農業、林業、水産業と障がい者福祉が連携。農林水産省と厚生労働省が中心になって進めている政策事業です。人手が足りない農業分野と、仕事が少ない障がい分野が連携して、双方にメリットをもたらすことが大目標です。
具体的にはどのような成果が期待されているのか。公表されている「ノウフク・アワード2020」審査基準から、農福連携事業で期待されている主な成果を抜粋して紹介します。なお審査基準の原文は、分かりやすさを優先して順番や表現をかえています。ご承知おきください。
○障がい者の工賃向上
A型B型就労継続支援事業所の賃金または工賃の向上が、農福連携事業の大きな目標です。
作業者の収入が上がるためには「障害者等の適性や能力が発揮できるよう、作業を選定したり、作業に工夫を行」う必要があり、収入が上がることによって「障害者等の働く場所や生きがいを創出し、社会参画につな」がります。
農福連携は、障がい者の自助による所得の向上を目指しています。
○第一次産業の労働力不足対策
農業従事者の高齢化、後継者不在などによる休耕地の増加、生産力競争力の低下、職業自給率の低下などの問題が顕在化しています。漁業林業でも同様です。
「地域の農業労働力となって、農業経営の維持や規模拡大に貢献」する人材として、「障害者等を労働力として活用」し、結果として農業の「生産性が高まり、収益が向上」し、「高齢農家の農地の借り受けや耕作放棄地の活用などを通じて、農地の維持・耕作放棄地の発生防止に貢献」することが期待されています。
○障がい者と住民の共生
地域共生社会の実現が目標です。農業、林業、水産業などの従事者と地域の障がい者が一緒に働くことで、「認め合う雰囲気が生まれ」「能力を認め合い、能力を生かすための工夫」があり、「地域社会に良い変化が起」こり、「障害者等に対する理解が深まり、多様な人が暮らしていける社会へとつなが」るとしています。
また障がい者施設側が「地域の祭りや行事の共催・参加を通じて地域の活性化に貢献」することが期待され、さらには「直売所やレストランを開設するなどにより、地域内外からの交流を創出」することまでが、期待される成果の範囲になっています。
○国民的運動への発展
農林水産省と厚生労働省は、農福連携を「官民挙げて国民的な運動」に発展させることを目標にしています。そのためには、成功事例の創出と水平展開が必要です。
農福連携事業の成功事例として期待されている取組みが、目標としては抽象的に表現されています。「先進性、独創性、話題性がある取組」みで、「人の心を動かすノウフク・ストーリー」がある、「これから農福連携に取り組みたい事業所等の模範となる取組」みです。そのような取組みを成功事例として早期に創出し、「国民的運動」として拡大展開されることが期待されています。
農福連携は、障がい者の工賃を増やし、第一次産業の労働力不足を解消し、地域共生社会を実現する、国民的運動になることが期待されている政策です。
(本稿は2020年10月に執筆しました)
令和3年度の農福連携事業については、別稿「農林水産業で働く障がい者のための令和3年度農福連携施策」を参照してください。