重度重複障がい児・者と家族の生活に関わる福祉サービス基礎知識

重度重複障がい児・者と家族の生活に関わる福祉サービス基礎知識

重い障がいのある人が利用できる福祉サービス等はどのようなものがあるのか。重症心身障害児・者といわれる、身体障がいと知的障がいが重複している人が利用できる可能性がある、サービスや制度の概要を紹介します。

重度障がいがある子供が利用できる福祉サービスから紹介します。

・児童発達支援施設

障がいのある未就学児が通所できる施設です。障害者手帳の交付を受けていなくても、申請書と医師の意見書を提出して、利用の必要が認められれば市町村から受給者証が交付されます。

その子の障がいの状況により様々なプログラムと複数の施設があります。その状況は地域により異なります。

利用料金は原則1割負担ですが、多くの市町村で様々な減免措置があります。ただし一般に食費などの実費は利用者負担です。

・医療型障害児入所施設

自宅での養育が難しい重度障がいがある子供が入所する施設です。申請して利用が認められると受給者証と医療受給者証が交付されます。

利用料金は原則1割負担ですが、多くの市町村で様々な減免措置があります。

・特別支援学校

福祉サービスではなく、小中学校は義務教育ですが、同列に紹介します。

通学が難しい児童生徒は、先生が入院先や家庭に訪問するクラスを選択することができます。小学校、中学校まではもちろん、事実上高校までは、ほとんどの地域で希望すれば全入できます。

通学クラスの場合、多くの地域では通学バスが用意されます。また学校での生活は、トイレ、食事も含めて、学校側で行うのが一般的です。

ただし医療的ケアが必要な児童生徒の場合は、現状ではまだ多くの学校で専門スタッフが足りずに、スクールバス乗車が出来ずに保護者による通学が求められ、また在校中は保護者が医療的ケアをするために学校にいることが求められます。医療的ケア児の問題は、多くの学校で解決途上です。

授業料は、小中学校は無料、高校も多くの地域は無料です。給食費などの実費は自己負担が原則です。自治体によっては、校外活動などへの助成が行われています。

・放課後等デイサービス

小学校から高校までの児童生徒を対象にした、放課後や休校日に利用できる施設です。地域によりますが、重度重複障がい児を受け入れる施設もあります。

利用料金は原則1割負担です。医療的ケア児の受け入れ、バスによる送迎や食事の提供などのサービスの有無は、その施設によって異なります。

次に子供も大人も利用できる福祉サービスを紹介します。

・補装具の助成

車椅子や下肢装具など「日常生活上において必要な移動や動作等を確保するために、身体の欠損または損なわれた身体機能を補完・代替する用具」を購入または修理した際の費用が助成されます。多くの場合、所得に応じた自己負担額があります。

・居宅介護(ホームヘルプ)

居宅でヘルパーに、入浴や排せつなどの身体介護をうけることが出来るサービスです。

18歳以上の人は、障害支援区分の認定を受ける必要があります。利用料金は原則1割負担ですが、障がいの状況や所得の状況に応じて、様々な減免措置があります。

・短期入所(ショートステイ)

障がい者施設に短期間入所できるサービスです。施設の設備や入所時に提供されるサービスは、施設によってそれぞれです。利用料金は原則1割負担ですが、障がいの状況や所得の状況に応じて、様々な減免措置があります。

保護者が急病になった場合などに、重度障がい者が緊急に入所できるベッドは、多くの自治体で準備されています。

最後に大人の障がい者が利用できる福祉サービスを紹介します。

・生活介護施設

18歳以上の重度の障がいがある人が、日中に通所で利用できる施設です。多くの地域で複数の施設から利用先を選べる状況になっていますが、医療的ケアが必要な人を受け入れる施設は、現状では限られます。

利用料金は原則1割負担ですが、障がいの状況や所得の状況に応じて、様々な減免措置があります。

特別支援学校の高等部を卒業した重度重複障がい者の多くは、生活介護施設を利用します。そのため特別支援学校在学中に利用する施設に申し込み、卒後の進路を決めるのが一般的です。

・重度訪問介護

詳述は避けますが、一定の基準以上の重い障がいがある人が、ヘルパーを利用できる制度です。外出の支援、複数人のヘルパーを同時に利用することも認められます。

ただし就労や就学時には利用できません。参議院に重度障がいの国会議員が誕生して、話題になった制度です。利用料金は原則1割負担ですが、障がいの状況や所得に応じて減免措置があります。

・療養介護

病院に入院している人の、日中介護を行うサービスです。障害支援区分5以上の重度の人がサービスの対象になります。

食事、入浴、排せつ、着替えなどがサービスの中心です。利用料金は原則1割負担ですが、障がいの状況や所得に応じて減免措置があります。

・施設入所支援

施設に入所した人に夜間の日常的なケアを提供するサービスです。入浴、排せつ、食事、着替えの介助などが主な内容です。生活介護を受けている障害支援区分4以上の重度障がい者が対象です。

利用料金は原則1割負担ですが、障がいの状況や所得に応じて減免措置があります。

・重度障害者等包括支援

最重度の障がい者のための、包括的な福祉サービスです。居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、短期入所、共同生活援助、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援の10種類のサービスを、個別支援計画に基づいて同一の事業者から提供されます。

対象は障害支援区分6で、意思疎通が極めて難しい障がい者です。

主に重度重複した障がいのある人が利用できる福祉サービスは以上です。比較的軽度の障がい者が利用できるサービスは他にもあります。また他に、受給できる障害者手当や障害年金の制度があります。

(本稿は2020年6月に執筆しました)

別稿で「障がい福祉+介護保険 共生型サービスをやさしく解説」を掲載しています。ご参照ください。