障害者を雇用する企業の義務「障害者職業生活相談員」の配置

※本稿では、漢字表記で「障害」を使用しています。

企業の障害者雇用義務が法制化されています。現時点では、従業員50人以上の企業は、最低1人以上の障害者の雇用が義務付けられています。そして5人以上の障害者を雇用する企業には「障害者職業生活相談員」の配置が義務付けられています。

「障害者職業生活相談員」の配置についての根拠法があります。この制度は「障害者の雇用の促進等に関する法律第79条」の規定により、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施する認定講習を受講すると「障害者職業生活相談員」になれる、というものです。

「相談員」は、2日間の研修を受けることで資格を取得できます。研修受講は無料です。全国の県庁所在地などで開催されます。近年は人気で、申し込んでも定員オーバーで次回にまわされるケースもあるようです。研修は9時から17時。2日間で計12時間コースになります。

前半は講義が中心です。障害者雇用の理念の説明、雇用の実態の報告、関連法の内容説明、相談員制度の仕組みなどの大枠の講義を受講します。

後半は実務経験談が中心です。実際に障害者を雇用した立場からの経験談、障害者雇用を実現するために組織や施設を改革した実例、雇用された障害者側からの経験談などになります。

障害者の雇用が拡大するにつれて比例して成功談、苦労話、失敗事例が増えます。そういう生の声を当事者から聞くのが後半の講義です。

企業側の課題も報告されます。近年、障害者雇用義務を達成するために、特例子会社をつくってノルマの人数の障害者を雇用する大企業が増えました。

子会社を作って障害者を雇用したのはいいが仕事が無い、という笑い話のようなことが本当にあります。子会社を作るときは、売り上げになる仕事を考えて事前に作りましょう、という講義がありました。

労使ともに悩みが多いのは、やはり知的な障害がある人の場合です。使用者側からも、安全の確保や適職を見つける難しさなどの実例が報告されます。障害者からも、仕事を理解することや継続することの困難さが話されます。ほとんどの企業は、形から入って、後から中身を作っている状態です。

2日間の研修受講が終わると「修了証書」が渡されます。これが認定書になります。実務的に「障害者職業生活相談員」として活動するには、会社が職安に選任届を提出することになっています。

相談員の役割は、適職なのか等の障害者の職務内容に関する相談の他、職場環境、労働条件、人間関係、そして余暇活動までの相談に乗り、適切な指導をすることです。

障害者といっても、就業を希望する人なので、それほど重度障害の人はいません。軽度の障害者といっても、今まで障害と関わりなく生きてきた人にとっては、新しい出会い。仕事を通じて障害のある人との接点ができる人が増えています。

(本稿は2020年1月に加筆修正しました)

別稿で「障がい者と仕事 農福連携事業 表彰審査基準からみる成果目標」を掲載しています。ご参照ください。

障害者雇用の義務化 大企業の特例子会社の現状と課題

※本稿では「障害」という漢字表記を使用しています。

企業に障害者雇用を義務化する法律があります。現時点では雇用数は従業員の2.2%以上。したがって46人以上の会社から1名以上の雇用義務が課せられます。この2.2%という数値は、労働人口に対する就業希望の障害者数の比率で決定されます。

例えば社員数が1万人の大企業の場合、2.2%ですから220人以上の障害者雇用が義務になります。このノルマに対して「特例子会社」を作り対応している大企業が増えています。

特例子会社とは、一定の要件を満たしていれば、その子会社での障害者雇用数を企業グループの雇用数とみなすことが出きる制度です。したがって1万人の企業は、220人の障害者を雇用する特例子会社を一社持っていれば、ノルマを達成したことになります。

特例子会社の仕事で多いのは、親会社や同系列の企業グループを対象にした軽作業や一般事務代行などです。親会社のビルの掃除を請け負う、単純なデータ入力作業を請け負うなどの業務。このスキームであれば、企業として障害者雇用の社会的な責任を果たしながら、雇用した障害者の仕事が確保できます。

障害者雇用の義務化、大企業の特例子会社の現状と課題

ただし、別会社にしているのは人事システムを親会社とは変えるためなので、賃金テーブルや退職金制度などが冷遇される可能性があります。そういう差別が出来ないように、2016年から施行された改正法では「障害者に対する差別の禁止」が定められています。

この法律の目的は、採用における差別と不当に安い賃金の排除です。企業は、公正な採用と正当な報酬の支払いが義務付けられています。障害者の一般就労に関して、以上の法整備が進められています。

障害者雇用の義務化、大企業の特例子会社の現状と課題

特例子会社の現場では、とりあえず雇用して出来る仕事させる、という第一段階から、次のステップに課題が移行してきています。同じ単純作業ばかりを続けさせていいのか、昇給賞与をどうする、社内資格や役職をどう考える、などが現在の難問です。さらに長期的には、社員の高齢化などの課題がでることが予測されています。

障害者雇用の義務化を契機に、軽度の障害者の特例子会社での一般就労の定着は進んでいます。

(本稿は2020年1月に加筆しました)

別稿で「障害者を雇用する企業の義務 障害者職業生活相談員の配置」を掲載しています。ご参照ください。

歯磨きが出来ない重度障がい者の口腔ケア用品「スポンジブラシ」

寝たきり状態など重度の障がいがあり、口を開けた状態での歯磨きが難しい人。嚥下障害が酷く、一般的な歯磨きをすると咽る人。知的、コミュニケーション面で重度の障がいがあり、歯磨きをすると暴れてしまう人。家庭での家族による口腔ケア介護が難しい人がいます。

その人の障がいの状況によりますが、スポンジブラシによる口腔ケアは、通常の歯磨きが難しい人でも、家族の介護で効果が出やすい方法です。

スポンジブラシは、原理や使用方法は極めてシンプルです。棒状の柄の先にスポンジが付いていて、それでお口の中を掃除します。

ケアスポンジは、いろいろな形状、大きさ、固さのものがあります。一般的な基準としては、最初はやや小さめで柔らかいタイプのブラシから始めることが推奨されています。介護に慣れてきてから、適正に応じて、大きくて、固いタイプに変更します。

磨き方はあくまでソフトに、優しく行うことを心がけます。介護する人が協力的なら良いのですが、実際にはそうではないことが多く、頭を振る人、口を開けない人、途中で噛んでしまう人、いろいろだと思います。

歯磨きが出来ない重度障がい者の口腔ケア用品「スポンジブラシ」

一般的な使用方法です。スポンジを水で濡らして使用します。誤嚥防止の意味でも、濡らした後は必ず絞って使用します。

濡らし用のコップ、洗浄用のコップを2つ用意して水を入れ、スポンジ拭き取り用の清潔なペーパータオル等を用意します。

濡らして、絞って、お口を掃除して、洗う、このサイクルを繰り返します。出来れば衛生上の観点から、使い捨ての医療ケア用の手袋をすることが望まれます。

スポンジブラシは使い捨てです。綺麗に洗ったつもりでも、菌が残る可能性はあるので、使い捨てにします。

グジュグジュペッも、うがいも難しい状態の人は、お口の中全般が汚れています。歯だけではなく舌や歯茎など、ブラシが届く限り口腔を、すべて丁寧にスポンジで拭ってあげます。舌ブラシや口腔用ウェットティッシュなどを併用すると、なお効果的です。

ただし、噛みつかれる可能性がある場合は、指を口内に入れるのは危険です。注意してください。

お口の汚れは虫歯など口内の病気だけではなく、特に嚥下障害による誤嚥がある人は、口内の菌が肺に入り肺炎を起こすリスクがあります。

ケアスポンジはネット通販でも購入できます。通常の口腔ケアが難しい人に、積極的に利用して下さい。

(本稿は2020年1月に執筆しました)

別稿で「手の障がい、嚥下障がいの人に役立つユニバーサルスプーン」を掲載しています。ご参照ください。