2020年6月19日に施行される改正バリアフリー法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」を、障がい者側からの視点でポイントを解説します。
〇小規模店舗のバリアフリー整備の促進
物販店、飲食店の法的なバリアフリー化促進対象は、これまで2,000㎡以上の大型店が対象でした。それ未満の中型店、小型店にも、条例によるバリアフリー基準の適合義務化を付帯決議しています。
具体的には、店舗入口の段差解消、車椅子が通行できる扉幅の確保、車椅子で利用しやすい可動席の設置です。
〇UDバス・タクシー運転者への研修支援
車椅子乗車が可能なバスやユニバーサルデザインタクシーの導入が進んでいます。その一方で、車椅子乗車のためのスロープ設置に不慣れなドライバーが、車椅子での乗車を拒否するなどの問題が発生しています。
バス・タクシーなど公共交通事業者に、運転者の負担軽減措置と研修を行うことを付帯決議で求めています。
〇学校のバリアフリー化
公立の小中学校をバリアフリー適合義務の対象に加えました。これにより新設または大規模改修を行う際には、バリアフリー化が義務付けられます。
さらに大学、高校、既設の小中学校すべてに対して、災害時の避難場所になっていること、そしてインクルーシブ教育の推進の観点から、バリアフリー化を推進することを付帯決議しています。特に公共の小中学校については、既設校も数値目標を作成し、財政支援を充実させて、バリアフリー化を推進することを付帯決議しています。
〇バスのバリアフリー化
バス停などバス施設をバリアフリー適合義務の対象に加えました。
そして特に、鉄道のない地方空港の空港バス路線に、重点的にバリアフリー車両を導入することを付帯決議しています。
〇小規模駅・無人駅のバリアフリー対応
これまで鉄道の駅は、一日当たりの利用者数が3千人以上の駅をバリアフリー化の対象にしていました。今般の改正により、3千人未満の駅もバリアフリー化整備目標を定めることを付帯決議しています。
更に無人駅に対しても、各駅の実情に応じて、介助要員の配置や乗降支援体制の整備、駅ホーム設備の整備などを進めることを求めています。
また視覚障害者の駅ホームからの転落事故が多数発生していることから、ホームドアの設置などの対策を進めることを付帯決議しています。
〇障がい特性による交通機関での介助の拒否の扱い
法案は全般的には、公共の交通機関の利用にあたって、介助が必要な障がい者には十分な支援を行うことを求めています。
その一方で、駅員の誘導を待つために到着電車を一本見送るなど、画一的な対応に利用者側から疑問の声が上がっている現状があります。交通機関それぞれの現場の状況と、利用者の障害の特性に応じた介助の在り方を検討し、明確にすることを付帯決議しています。
〇歴史的建造物のバリアフリー化の検討
歴史的建造物をすべてバリアフリー化する法案ではありません。歴史的建造物を再現する場合に、障がいのある当事者が参画してバリアフリー化の検討を行うことを付帯決議しています。
〇トイレなど障がい者用施設の適正利用キャンペーンの展開
障がい者用のトイレや駐車区画、優先席などを健常者が利用するケースが多々あることから、適正利用の推進に関する広報活動および啓発活動を実施することを付帯決議しています。
〇住宅、宿泊施設のいっそうのバリアフリー化
障がい者が居住可能な共同住宅の増加と、観光地の宿泊施設における一般客室のユニバーサルデザイン化推進を付帯決議しています。
すでに施行されている「バリアフリー法」に基づき、2020年度末までのバリアフリー化数値目標が、2015年2月に閣議決定されています。
(本稿は2020年6月に加筆修正しました)