障がいのある子が未就学年代に通う施設

障がいのある子どもでも、小学校の学年齢になると義務教育で必ず学校に行くことになります。その前の幼稚園年代をどう過ごすかが、障がいのある子を抱えた家族の悩みです。お住まいのエリア、子どもの障がいの状況によって違いますが、一般的な選択肢と相談先などをご紹介します。

○一般の幼稚園に通う

軽度の障がいの子どもであれば、十分に考えられる選択肢です。バリアフリーが社会的に浸透しているので、先生や他の児童の親たちの理解も高く、協力してくれるケースが一般的です。幼稚園年代なら「いじめ」や「迷惑」など、あまり悲観的に考えることはないと思います。

○障がい児枠のある幼稚園や保育園に通う

近所にそういう施設あり、且つ通園が可能な障がいであれば、有効な選択肢です。健常な子どもと同じ環境で過ごすことができます。運動会などにも一緒に参加することになります。様々な交流制度があるとはいっても、小学校で特別支援学校に進むと、難しくなることです。また健常な子どもにとっても、障がいのある子との共同体験はきっとプラスになります。

○障がい児のための施設に通う

障がいが重度な子どもには、現実的な選択肢です。医療機関や福祉機関に併設されているところ、MPO法人などが独自に主催しているところ、行政が運営または委託しているところなどがあります。また毎日通えるところ、週に2日のところなど、運営や利用方法も様々です。現地現場を見て、スタッフの話を良く聞いてください。

○並行してボランティア団体などが主催する教室に参加する

毎月第三日曜日に公民館で開催、などの教室に並行して参加するのも有効です。音楽系、絵画系、工作系、体が動かせるなら運動系の教室もあります。夏休み期間は「親子キャンプ」などのイベントもあります。子どもの興味の方向性によって、利用してください。

仲間内の情報も重要ですが、行政と医療機関には相談することをお薦めします。役所には必ず担当課があります。また医療機関の通園許可書が必要になることがあります。行政と病院は、常時繋がりをもつ必要があります。

通う施設を見つけたとしても、親がかりのことが多いのが実情です。障がいのある子ども、特に重度の身体障がいがある子どもを長時間預けて、フルタイムで仕事をしたい、という要望に応えてくれる施設は、現状ではきわめて稀です。

(本稿は2019年11月に執筆しました)

別稿で「重度障がいのある家族との生活とフルタイム勤務の両立は難しい」を掲載しています。ご参照ください。

自閉・多動・ADHD、疲れを知らない子どもと家族の生活

自閉症やその周辺の病気は、分類され体系化されていますが、現実は一人ひとり違うというしかありません。したがって「多動」といわれるタイプの人も、その多動の実際は一人ひとり違います。

その場でクルクル回り続けるような人、外にでた瞬間に走り始める人から、じっとしていることが出来ないというレベルの人まで、動き方からして様々です。周りのことを忘れるくらい夢中になることがあるのは、良い面もありますが、やはり自閉傾向で多動な人の動きは近親者にとって大変です。

一般的には10歳くらいまでが、周囲の人が大変という意味での、多動のピーク年齢になるケースが多いようです。目的があって動くのは多動ではなく、目的なしで飛び出すのが多動だ、という言い方がされます。当人にとっては、目的があるのかもしれませんが、傍から見ると意味が解らない動きをします。

一日中飽きもせずに、同じ行為を続けている子どもがいます。例えばDVDの同じ場面をずっと繰り返して見る。10秒見たら戻してまた見るようなことをしています。水が好きな人もいます。ほっておくとずっと水を撒いて遊んでいます。

疲れ知らずの子どものなかで、やはり周囲が一番疲れるのは、走り回るタイプです。一秒目を離すといなくなっている、といわれますが、まさにそんな感じです。よちよち歩きの幼児でも、一瞬でいなくなります。躊躇なく車道に飛び出す人もいます。

幼稚園年代になると、もはや親は体力負けしてきます。ずっと動き回る子どもの後を、真面目に追いかけていると体が持ちません。この大変さは、経験の無い人にはうまく伝わらないかもしれません。人間の限界を超えた力をもっている、異次元の生物を追いかけているような気分になります。肉体も精神も、疲労の限界がきます。

疲れを知らない子どもは、動き回るばかりではなく、一般に知的な面、コミュニケーションの面で様々な課題があります。ポピュラーなのは自傷行為やクレーン現象。泣く、叫ぶ、騒ぐ。なぜか冷蔵庫の中のものを出す。電気をつける、消す。会話が成立する子どもなら、まだ心の持ちようがあるのですが、それが難しい場合、周囲のストレスはたいへんなものがあります。

とても悲しいことですが、本当にわが子に手をかける人がでます。実際にそうしなくても、考えてしまったことがある人は大勢います。疲れをしらない子どもを抱えた家族は、疲れて悩んでいます。そして理解のできない動きをする子どもを、見守っています。

(本稿は2019年11月に執筆しました)

別稿で「遊びで発達を促すリトミック 障がいのある未就学児への音楽療法」を掲載しています。ご参照ください。

ボランティアが支える 障がいのある子ども対象にした夏休みキャンプ

ボランティア活動に支えられた、障がいのある子を対象にしたキャンプがあります。一例として、ある社会福祉法人が主催する夏休みキャンプの事例をご紹介します。

○キャンプの申し込み

夏休みに山中湖畔のYMCAセンターを宿泊所にして開催されるキャンプで、小学3年生から高校3年生までが対象になります。

ある年の夏の場合は、2泊3日コースが定員20名、4泊5日コースが定員36名、5泊6日コースが定員55名、健常児と一緒に行く4泊5日のコースが定員40名でした。

夏休みのキャンプですが、参加の募集は春に行われ、子どもの障がいの状況を記した、書くのが大変なほどのボリュームの書類で応募します。

障がいのある子ども対象にした夏休みキャンプ

どのコースも大変人気があります。例年定員を大幅に上回る応募があり、キャンプの参加の当選確率は50%以下のようです。当落選考過程は情報公開されていません。

父母の間のもっぱらの噂では、前年参加した子は落ちる確率が高いようです。ただし、3年連続で当選した子もいますので、絶対的な条件ではないようです。

参加する子どもでグループを編成してキャンプ中は生活をします。そのためグループに組み込みにくい子、つまり同じような障がいのレベルの子が少ない子は落選する、という説があります。

男女別にグループを組みます。男女とも同じグループ数をつくるとなると、結果的に男女がほぼ同数当選します。例年、応募者は男子の方が多いので、男子の当選確率が低い、というのは本当のようです。

障がいの質によって当落がある、という説もあります。コミュニケーションが取れない子、自傷行為が激しい子はキャンプ生活が難しいということで、当選確率が低いという説です。ただそういうタイプの子が参加している事例もあるので、いちがいには言えない噂です。

障がいのある子ども対象にした夏休みキャンプ

参加費用は、安くはありません。家庭の事情により減免措置もありますが、通常は2泊3日で3万円台、4泊や5泊だと5万円から6万円程度かかります。

ただしすべてコミコミで、一人対一人以上の数のボランティアスタッフや、医師など専門家も帯同しますので、実費としては一人あたりの費用の3倍くらいはかかります。不足分は支援企業の協賛金などから賄われています。

キャンプ参加の希望が多いのは、学齢年代の障がいのある子の夏休みの過ごし方に、多くのご家庭が悩んでいることの現れです。親としても、子としても、長い夏休み期間を24時間ずっと一緒に過ごすのは、お互い大変です。無事に「当選」すると、次は「面接」になります。

障がいのある子ども対象にした夏休みキャンプ

○キャンプの事前面接

6月頃にキャンプに「当選」した子ども達が一堂に集められて、スタッフの面接や医師による検診を受けます。この時点で、子ども達のグループ編成は終わっています。

面接の当日、受付をすると、その子を担当する予定のスタッフが紹介され、以後一緒に行動します。キャンプコースによってメニューは変りますが、あるコースの事前面接の流れを紹介します。

同じグループの子どもが集合して顔を合わせ、リーダー格のボランティアさん、個人を担当する学生ボランティアさんなどが紹介されます。皆で歌ったり絵を書いたりと、遊びの時間があります。全体では遊びを続けながら、順番にリーダークラスのスタッフの面接を受けます。

学生スタッフは、このキャンプに参加するために、数度の研修を受けています。本番までには、更に重ねて研修を行います。

障がいのある子ども対象にした夏休みキャンプ

面接では、キャンプ生活上での注意点について、確認が行われます。常備薬、排泄の方法、食事の注意など、家族はなるべく細かく具体的に、その子の障がいに応じて、スタッフに知っておいていただきたいことを説明します。特にキャンプ初参加の子どもは、なるべくその子の障がいの実際が理解されるように、時間をかけて話し合いをします。

スタッフとの面接が終わると、最後に医師の健康診断です。主に内科の観点からのチェックがあり、「キャンプ参加可」という診断をいただきます。キャンプに一緒に随行する医師もいます。不安な点があれば、遠慮なく相談、申告をして、万が一に備えます。これで、事前面接が終了です。

キャンプ直前には、担当スタッフから電話が入ります。その時点での体調や注意点など、再確認が行われます。

障がいのある子ども対象にした夏休みキャンプ

○キャンプ生活

キャンプ当日は、持ち物すべてに名前を書き、体調を整えて指定場所に集合します。そしてチャーターバスで山中湖に向かいます。もう一台チャータートラックもあり、車椅子はトラックに乗せられます。

普通の観光バスなので、まったく歩けない子は、スタッフが担いで乗せて、担当のボランティアさんと並んで乗車します。いろいろな思いがよぎり、出発を泣いて見送る保護者がいます。

障がいのある子ども対象にした夏休みキャンプ

山中湖のYMCAのお部屋は、2段ベッドになっています。下段に子ども、上段にスタッフが寝ることが多いそうです。何かあると大変なので、スタッフは交代で「寝ずの番」をするそうです。

食事は皆で一緒に楽しくとります。常食が可能なメンバーのコースでは、お昼はバーベキューや流しそうめんなど、イベント性のある食事企画になります。

その他にも湖でのカヌー体験や、夜はキャンプファイヤーなど、一般の子どものキャンプと同様の楽しいメニューが用意されています。

障がいのある子ども対象にした夏休みキャンプ

お風呂も入れていただけます。慣れないボランティアスタッフにとって、障がいのある子をお風呂に入れるのは大変だと思いますが、事故に気を付けながら、世話をしていただけます。

キャンプ中に万が一何かあった場合は、保護者に連絡がいきます。しゃがってキャンプ中は、いつでも連絡がつくようにする義務が保護者にはあります。

キャンプ最後の日は、行きと同じくバスで帰ってきます。家族は集合場所にお迎えします。バスの窓から家族を見て、ニヤッとする子もいますし、知らん顔の子もいます。子どもの引き渡し時に、スタッフがキャンプ中の子どもの様子を教えてくれます。キャンプ中の出来事や毎日の様子などは、スタッフが日誌に書いています。家に帰って読むと、様子がよく解ります。

後日「振り返りの会」を開催するキャンプもあります。キャンプでとった写真や、製作した作品などがいただけます。最近はありませんが、以前は一緒にキャンプに行ったお子さんの名前や連絡先なども交換されていました。

障がいのある子ども対象にした夏休みキャンプ

自己表現がうまく出来ない障がいのある子の場合、キャンプが楽しかったのか、いやだったのか、家族もよくわかりません。

それでも安全にキャンプに参加して、家族以外の他者との関係を経験できたことは、きっとプラスになっています。

(本稿は2019年11月に執筆しました)

別稿で「知的な障がいのある人への学生ボランティア活動」を掲載しています。ご参照ください。