電車、バス、航空機、客船、UDタクシー、そして駐車場まで、バリアフリー法とそのガイドラインでは、様々な数値的目標が挙げられています。その中から、一般的には知られていない、具体的な数値目標を抜粋して紹介します。
なお、通路幅やスロープ角度の数値は、別稿「バリアフリー法が推奨する通路幅やスロープ角度の具体的な数値」を参照してください。
《電車》
・客室には1列車ごとに2以上の車椅子スペースを設ける。ただし3両編成以下の車両で組成する列車にあっては 1 以上とすることができる。
・車椅子スペースの長さは、1,300mm 以上とする。ただし、車椅子使用者が同じ向きの状態で利用する車椅子スペースを2以上縦列して設ける場合にあっては、2台目以降の車椅子スペースの長さは、1,100mm 以上とすることができるものとする。
・車椅子スペースの幅は、750mm 以上とする
・車椅子スペースには、車椅子使用者が握りやすい位置(高さ 800~850mm 程度)に横手すりを設置する。上記手すりの径は 30mm 程度とする。
・(特急車両などに設ける)車椅子スペースの広さは、1,400mm 以上×800mm 以上とすることが望ましい。そして車椅子が転回できるよう、周囲を含めると1,500mm 以上×1,500mm 以上の広さを確保することが望ましい。
・車椅子で単独乗降しやすいプラットホームと車両乗降口の段差・隙間に関する実証試験では、段差 3cm・隙間 7cm の組み合せであれば、車椅子自走者約 9 割の被験者が乗降可能であった。段差・隙間の縮小に向けた当面の目安値は 段差3cm × 隙間7cm以内とする。
・客室にトイレを設置する場合は、そのうち 1 列車ごとに 1 以上は、車椅子使用者の円滑な利用に適したトイレを設ける。
《バス》
・乗降時における乗降口の踏み段(ステップ)高さは 270mm 以下とする。出来れば高さは 200mm 以下とすること が望ましい。
・車椅子使用者等を乗降させる際のスロープ板の角度は 7 度(約 12%勾配・約 1/8)以下とし、スロープ板の長さは 1,050mm 以下とする。出来れば、スロープ板の角度は 5 度(約 9%勾配・約 1/12)以下とすることが望ましい。
・スロープ板の耐荷重については、電動車椅子本体(80~100kg)、車椅子使用者本人、介助者の重量を勘案し、300kg 程度とする。
・乗降用リフトを設置する場合の耐荷重も、電動車椅子本体(80~100kg)、本人、介助者の重量を勘案し、300kg 程度とする
・乗り合いバスには 2 脚分以上の車椅子スペースを確保する。スペースは乗降口から 3,000mm 以内に設置する
・長時間の乗車となる場合の多い都市間バスにおいては、車内にトイレを設置する。ドアは軽い力で操作できる仕様とし、開き戸の場合は外開きとする。ドア開閉ノブ等の高さは 800~850mm 程度とする。出来れば車椅子使用者が利用可能なトイレを設けることが望ましい。
・車椅子対応トイレを設置しない車両の運行に際しては、高速道路サービスエリア等の公衆トイレを利用できるような運行計画を立てることが望ましい。
《航空機》
・客席数が30以上の航空機には、通路に面する客席(構造上の理由によりひじ掛けを可動式とできないものを除く。)の半数以上について、通路側に可動式のひじ掛けを設けなければならない。
・客席数が60以上の航空機には、当該航空機内において利用できる車椅子を備えなければならず、備え付けられる車椅子を使用する者が円滑に通行することができる構造でなければならない。
・通路が2以上の航空機には、車椅子使用者の円滑な利用に適した構造を有する便所を1以上設けなければならない。
《客船》
・バリアフリー客席(基準適合客席)を、旅客定員 25 人に対して 1 個以上の割合で設置する。
・車椅子スペースを、旅客定員 100 人に対し 1 個以上の割合で設置する。
・バリアフリー食堂の車椅子使用者用テーブルを、バリアフリー食堂のいすの収容数 100 人に対して 1 個以上の割合で設置する。
《UDタクシー》
・乗降口のうち 1 カ所は、スロープ板その他の車椅子使用者の乗降を円滑にする設備を備える。
・車椅子のまま乗車できる乗降口を1 以上設け、その有効幅は 700mm 以上、高さは 1,300mm 以上とする。
・車椅子のまま乗車できる車両の室内高は、1,350mm 以上とする。
・停車時の乗降口地上高は、350mm 以下とする。
《都市公園の駐車場》
・車いす使用者用駐車施設の設置数は、当該駐車場の全駐車台数が 200 以下の場合は、駐車台数に 1/50 を乗じて得た数以上とし、全駐車台数が 200 を越える場合は、当該駐車台数に 1/100 を乗じて得た数に2を加えた数以上の車いす使用者用駐車施設を設置する。
・車いす使用者用駐車施設の幅は 350cm 以上とする。
※(公財)東京都道路整備保全公社の「駐車場ユニバーサルデザインガイドライン」では、「障害者用駐車スペース」は幅 3.5m以上、奥行き 6m以上。「福祉車両対応の障害者用駐車スペース」は幅 3.5m以上、奥行き 8m 以上というガイドラインを示しています。
バリアフリー法およびガイドラインでは、以上の数値目標が掲げられています。
(本稿は2020年8月に執筆しました)