重度障がいのある家族との生活とフルタイム勤務の両立は難しい

重度障がいのある家族との生活とフルタイム勤務の両立は難しい

生まれた子どもに重い障がいがあると、両親の社会的な活動、特に仕事に大きな影響があります。

重度の身体障がいがある子は、ほとんどの場合体力が弱く病気がちです。いったん風邪を引くと1週間以上寝込む、お腹をこわすと点滴治療になる、熱が出ると肺炎をおこして入院になるなど、健康な子どもとは違います。

子どもがある程度以上の病状になってしまうと、学校はもちろん、ヘルパーさんや施設に看てもらうわけにもいきません。病院に入院しても、障がいのある子の場合は一般に付添の介助者が必要です。こどもが病気になると、人に預けることはできずに、家族がフルタイム看ることになります。

こういう状況が、例えば年に一回くらいであれば、家族の社会生活もなんとかなります。もっと頻繁な場合は、一般的な就労、つまり仕事をすることが難しくなります。

仕事以外の社会的な活動も、急に予定が狂うことで迷惑をかけることになる活動は難しくなります。

家族の誰かが、子どもの病気で予定が狂うリスクのために、社会的な活動を諦めることになります。現在の日本では、一般的に母親がその役を負うことが多いのが実態です。

健常な子どもでも、子育て中の家族の社会活動は苦労が絶えません。保育園に預けて出勤したら、熱が出たと連絡があり、迎えに行く、こういうことはどんな子どもでもあります。

重い身体障がいのある子の場合の違いは、病気になる頻度、回復までの時間、そして10歳になっても20歳になってもその状況が変わらないことが予見されることです。

高齢の親の介護のために、仕事など社会的な活動を止めざるを得ない人のことが話題になりますが、子どもの病気で予定が狂う世代は、もっと若い世代です。

早ければ20代から、正規のフルタイム勤務など、時間に拘束される社会的な活動は断念することになります。この子のために、と思う日もあれば、この子のせいで、と思う日もあります。

障がいのある家族との生活とフルタイム勤務の両立

仮に母親が収入を得る仕事を辞めた場合、経済面の責任は父親が全面的に負います。今の時代、父親一人で家族全員を十分に養う稼ぎができるとは限りません。

父親の稼ぎが良ければいいのですが、そうではない場合、お父さんは肩身が狭く、家族も生活が大変です。母親は家族の世話、父親は稼ぎを増やすために、夫婦で過労になります。母子家庭や父子家庭の場合は、もっと深刻な事態になります。

このような事情があるため、それまでのサラリーマン稼業を辞め、ご夫婦で仕事も介護も両方できて、多少の時間なら融通しやすい仕事に挑戦する家族があります。

子どもの病気で予定がたてられない、そのために今までの仕事が出来ない、それなら脱サラをして新しい仕事を始めよう、こういう家族です。

重度障がい児と共に生きる家族の多くは、20代30代の若さで、仕事など社会的な活動に大きな制約を受けています。

(本稿は2019年12月に執筆しました)

別稿で「重度の知的障がいがある子の入院に付き添う親の苦労」を掲載しています。ご参照ください。