国の障害福祉計画 地域生活支援拠点整備の状況と課題をやさしく解説

国の障害福祉計画 地域生活支援拠点整備の状況と課題をやさしく解説

重度の障がい者、高齢の障がい者、親なき後の障がい者が、地域で生活をするための支援機能を、地域の実情に応じて、市町村の創意工夫により整備する。国の「第五期障害福祉計画」で定められている国家福祉政策です。

令和2年度末までに、全ての地域で最低限の整備を実現することが国の目標です。整備する支援機能とは何か。進捗状況はどうか。見えてきた課題とは何か。障がい者の地域移行をすすめる福祉政策を紹介します。

○支援困難な障がい児者を受け入れるための5つの機能

市町村が支援機能の整備を検討する対象者は、重度の障がい児者です。介護をしていた家族が倒れた時の対応から、支援を受けながら自立を目指す対応まで、専門性と緊急性を兼ね揃えた支援機能を整備します。ポイントとして5つの機能が示されています。

①相談機能・・・・ワンストップで一人の障がい者の相談を一元的に受け付ける機能

②緊急時の受け入れ・対応機能・・・・緊急一時用の空きベッドの常時準備など

③体験の機会・場の機能・・・・グループホームでの生活体験など、主に自立生活を体験できる場の整備

④専門的人材の確保・養成・・・・看護師や支援員など

⑤地域の体制づくり・・・・コーディネーターの配置や協議会、連絡会などの運営

○地域生活支援拠点のイメージ

「地域生活支援拠点等の整備」は、あくまで地域の実情に即した「拠点」を整備することを意味します。つまり既存の施設・設備・組織を、強化・再編して有効活用するイメージです。

厚生労働省が示している整備の方向性は2通りです。

①地域のメイン施設に集中して5つの機能を持たせる

②地域の各施設に分散して5つの機能を持たせる

現実的には、①と②を組み合わせて、整備を進めている市町村が多数です。例えば、地域に5箇所ある障がい者支援施設の内、2箇所に24時間相談窓口を設置する。3箇所に緊急一時ベッドを確保する。1箇所で体験入所が出来る、などのイメージです。

○全国の整備状況

令和2年度末までの全市町村整備にむけて、令和元年に進捗状況調査が行われました。その結果は以下です。

全国の自治体数 1741市町村

令和元年度期首までに整備済み    332市町村 (19.1%)

令和元年度上半期までに整備予定    15市町村 ( 0.9%)

令和元年度末までに整備予定      75市町村 ( 4.3%)

令和2年度に整備予定        1010市町村 (58.0%)

その他               309市町村 (17.7%)

2割近い市町村に整備の遅れがみられています。遅れている自治体は、人口の少ない市町村が多く、309市町村の中で、人口2万人以下の自治体が65.5%を占めます。全般として人口が多い都市部では整備が進み、地方部で遅れが目立つ状況です。

○拠点の整備を進める上での課題

この調査は「令和元年度障害者総合福祉推進事業」として、民間のシンクタンクに委託して実施されました。アンケート結果分析と、一部の市町村へのヒアリング分析により、シンクタンクがまとめた整備が遅れている自治体の課題を、簡単に紹介します。

《5つの機能の整備に関して》

・24時間365日の受付体制が用意できない

・相談支援専門員が確保できない

・コーディネーターが確保できない

・医師看護師が確保できない

・緊急対応や体験の場となる空き部屋や空床が確保できない

《地域の問題として》

・医療機関、障がい者支援施設、社会福祉法人などが少ない

・財源が足りない

○都道府県別 令和2年度末整備状況見通し

令和元年に行われた同調査の回答に基づいた、令和2年度までに整備予定の市町村の割合の概況です。

・全ての市町村が整備予定の都道府県

宮城県、富山県、愛知県、大阪府、和歌山県、鳥取県、山口県、香川県、佐賀県、長崎県、熊本県

・整備予定の市町村数が60%未満の都道府県

北海道、茨城県、島根県、沖縄県

※整備予定市町村が50%以下の都道府県はありません。

 

地域により進捗に差はありますが、令和2年度末までには、おおよそ8割の市町村で、5つの機能を有する「地域生活支援拠点等」が整備される見通しです。

(本稿は2020年8月に執筆しました)