重度身体障がい者が運動をする、あるいは運動能力を高めるための訓練をすることは、一般に難しいことです。
身体障がい者の運動で人気なのはプール運動です。多くの人がプールを利用しています。もう一つ大きな可能性があるのがトランポリンです。ほとんどの特別支援学校には配備されています。病院のPTルームにもよくあります。ただし、利用方法が難しい面があります。
指導できる先生がいないために、ほとんどトランポリンが使われていない学校は多いと思います。下手をすると怪我や障がいを悪化させる事態が想定できる道具です。慎重に使用する必要があります。
身体障がいがある人の「トランポリン」を使った運動方法は、まだ十分に利用方法が確立されていません。研究して成果を発表している先生もいるので、これから徐々に安全で効果的な利用方法が広まっていく可能性はあります。
身体障害の人だけではなく、知的あるいは精神障がいの人にも効用があるという説もあります。音楽と組み合わせてリトミックのような利用方法を実践しているところもあります。
上手に身体障がいのある人、特に小児に利用している先生を知っています。利用の様子を紹介します。
先ずは体をほぐす、ストレッチ的な運動です。自分もトランポリンの上に登って、抱きかかえるようにしながら、胡坐の姿勢にします。ゆっくりトランポリンを上下に動かして、徐々に股関節を緩めていきます。トランポリンの動きがジワッと効く感じで、体が緩んでいきます。腰回りを中心にした体幹部のストレッチです。上向きに転がしながら背中を丸めたり伸ばしたりします。トランポリンの動きに合わせて、少しずつ強めに伸ばしていきます。出来る小児ならうつ伏せ状態にもして、ゆっくりと上下運動をします。
次に全身運動です。膝立ち状態にして、正面から支えながら一緒にトランポリンを動かします。これで結構な運動になります。出来る小児ならつかまり立ち状態までもっていき、トランポリンです。こうなるとなかなかの運動量になります。小児と一緒に体を動かすので先生も体力を使います。むしろ小児よりも先生が運動量はあがります。
赤ちゃんは「高いたかい」などをして体を動かしてあげると喜びますが、重度の障がいがある人も、自分の身体が動くことが好きな人は数多くいます。ただ下手をすると事故につながるので、用心して利用してください。
金魚運動ではありませんが、ゆっくりと揺すられるだけでも、一定の運動効果はあるようです。重度の障がいがある人の場合、トランポリンの上で寝ている状態でゆっくりと動かしてあげる、そういう利用方法でも運動効果があるという説があります。
寝たきりに近い重度障がいの人でも、事故無くトランポリンに乗り降りできるようであれば、トランポリン運動ができる可能性があります。
(本稿は2019年11月に執筆しました)