車椅子利用者にとって、バリアフリーな観光地とは、どのような要件を満たしているべきなのか。2018年に国土交通省が作成した「観光地のバリアフリー評価マニュアル」から、車椅子のための主なバリアフリー評価ポイントを紹介します。
○車いす使用者の駐車場
・幅が3.5メートル以上で、かつ当該駐車場から出入口までの経路ができるだけ短くなる位置に設けられた身障者用駐車場がある。
・駐車場から施設入口までの案内図がある。(ただし、駐車場から施設入口が目視で確認できるなど、案内図が必要ないと求められる場合は不要)
○施設内の配置図
・施設内のトイレや非常口等の位置関係を示す配置図がある。
○段差回避スロープの設置
・施設の出入口や施設内の通路に階段または段差がない。
・段差または階段がある場合、幅は120cm以上、勾配は1/12以下で、高さ75cmごとに踏幅150cm以上の踊場があるスロープが設置されている。
○エレベーターの要件
階段がある場合は以下の基準を満たしたエレベーターが設置されている。
・かごおよび昇降路の出入口の幅が80cm以上
・かごの奥行きは135cm以上
・乗降ロビーは水平で150cm角以上
・かご内および乗降ロビーに車いす使用者が利用しやすい制御装置を設置
・乗降ロビーに到着するかごの昇降方向を表示する装置を設置
なお、不特定多数の者が利用する2,000㎡以上の建築物の場合は、さらに以下の基準を満たす。
・かごの幅は140cm以上
・かごは車いすが転回できる形状である
○多機能トイレ
・腰掛便座、手すり等が適切に配置され、車いすで利用しやすいよう十分な空間が確保された車いす使用者用便房及び水洗器具(オストメイト対応)を設けた多機能トイレがある。
○施設の案内や展示上の工夫
・車いす使用者からの視線の位置を考慮した施設の案内やサインが設置されており、展示等を楽しむことができるような工夫ができている。
○飲食スペース
・車いす使用者が移動や転回を円滑に行うことができるだけの十分な着席スペースが確保されており、かつ当該スペースが出入口等からの移動距離ができるだけ短い位置にある。
○宿泊施設の客室
客室の総数が50以上で、以下の基準を満たした車いす使用者客室を1以上設けている。
・便所(同じ階に共用の車いす使用者用便房があれば代替可能)
(1)便所内に車いす使用者用便房を設けている
(2)出入口の幅は80cm以上 (当該便房を設ける便所も同様)
(3)出入口の戸は車いす使用者が通過しやすく、前後に水平部分を設けている(当該便房を設ける便所も同様)
・浴室等(共用の車いす使用者用浴室等があれば代替可能)
(1)浴槽、シャワー、手すり等が適切に配置されている
(2)車いすで利用しやすいよう十分な空間が確保されている
(3)出入口の幅は80cm以上
(4)出入口の戸は車いす使用者が通過しやすく、前後に水平部分を設けている
○車いす使用者の受け入れ体制
・過去1年以内に車いす使用者を受け入れた実績がある。
・過去1年以内に車いす使用者対応のための「コミュニケーション技術」「車いす使用者への対応技術」「事故予防と緊急時対応」等の研修等が実施されている。
○案内カウンター
・車いす使用者の高さからの視線に合ったカウンターの高さとなっている。
・車いすが入れるだけの蹴込みが確保されている。
・カウンターの下部が車いす使用者のひざやフットサポート等が当たらないように配慮されている。
○車いすの貸し出しの有無
・貸し出し用の車いすが準備されている。
○バリアフリーマップなどの情報提供
・エリア内の観光施設等のバリアフリー化に関する情報が掲載されたバリアフリーマップが観光案内所に置かれている。
・インターネット、SNS等によるバリアフリー情報を発信している。
・バリアフリーマップが案内板やパンフレット、デジタルサイネージ等を活用して現地に設置されている。
・エリア内のバリアフリー情報を一元的に発信している組織・施設がある。
・施設やエリアのバリアフリーについて説明できる人がいる。
○車いすで移動可能な交通機関の状況
・公共交通機関の旅客施設から、移動等円滑化された経路(床面に高低差がある場合のエレベーター等設置を含む)が、一つ以上設けられている。
・交通機関を乗り継ぐ場合などで、車いすで移動可能な、交通機関間で連続した経路があり、その情報が案内されている。
・空港、幹線鉄道駅から地域へアクセスする際に車いすで移動可能な公共交通機関がある。
・車両等内に、車いすが円滑に移動するために十分な広さの車いすスペースが確保されている。
・公共交通機関の旅客施設に多機能トイレがある。
・最寄駅、最寄バス停から各観光施設等までや各観光施設等間の経路において、連続した案内サインを設置している。
以上の要件を満たした観光地が、車椅子にとってバリアフリーレベルが高いと評価されます。
(本稿は2020年12月に執筆しました)