自閉・多動・ADHD、疲れを知らない子どもと家族の生活

自閉・多動・ADHD、疲れを知らない子どもと家族の生活

自閉症やその周辺の病気は、分類され体系化されていますが、現実は一人ひとり違うというしかありません。したがって「多動」といわれるタイプの人も、その多動の実際は一人ひとり違います。

その場でクルクル回り続けるような人、外にでた瞬間に走り始める人から、じっとしていることが出来ないというレベルの人まで、動き方からして様々です。周りのことを忘れるくらい夢中になることがあるのは、良い面もありますが、やはり自閉傾向で多動な人の動きは近親者にとって大変です。

一般的には10歳くらいまでが、周囲の人が大変という意味での、多動のピーク年齢になるケースが多いようです。目的があって動くのは多動ではなく、目的なしで飛び出すのが多動だ、という言い方がされます。当人にとっては、目的があるのかもしれませんが、傍から見ると意味が解らない動きをします。

一日中飽きもせずに、同じ行為を続けている子どもがいます。例えばDVDの同じ場面をずっと繰り返して見る。10秒見たら戻してまた見るようなことをしています。水が好きな人もいます。ほっておくとずっと水を撒いて遊んでいます。

疲れ知らずの子どものなかで、やはり周囲が一番疲れるのは、走り回るタイプです。一秒目を離すといなくなっている、といわれますが、まさにそんな感じです。よちよち歩きの幼児でも、一瞬でいなくなります。躊躇なく車道に飛び出す人もいます。

幼稚園年代になると、もはや親は体力負けしてきます。ずっと動き回る子どもの後を、真面目に追いかけていると体が持ちません。この大変さは、経験の無い人にはうまく伝わらないかもしれません。人間の限界を超えた力をもっている、異次元の生物を追いかけているような気分になります。肉体も精神も、疲労の限界がきます。

疲れを知らない子どもは、動き回るばかりではなく、一般に知的な面、コミュニケーションの面で様々な課題があります。ポピュラーなのは自傷行為やクレーン現象。泣く、叫ぶ、騒ぐ。なぜか冷蔵庫の中のものを出す。電気をつける、消す。会話が成立する子どもなら、まだ心の持ちようがあるのですが、それが難しい場合、周囲のストレスはたいへんなものがあります。

とても悲しいことですが、本当にわが子に手をかける人がでます。実際にそうしなくても、考えてしまったことがある人は大勢います。疲れをしらない子どもを抱えた家族は、疲れて悩んでいます。そして理解のできない動きをする子どもを、見守っています。

(本稿は2019年11月に執筆しました)

別稿で「遊びで発達を促すリトミック 障がいのある未就学児への音楽療法」を掲載しています。ご参照ください。