障がい児の親の勉強「ペアレントトレーニング」をやさしく解説

「ペアレントトレーニング」をやさしく解説

「ペアトレ」は発達障害など、行動や理解あるいはコミュニケーションで障がいのある児の保護者のためのトレーニングプログラムです。現在多くの自治体、施設、医療機関などで有料無料のプログラムが行われています。その内容を簡潔に紹介します。

○親だけが参加するグループワーク

精研・まめの木・奈良式、肥前式、鳥取大学式、そしてそれらを変形させたものなど、プログラムは複数ありますが、一般的にすべてのプログラムに共通するのは、子どもは参加せずに保護者だけが参加するプログラムであること、そして数名のグループで活動することです。

○プログラムは連続講座

5回から10回程度の連続講座が行われます。内容はプログラムによりますが、講義、グループワークでのロールプレイなどが行われます。

連続講座の後、フォローアップ講座が開催されるプログラムもあります。

○プログラムの基本的な内容

障がいのある児との関係を肯定的、科学的に考えることが基本です。その上で、「好ましい行動を増やすための褒める技術」、「好ましくない行動を減らすための計画的な無視の技術」などを学習します。

それを機能させるために「子どもの良いところを探す方法」「行動を理解するためのABC分析方法」「良い行動をもたらす環境の調整方法」「子どもが達成しやすい指示方法」などを科学的に学びます。

親が子どもの行動に直接介入するための技術の習得がプログラムの目的です。

○その家族に適した方法への応用

実践方法は、子どもの障がいの状況、保護者との関係など家庭環境により個別です。グループワークなどを通じて、家族の個別最適な方法を探求するプログラムです。

例えば、十分な親子の愛情関係がないのに「計画的な無視」をすれば、ネグレクトになります。また言語の理解力がない子どもに「指示」をしても機能しません。

保護者自身に鬱病などの健康問題がある場合や、子どもの障がいが強度の自傷や破壊行動がある場合は、「ペアトレ」の効果が期待できないと判断されることもあります。万能なプログラムではありません。

○親が科学的な知識をもつことが目標

自閉症スペクトラムなどの発達障害は、親の子育てが悪い、子どもの性格だから治らない、という問題ではありません。そのような家族の誤った認知を修正するために1960年代から米国など研究されてきたプログラムです。

そして正しい知識をもって、同じ悩みをもつ保護者と協力して、子育てのストレスを低減し、家族の悩みを解消することを目指すプログラムです。

(本稿は2020年9月に執筆しました)

別稿で「各種の調査結果からみる 重度障がい児の父親が心がけるべきこと」を掲載しています。ご参照ください。