介護避難用おんぶひも

障がいのある小さな子どもとの緊急避難を想定したおんぶひもです。

商品名「らくらくおんぶひも」ラッキー工業株式会社

介護避難用おんぶひも

・吸引機用バック

医療的ケア児の外出の時に便利な、吸引に必要な道具が収容できる専用バックです。背面からバッテリー交換が可能です。吸引機にあわせて複数種類用意されています。

商品名「吸引機用バック」SKIP&CLAP

吸引機用バック

・介護用コップ

鼻に当たる部分がカットしてあり、頭をそらせずに飲むことができます。

商品名「ぷにゅっとぴったんコップ」株式会社岡部洋食器製作所

介護用コップ

・訓練用三輪自転車

足が少し動かせる子どもなら利用できます。3輪車+ペダル、座位保持装置付き。運動になり、友達と遊べます。

商品名「トライサイクル」アビリティーズ・ケアネット株式会社

訓練用三輪自転車

・高機能マット

ファンを使ってクッション材の中を空気が流れ温湿度の上昇を抑えるマットです。

商品名「快眠マットSOYO」株式会社アテックス

高機能マット

この他にも、役に立ちそうな福祉用具が多数出展される予定でした。以上、中止になった2020年キッズフェスタからの参考情報です。

(写真転載に問題がある場合はご連絡ください。すぐに修正いたします。)