車椅子を利用して外出する人が増えています。しかし車椅子の安全装置はまだ普及していません。家族が使う車椅子にお薦めしたい安全装置を紹介します。
○効くブレーキ
車椅子の構造は、自走タイプか介助タイプかで大きく違います。自走タイプの場合、ブレーキは全面で操作する「駐車ブレーキ」のみになります。
介助タイプの場合、ブレーキは「駐車ブレーキ」に加えて介助者が手元で操作できる「介助ブレーキ」が付きます。
この「介助ブレーキ」は、駐車ブレーキと連動するレベルのあまり効かない簡易方式と、良く効くドラム式やバンド式の本格的なブレーキに分かれます。
一般的な車椅子の「駐車ブレーキ」は簡易方式で、ストッパーでタイヤを押し付ける構造です。驚くほど効かないブレーキが多いと思います。
病院内だけで使用する場合ならまだ良いのですが、介助者が車椅子を押して外出するなら、効かないブレーキは問題です。特に介助者の力が弱い場合は危険です。
介助タイプの車椅子を作る場合、付けられる構造であれば「介助ブレーキ」はドラム式やバンド式の効くブレーキの装着をお薦めします。ただし車椅子の構造によっては、付けられないタイプもあるので、購入前に確認してください。
○安全ベルト
車椅子を作る場合、安全ベルトはオプション設定になります。ベルトで縛ることは身体拘束に当たるという意見もありますが、安全面では有効な道具です。
実際に車椅子をつかって移動をすると、アップダウンや小さな段差やデコボコは、必ずあります。傾斜した路面で車椅子を停車しなければならない場面や、タイヤが段差にひっかかることは、注意していてもあります。福祉施設や病院の中の移動でも、完全なフラット路面だけで移動が成立するとは限りません。
乗車している人は、足腰の不自由な人なので、ちょっとした衝撃で落ちるリスクがあり、そうなると受身も取れない人が多いので、大けがに繋がります。
マジックテープ式の簡易ベルトがありますが、これは危険です。いざというときにバリっとはがれて、身を守ってくれません。2点式以上の本格的な「シートベルト」タイプの安全ベルトの装着をお薦めします。
○ヘッドレスト
車椅子のまま福祉車両に乗車する場合は、ヘッドレストの装着をお薦めします。急停車、衝突事故などの際に、車椅子利用者の首を守ります。
車両側に装着できるヘッドレストもありますが、自己防衛手段としては、車椅子に装着するヘッドレストの装着が安全です。
ほとんどの車椅子に装着できるヘッドレストがあります。ただし装着方法はワンタッチではなく、しっかりと安全を確保するために、やや面倒な作業が必要です。
デイサービスの利用などで、日常的に車椅子で車両に乗る機会が多い方は、ヘッドレストとシートベルトの両方を備えることをお薦めします。
車椅子の利用シーンに応じて、可能な限り安全装置を用意すると安心です。効くブレーキ・安全ベルト・ヘッドレストの装着をお薦めします。
(本稿は2019年12月に執筆しました)