車椅子対応の路線バスが増えています。低床化してスロープで乗降可能なバス。バス停の高さと同じステップ高のバス。エアサスペンションで車椅子乗車の際に車高を下げるバス。そして車内のフラットエリアに、車椅子乗車用のスペースと、車椅子を固定する装置が用意されています。
実際に車椅子に乗る重度障がい者を介助して、車椅子対応の路線バスを利用すると、乗務員や他の利用者に対し、申し訳ない気持ちになります。介助者から見える現場の実際を紹介します。
○乗降に時間がかかる
空いている路線バスでも、乗降に時間がかかります。
バスの仕様によって乗降方法は異なりますが、スロープを用意する、乗車して運賃を支払う(または降車時に運賃を支払う)、席を畳んで車椅子スペースを設ける、スペースに車椅子を固定する、スロープを片付ける。そのすべては乗務員が行う、あるいは見守ります。
経験上、以上の工程で最短でも5分はかかります。
○座っている乗客に移動していただく
これもバスの仕様によりますが、車椅子スペースの席に座っている人に、どいていただくことになります。他に空席があるといいのですが。
○立っている乗客に移動していただく
少し混雑している状況では、車椅子スペース付近に立っている乗客に移動していただく必用があります。
○満員バスは乗車不能
更に混雑している満員のバスは、どんなにバリアフリー仕様の車両でも車椅子乗車は無理です。
○車椅子で乗車可能なケース
一般的な乗客の多い路線バスで、現実的に車椅子乗車が可能なのは、始発バス亭で先頭に並び乗車して、終点バス停で最後に降車するケースなどです。
車椅子マークが付いている路線バスが増えていますが、車椅子で現実的に利用できる路線バスは限定的です。多くの場合、車椅子利用者と介助者、他の乗客、乗務員、それぞれにストレスがあります。
(本稿は2020年1月に執筆しました)