自傷、攻撃、こだわり 行動障がい児者支援の現状をやさしく解説

行動障がい児者支援

重度の知的障がいがある人の中に、強度行動障害と定義される人がいます。自傷行為、他者や物への攻撃、強いこだわり行動などがあり、家族や施設での支援が重要になります。行動障がい児者に対して、現状では主にどのような支援が行われているのかを簡潔に紹介します。

○国の支援は資格と報酬

主に福祉施設の責任者と支援員を対象に、各都道府県で「強度行動障害支援者養成研修」が行われています。レベル別に基礎研修と実践研修があり、それぞれ講義と演習で12時間のカリキュラムが組まれています。

そして研修を受講し、資格のあるスタッフが支援する施設は、報酬単価が上がります。

○研修の主な内容

行動障がい児者の行動を観察し、その真の原因を探る手法を学びます。表面に現れるごく一部の減少から、問題の全体を推定するので「氷山モデル」とよばれます。

行動の状況をチェックシートに示し、そこからアセスメントシートへ転換していく手法などが学習の中心です。

行動の真相を突き詰めた上での現状分析支援策の中心的な概念は「構造化」と呼ばれます。行動障害がある人が「今何をするのか」「次にどうなるのか」を予測できるようにします。

部屋の配置などを工夫する物理的構造化、スケジュールを視覚的に工夫する構造化、絵やリストなどを使ったワークシステムの構造化、いつも同じ手順を行うルーティンの構造化などの手法や実例を学びます。

これらの手法は「予防的な施策」です。問題のある行動の発生を予防するのが目的です。

○支援高度化のためのフォローアップ施策

現状では都道府県単位で、行動障がい児者支援のフォローアップ施策が行われています。

「一般社団法人全日本自閉症支援者協会」による「強度行動障害児者に携わる者に対する 体系的な支援スキルの向上及びスーパーバイズ等に関する研究」では、以下の事例が紹介されています。

千葉県では、民間施設での中核的人材16名に対して、断続的に年間30日以上の研修を実施し、支援レベルアップの核人材を育成しています。講義や実践、そしてメンバーや講師が現場で意見を交換してアセスメントからのPDCAを事例検討します。

横浜市では「発達障害者地域支援マネジャー」を4人専任常勤し、横浜市内の事業所を対象とした強度行動障害支援者養成研修の企画・実施ならびにコンサルテーション事業を一体的に運営しています。

福岡市では、支援が困難な強度行動障害者を、支援拠点において 24 時間体制で原則3 ヶ月の集中支援を行い、行動問題の軽減を図ると同時に障害特性に応じた今後の支援のあり方を検討し、集中支援後の新しい支援チームに引き継ぐ取り組みを行っています。

行動の分析、そして構造化による予防、支援内容の高度化。行動障がい児者への福祉支援は、以上のような取り組みが行われています。

関連する記事として「重度知的障がい者の行為や動作から推定される感覚過敏の実例」を別稿で掲載しています。ご参照ください。

(本稿は2020年9月に執筆しました)