脳性麻痺、臓器疾患、発達障害や染色体の病気など、生まれつきの障がいがある人と家族にとって、人生で複数回、進路の選択をするタイミングがあります。障がいの状況や生活環境によって個別の状況は異なりますが、障がいのある子どもの成長と家族の高齢化などにより進路選択をする年代はいつなのか、一般的なケースを紹介します。
0歳~3歳 専門病院の受診
病気にもよりますが、一般に出生後の定期健診において、障がいの可能性を指摘されます。身体障がいがある場合は比較的早期に、自閉症などでも3歳検診のころにはその可能性が指摘されます。
家族にとって、専門病院での受診を決断する年代です。障がいと病気の状況によって様々ではありますが、我が子に障がいがあることを、はっきりと認識して、障がいと共に生きることを始める年代です。
3歳~5歳 就学前の通所施設
義務教育が始まる前の年代に、障がいのある子とどのような環境で生活するかを判断する年代です。すっと家庭内で家族と過ごす生活。障がいのある子が通所できる施設に通う生活。ボランティア団体が主催する教室に通う生活。病気の状況、地域の環境などによって、その時点での最善策を選択する年代です。
就学前年代の生活の選択は、とても難しい判断です。多くの家族はこの年代で悩みます。
6歳 小学校への入学
どんな障がいのある子も、小学校に入学します。入学する学校を選択する大きな決断をする年代です。家族と行政で相談して決めることが多い決断です。
様々な制度改革が行われていますが、大きく分けて普通校か特別支援学校かという選択は、現実には存在します。また特別支援学校の中でも、聾、盲、知的、肢体など、タイプを選べる地域もあります。
また病気によっては、通所級か訪問級かという選択があります。
小学校一年生で入学した学校から、障がいや病気の状況の変化によって、転校する児童生徒もいます。
現在の日本では、事実上高校までは全入できます。小中高の12年間は、学校が生活の中心になるのが一般的です。
18歳 就業・施設通所の選択
一般に重度の障がいのある人にとって、大学への進学はハードルが高く、高校卒業後は社会人になるケースが多いのが実情です。このことは社会的な問題で、近未来には別の選択肢が増える良い方向に変わることが期待されています。
しかし現状では、就業するか、障害者施設に通所または入所するかの選択になるケースがほとんどです。ここから先は65歳まで制度上の大きな変更はありません。本人と家族にとって大きな決断になります。もちろん18歳での進路を、その後変更することに制度上の問題はありません。
30歳~40歳 自立・独立・入所の選択
障がいのある人が30歳を過ぎるころには、家族の老化が問題になってきます。本人の障がいの状況、家族の健康の状況によりますが、一般的には親が70歳前後になると、家族による同居介助生活を変える判断をする人が多くなります。
グループホームへ入居して週末だけ帰宅する、障害者入所施設に入る。地域によっては、遠隔地にある施設への入所を勧められるケースも少なくありません。
これまでの家族の生活が一変する、大きな決断をする年代です。
40歳~ 後見人の決定
特に知的、あるいはコミュニケーションに重い障がいがある人の場合、親亡き後のことを家族が整理する年代になります。成年後見制度もありますが問題も多く、最善の策を決めることは難題です。それでも家族は、個別の事情によって、最良と思われる方法を検討します。本人も家族も、自らの天命がいつまでなのかは分かりません。大変難しい選択をする年代です。
一般的なパターンの一つではありますが、重度の障がいのある人と家族は、このような年代で、人生の進路を選択します。
(本稿は2020年5月に執筆しました)