解説 障害者総合支援法に基づく基本指針と2020年度末の数値目標

障害者総合支援法に基づく基本指針と2020年度末の数値目標

障害者総合支援法は、2016年に成立し、2018年4月から全面的に施行されました。2017年3月に国の「基本指針」が示され、2018年度から2020年度の3か年を対象に「第5期障害福祉計画」が立案され、「2020年度末の成果目標」が定められています。

障害者総合支援法が目指していることと、2020年度末の数値目標について、ポイントを解説します。

ポイント①「施設入所者の地域生活への移行」

障害者総合支援法の目的は「障害者自らが望む地域生活ができる」ことです。そのために総合的な福祉政策が組み合わされています。

「施設入所者の地域生活への移行」は、同法を象徴する目標です。

2016年度末実績を基準にして

・施設入所者の9%以上を地域生活に移行する

・施設入所者数を2%以上削減する

この2点が2020年度末の数値目標です。

ポイント②「精神障害にも対応した地域ケアシステムの構築」

「支援費制度」から2010年の「障害者自立支援法」の改正までは、精神障害者は明確には地域支援の対象ではありませんでした。多くの地域で、身体障害、知的障害に比べて、精神障害は地域でのケア体制が不十分な状況です。

「第5期福祉障害計画」では、原則としてすべての市町村と都道府県に「保健、医療、福祉関係者による協議会」を設置して、精神障害に対する地域包括ケアシステムの構築を進めています。

精神障害の2020年度末の数値目標は都道府県単位で以下の数値が設定されています。

・精神病床の1年以上長期入院者の減少(概ね全国で15万人以内程度、2014年度末に比べて概ね全国で3万人程度の減少)

・退院率の改善(入院後3か月退院が69%以上、6か月まで退院が84%以上、1年以内退院が90%以上)

長期入院患者の絶対数の減少と、入院患者の早期退院が目標値に設定されています。

ポイント③「全市町村に地域生活支援拠点を整備」

原則としてすべて市町村に少なくとも1つ、障害のある人の地域での生活を支援する拠点を整備することが政策であり、数値目標です。これにより障害者福祉の空白エリアをゼロにします。

ポイント④「福祉施設から一般就労への移行」

就労支援サービスの拡大充実により、2020年度末に以下の4つの数値目標が設定されています。なお、B型事業所は一般就労の対象になりません。

・支援事業を通じた一般就労移行者数を2016年度実績の1.5倍以上にする

・就労移行支援事業の利用者数を2016年度実績から20%以上増加させる

・就労移行率30%以上の事業所数を全体の5割以上に引き上げる

・就労者の1年後職場定着率を80%以上とする

ポイント⑤「障害児支援体制の全国整備」

障害児への支援体制の強化が最後のポイントです。

2018年度末までに、各都道府県および市町村に、医療的ケア児支援の協議の場を設置し、そして2020年度末は以下の3点が目標として設定されています。

・全国の市町村に1カ所以上の「児童発達支援センター」を設置する

・全国の市町村に保育所等訪問支援を利用できる体制を構築する

・重症心身障害児を支援する児童発達支援事業所及び放課後等デイサービス事業所を、各市町村に1カ所以上確保する

障害者総合支援法が全面施行されて3年目の2020年。年度末の主な数値目標は以上です。

(本稿は2020年5月に執筆しました)

別稿で「地域生活支援拠点整備の状況と課題をやさしく解説」を掲載しています。ご参照ください。