群馬県前橋市内を流れる広瀬川沿いに、萩原朔太郎記念館、前橋文学館、そして文学をテーマにして整備された遊歩道などがあります。川沿いの散策、そして文学館の観覧など、車椅子で上質な時間を過ごすことができる、バリアフリーな文学エリアです。現地の状況を紹介します。
アクセス方法です。前橋駅から徒歩20分の案内です。前橋文学館のすぐ近くに、市営駐車場「広瀬川サンワパーキング」があります。車利用の場合は、この駐車場の利用が推奨されています。
市営駐車場は自走式立体駐車場で、身障者用駐車スペースは3Fに6台分用意されています。エレベーターは2系統で計3基。広瀬川寄りのエレベーターを利用して1Fから外にでると、萩原朔太郎記念館の正面に出ます。
前橋文学館の利用で駐車料金の減免サービスがあります。今回取材時の設定では、文学館の無料展示を観覧した人は2時間、有料展示を観覧した人は4時間の駐車料金減免サービスでした。
パーキング内にバリアフリートイレが用意されています。
広瀬川サンワパーキングを起点に、そこから近い順に散策ポイントを紹介します。
萩原朔太郎記念館は、朔太郎の生家の一部を移築保存して公開している無料施設です。この地に整備されたのは2017年。したがって車椅子に配慮のあるバリアフリー仕様です。趣のある木の門周辺から、段差のない舗装路面が整備されています。
土蔵、離れ屋敷、書斎が保存公開されています。いずれも外観の見学のみで、内覧はできません。
展示スペース内はすべて舗装通路が整備され、車椅子で問題なく見学できます。
朔太郎の生家は裕福な医者の家庭でした。現地にある案内板には、往時の大病院であった生家の地図が記載されています。
萩原朔太郎記念館の横を流れる広瀬川。そこに架かる橋は「朔太郎橋」です。
散策路として整備されているのは、朔太郎橋を渡った前橋文学館側です。川沿いに多くの歌碑、詩碑、筆塚、あるいは水車模型、そして様々なアートやオブジェが展示されています。
遊歩道の路面はほぼフラットで、車椅子で散策できます。今回取材時、広瀬川は水量があり、大正堰ではごうごうとした川の流れを楽しめました。市内を流れる川ですが、水質は綺麗で水量は豊かです。良い季節の好天の日に車椅子で散策をしたい素敵な散歩道です。
朔太郎橋の正面に建つ「萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館」の状況です。文学館は1993年に開館。したがって車椅子で利用できますが、いまどきのバリアフリー設計ではありません。
文学館は4フロア構造で、1Fから3Fに展示室があり、4Fは資料室他。この内2Fが企画展の会場で、開催中は有料エリアになります。1F、3Fの展示は、原則無料公開されています。有料企画展の観覧料は障がい者減免制度があり、本人と介助者1名が無料に減免されます。1Fの受付で障害者手帳を提示して減免措置を受けます。
1Fにはカフェ&レストランと、映像展示室、ムットーニ劇場があります。
映像展示室は、現時点では5本のプログラムがあり、視聴を希望すると放映していただけます。短いプログラムで5分、長いプログラムで20分弱でした。フラットな視聴覚ルームでビジョンを見ます。車椅子で問題なく視聴できます。
ムットーニ劇場は、武藤政彦氏が制作した2種のボックスシアターがあり、希望すると鑑賞できます。狭い空間で楽しむプログラムで、車椅子1台と他2名は劇場内に入りました。車椅子2台は難しいかもしれません。一回の視聴は、3名程度までの1グループに限られます。
ムットーニ劇場のボックスシアターの作品「殺人事件」が2018年の制作、「風船乗りの夢」は2020年の制作。武藤氏による最新の萩原朔太郎詩の解釈を楽しめる秀作です。スタッフが手動でボックスの起動スイッチを押して始まります。両作品とも鑑賞時間は6分前後。2本連続して鑑賞すると12分程度の時間になります。
文学館内は1基エレベーターがあり、車椅子で上下階移動ができます。エレベーターのカゴは一般的なサイズで、普通の車椅子なら問題なく利用できます。
2Fと3Fの展示室はフラットな構造で、「朔太郎展示室」他、車椅子での観覧に大きな問題はありません。
文学館の内部は、各所に朔太郎の世界が展開されます。
文学以外には、上州名物「焼きまんじゅう」の展示コーナーがありました。
文学館内のバリアフリートイレが1Fにあります。スペースは余裕がありますが、トイレ設備はシンプルです。ユニバーサルベッドはありません。
前橋市内の広瀬川沿いには、以上のような車椅子で楽しめる文学散歩道があります。川沿いにはカフェやレストランが点在。穴場的なバリアフリー観光スポットとして、お薦めします。
上野の國549社の総社である前橋市の「総社神社」を別稿で紹介しています。ご参照ください。
(本稿は2021年4月に執筆しました)