日本の医療、教育の現場では、積極的に早期に障がいを見つけることが大方針になっています。したがって早い段階で、疑わしいというレベルでも、専門機関に紹介されることが多く、早期発見、早期からの治療に結びついています。
我が子の障害者手帳を申請する。親や家族によって考え方は違います。子どもが何歳の時に、どのような考えで申請を決断するのか、一般的なパターンを紹介します。
自分の子どもが障がい者と正式に決まってしまう、それは嫌だ、ということで医者に「どうします」といわれても申請を拒否する親がいます。実際、就学年齢になるまでは手帳がないことによるデメリットはそれほどありません。就学前の年代は、親の意思がそうなら、手帳の申請をしなくても特に、問題はありません。
主に経済的なメリットを期待して、障がいが将来にわたって決定的なものかどうか解らなくても、早ければ子どもが2歳になると、身体障害者手帳の申請をする人もいます。特に低所得世帯ほど、家族に障がい者がいることによる経済メリットがあります。
公営住宅への入居、水道など公共料金の減免、児童手当などの給付。お住まいのエリアや所得の状況によって変わりますが、経済的なメリットがある場合があります。偽装して子どもの障害者手帳をとるわけではないので、こういう親も問題があるわけではありません。
身体障害者手帳の申請のピークは、子どもが4歳から5歳くらいになり、ほぼ一生障がいを負う人生であることが確定的になったころ、医者から「そろそろ申請しますか」といわれて手帳を申請するケースが最も多いといわれています。障がいのある子どもが、6歳の就学時年齢になる前のタイミングです。
一定以上重度の障がいのある子どもは、特別支援学校への進学など、小学校から健常の子とは違う人生が始まります。
特別支援学校に入学するために、障害者手帳が必須なわけではありません。教育委員会の裁定によって入学するので、入学のために手帳は必要ありません。
親の気持ちとして、特別支援学校に入学するくらいの障がいが我が子にあるのだから、手帳の申請をするか、という決断に至るということです。
知的な障害者手帳は、義務教育が終わる前、高校進学前に、もう一回ピークがあります。この年代の申請は、比較的軽度な知的障がいのある子どもが中心です。
東京都の場合でいえば、高校から特別支援学校の「就業技術科」などに行くことを前提にした人です。ここでも入学に手帳が必須ではありませんが、特別支援学校に進学するのなら手帳の申請をしよう、という考え方です。
もう一つの事情として、障害者雇用の義務化により、手帳をもっていると就職が有利になる現状があります。近年は売り手市場で、手帳を持った新卒だと、大企業の特定子会社などに就職できる可能性が高くなります。
子どもの将来までを見据えた決断になります。手帳の申請は親や家族にとって、簡単な判断ではありありません。
子どもの障害者手帳を申請する。多くの親や家族にとって、ひとつの区切りをつける決断になります。
(本稿は2019年12月に執筆しました)