脳性麻痺児に対して3,000万円が補償される産科医療補償制度。2022年1月の分娩から対象基準が改定されます。
※現行制度については、別稿「脳性麻痺児に総額3千万円 産科医療補償制度をやさしく解説」を参照してください。
現行の基準は「在胎週数32週以上」でかつ「出生体重が1,400g以上」が保証の対象となる一般審査要件です。
「在胎週数28週以上」で、「出生体重が1,400g未満」の児は、「所定の低酸素状況の要件を満たすこと」という条件を満たしていると、個別審査で補償の対象と判断されます。低酸素状況の要件の「所定」とは、医学的に詳細な要件が設定されています。
これが2022年からの改定で、対象基準は「在胎週数が28週以上であること」だけに変わります。
この改定は、2009年の制度発足以後に収集分析された具体的な事例やデータに基づいています。
公益財団法人日本医療機能評価機構の見解では「個別審査で補償対象外とされた児の約 99% で、分娩に関連する事象または帝王切開が認められ、医学的には分娩に関連して発症した脳性麻痺と考えられました」としています。
また「胎児心拍数モニター等で感知できる範囲に限界があること、および個別審査は一定の低酸素状況を基準としているので、低酸素状況以外の状態で分娩に関連して発症した脳性麻痺は補償対象外となることが主な理由と考えられました」としています。
2009年から2015年までは「個別審査では約50%が補償対象外となっている」実績で、「同じような病態でも補償対象と対象外に分かれることがあり不公平感が生じている」「医学的に不合理な点があり、周産期医療の現場の実態に即していない」という意見が出されました。
ただし「28 週以上の早産児については、最近は脳性麻痺の発生率の減少が見られるように、近年の周産期医療の進歩により、医学的には未熟性による脳性麻痺ではなくなっています。また、実際の医療現場においては、成熟児と同じような医療が行われています。」としています。
したがって対象基準は「在胎週数が28週以上であること」に一本化されることになりました。
対象基準以外の改定はありません。対象は身体障害者手帳2級以上の重度障がいがある児。補償金額は3,000万円。申請期限は満5歳の誕生日までです。
《生きるちから舎ニュース2021年3月16日付》