名勝や史跡である「東京都立庭園」。主な庭園の車椅子からみた現地のバリアフリー状況を紹介します。
都立庭園は入園料の障がい者減免制度があり、本人と介助者1名の入園料が無料に減免されます。
「浜離宮恩賜庭園」
身障者だけが利用できる駐車場があります。庭園の入口「大手門橋」を車で進みます。庭園スタッフがいるので、身体障害者手帳を提示します。
庭園の入口近くが駐車スペースです。スタッフの誘導に従って駐車します。用紙が渡されるので住所氏名を書きます。それと引き換えに駐車許可書が渡されます。駐車時はフロントに許可書を掲示し、帰りに許可書を返すシステムです。
徳川将軍家の庭園です。駐車場から園内にかけて基本的には舗装路はありませんが、部分的に簡易舗装路が整備されています。庭園のパンフレットに「車椅子通行可ルート」が載っています。
威風堂々たる巨大な松の木「三百年の松」は入口の近くにあります。
庭園内をどこまで行けるかは、その人の障がいの状況によりますが、一応園内を一周する車椅子ルートは整備されています。
園内のトイレ棟にはバリアフリートイレが設置されています。
浜離宮恩賜庭園の詳しいバリアフリー情報は、別稿「都立庭園 浜離宮恩賜庭園 車椅子散策ガイド バリアフリー情報」を参照してください。
「旧芝離宮恩賜庭園」
身障者用も含めて駐車場はありません。
17世紀後半から開発されてきた庭園で、老中大久保忠朝が庭の創始者で、その後持ち主が幾人も変わりながら、徐々に大名庭園としての完成度を上げていきました。
19世紀後半に宮内庁の所有になり「芝離宮」と命名。関東大震災で建物と樹木のほとんどを焼失。その後東京市に下賜されて再整備が行われ、現在の名称「旧芝離宮恩賜庭園」となりました。
園内に舗装路はありません。庭園のパンフレットには「車椅子通行可能ルート」として一周可能な案内が載っていますが、あくまで決定的な段差がないというレベルで、快適なバリアフリールートではありません。未舗装路ですが頑張れば車椅子で、ほぼ庭園の全景を鑑賞することが出来ます。
園内の見どころの一つは「石組み」です。池の周囲を中心に、様々な石組みがあります。車椅子の場合、残念ながら外周通路からの鑑賞になりますが、それでもほぼすべてを見ることは出来ます。
「西湖の堤」は中国杭州の西湖の堤を模したもの。「中島の石組み」は、中国の仙人が住む霊山を模したもの。「根府川山の石組み」は小田原から運ばれた巨石を配したものです。庭園の池は、かつては海水を取り入れた「潮入の池」であったそうです。
名勝の一つが「藤棚」です。立派な藤棚が入口の近くにあります。車椅子からの鑑賞は可能です。
トイレは園内に一つありバリアフリートイレが併設されています。
「小石川後楽園」
駐車場はありません。一番近い駅は大江戸線の飯田橋駅です。春日駅寄りの出口から地上出口へのエレベーターを利用すると、後楽園の近くに出ます。
江戸時代に造られた水戸藩の庭園です。園内に舗装路はありません。
車椅子で回範囲は限定的です。部分的に砂利が深いところ、階段、車椅子では絶対に通行できない未舗装路などがあります。
都心ながら静寂を感じる庭園ですが、東京ドームに隣接しているため、歓声や音楽、ジョットコースターの絶叫が聞こえてくることもあります。
梅、桜から始まり、晩秋の紅葉まで、庭園の植物が美しく園内を彩ります。紅葉の季節の休日が最も混み、入園に長蛇の列が出来ることもあります。
小石川後楽園の詳しいバリアフリー情報は、別稿「都立庭園 小石川後楽園 車椅子散策ガイド バリアフリー情報」を参照してください。
「六義園」
駐車場はありません。駒込駅からはフラットな歩道を通り7分ほどの距離です。
入場口は通常は正門のみ。入場するとすぐに未舗装路になりますが、全体的に固い道に薄く砂利が敷いてある散策路で、それほど苦労せずに車椅子での通行は可能です。
園内はほぼ平坦な砂利道の連続ですが、デコボコのある橋や山になっている箇所があります。車椅子で園内の80%くらいが回遊できます。
「しだれ桜」は入口の近くなので、この桜だけをみるならストレッチャーの方でも可能です。
バリアフリートイレは入り口近くにあります。入口近くのお茶屋さんは、車椅子で利用可能です。
御側用人、柳沢吉保の文学的な素養が反映された庭園で、漢詩や和歌で詠まれた名勝を表現した造作が展開します。
六義園の詳しいバリアフリー情報は、別稿「特別名勝 都立庭園 六義園 車椅子散策ガイド バリアフリー情報」を参照してください。
「清澄庭園」
駐車場はありません。近くの清澄通りにはパーキングメーターが設置されています。
岩崎家三代が築いた名石の庭で、園内に舗装路はありません。未舗装路ながら車椅子で通行可能なルートは、お庭の約半分です。
入口から50mほど進むと、隅田川の水を引いた「大泉水」をバックにして日本庭園の美を堪能できるビュースポットにでます。
入場口からみて「大泉水」の反対側にある「涼亭」の先までが、砂利に苦労はしますが車椅子で移動可能なルートです。
「涼亭」方面までくれば、数多くの「名石」をみることができます。「伊豆の磯石」「紀州の青石」など、全国の石の産地から集まられた「名石」が園内に配置されています。「佐渡の赤玉石」など、それぞれの石に名札が付いているので予備知識がなくても楽しめます。
バリアフリートイレは、園の外の通用門脇のトイレと、園内の「涼亭」近くのトイレにあります。
大正12年の関東大震災では、被災者の避難場所となり多くの命を救った公園です。翌大正13年に岩崎家から東京市に寄付され、昭和7年に東京市の公園として開園。昭和20年の東京大空襲の時もここが逃げ場所になり、多くの人の命が救われたそうです。
清澄庭園の詳しいバリアフリー情報は、別稿「都指定名勝 清澄庭園 車椅子散策ガイド バリアフリー情報」を参照してください。
「旧古河庭園」
駐車場はありません。春と秋の「バラフェスティバル」が有名な庭園です。
庭園への入口を抜けると、すぐに砂利道になります。この付近は車椅子でどうにもならないほどの砂利ではありません。洋館にむかって砂利道を進みます。
洋館の手前にバラ園があります。通路幅は余裕があり、車椅子でバラのまわりを回遊できます。
洋館の南側の前庭が次のバラ園です。ここも車椅子で行くことができますが、通路幅が狭くなり、他に鑑賞者がいると車椅子で通ることは難しくなります。車椅子では洋館の南側玄関の前でUターンをする動線になります。
洋館の南側玄関先に階段があり、そこを降りるとメインのバラ園が広がりますが、階段路なので車椅子では行けません。また洋館の出入口は段差があります。
洋館の裏側を通る「馬車道」は、庭園のガイドブックでは「車椅子利用可(要介助者)」となっていますが、荒れた路面の未舗装路で車椅子での通行は苦労します。
「馬車道」を庭園半周分進めば、「日本庭園」を眺めることができるスポットにたどり着きます。「日本庭園」内は、車椅子での通行は難しい段差路です。
出入口近くのトイレにバリアフリートイレが併設されています。
「旧古河庭園」は、コンドル設計の洋館と洋風庭園、そして京都の庭師の仕事による日本庭園が共存しています。キャッチコピーは「和と洋が調和する大正の庭」。車椅子で苦労せずに移動可能な範囲は、庭園出入口から洋館前までです。
旧古河庭園の詳しいバリアフリー情報は、別稿「国指定名勝 都立旧古河庭園 車椅子散策ガイド バリアフリー情報」を参照してください。
「旧岩崎邸庭園」
身障者は受付横のスペースに車を停めることができます。庭園出入口正門を入ると身障者の駐車連絡専用インターホンがあります。ここで駐車場利用希望を申告してください。
正門から受付までは、車椅子で進むのが困難な、深い砂利路面の長い上り坂のアプローチです。車ならこのアプローチを避けることが出来ます。
身障者用駐車場といっても、受付横の適当なスペースに車を停めます。ここも深い砂利路面です。受付から洋館入口にかけて、タイヤに砂利が絡みつく深い砂利道を通ります。
「洋館」の1Fは車椅子利用可となっていますが、1Fへの入口は階段です。健常者はここで靴を脱いで館内に入ります。
車椅子利用者も簡易スロープなどを利用して5段の階段を上がり、館内備え付けの室内用車椅子に乗りかえて、「洋館」1Fを廻ります。したがって、なんらかの手段で5段ほどの階段を昇れる人。かつ折り畳み式の簡易型車椅子に乗れることが、洋館屋内1Fの「車椅子利用可ルート」を利用出来る人の条件です。
庭園の散策は車椅子で可能です。洋館前は砂利路面のロータリーで、車椅子では通行に苦戦しますが、ここを乗り越えると「撞球室」方面から庭園に入ることができます。
庭園に入れば未舗装路ですが、固い路面なので車椅子での移動は出来ます。庭園からは「撞球室」「洋館」「和館」すべての建物の外観が臨めます。
庭園内の植栽も「旧岩崎邸庭園」の魅力。季節のお花などが楽しめます。庭園には、テーブルや椅子が置いてあり、自由に休憩できます。
バリアフリートイレは、受付の横手にある仮設トイレに併設されています。
「旧岩崎邸庭園」に隣接して、文化庁の施設「国立近現代建築資料館」があります。土日は「旧岩崎邸庭園をご利用の方は、無料で国立近現代建築資料館を利用できます」という案内が掲示されますが、「国立近現代建築資料館」は、エントランスに段差があり、その先の館内展示スペースにも段差がある、車椅子では利用できない施設です。
都立庭園はいずれも歴史ある施設。基本的にはバリアフリーではありません。車椅子では無理のない範囲で利用して下さい。
(本稿は2019年3月に初稿を執筆しました)