東京都美術館「コートールド美術館展」車椅子観覧ガイド バリアフリー情報

東京都台東区上野公園、東京都美術館の「コートールド美術館展」を車椅子で観覧しました。現地のバリアフリー状況を紹介します。会期は2019年9月10日から12月15日です。

東京都美術館へのアクセスです。来館者用の駐車場はありません。JR上野駅公園口からアクセスすると、アップダウンの少ないルートになります。上野公園内の路面は小さなデコボコがあり、車椅子で通行すると軽くゴツゴツと衝撃がきます。部分的ではありますが、デコボコを解消した路面があります。路面の舗装状況を確認しながら、車椅子での移動ルートを選んでください。

コートールド美術館展

コートールド美術館展は、障害者手帳の提示で本人と介助者1名の観覧料が無料に減免されます。会場受付で手帳を提示する運用です。

「障害のある方のための特別鑑賞会」が開催されます。9月23日までの事前申込制で、開催日は休館日である10月28日です。本人と介助者1名まで入館できます。この日に限り事前の申し込みにより駐車場の利用が可能です。

美術館の敷地内に入ると屋外正面にエレベーターがあります。入口がある地階ロビーフロアへ下ります。エントランス周辺はフラットで車椅子での移動に問題はありません。バリアフリートイレはロビーおよび企画展示室内に複数用意されています。ロビーフロアから企画展室に入館します。

コートールド美術館展は3フロアの展示です。上下階移動用のエレベーターは1基です。1つのフロアの鑑賞が終わると、次のフロアへエレベーターで移動します。

各フロアの最終コーナーに美術館スタッフがいて、エレベーターへの動線を案内していただけます。

最後にショップコーナーを通ります。コートールド美術館展のショップは、過去の企画展に比べて通路幅に余裕があります。

コートールド美術館展の車椅子での動線

各フロア内はフラットで、展示空間はスペースの余裕があり、展示作品は壁掛け展示で車椅子からみやすい展示です。

手紙などの小さい資料展示は、やや車椅子からみにくいものもありますが、絵画や彫像は、すべて車椅子から鑑賞できます。

コートールド美術館展の車椅子での動線

高名な画家の有名な作品が並びます。そして画家の代表作の詳しい解説展示があります。作品そのものを楽しむとともに、解説で理解が深まる企画展です。

東京都美術館「コートールド美術館展」は、スペースに余裕がある車椅子で鑑賞しやすい展覧会です。

別稿で「上野 東京都美術館 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報」を掲載しています。ぜひご覧ください。

国立博物館「正倉院の世界」展 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報

東京都台東区上野公園、国立博物館(トーハク)の特別展「正倉院の世界」とミュージアムシアターでのVR作品「正倉院」を車椅子で観覧しました。現地のバリアフリー状況を紹介します。

特別展「正倉院の世界」は2019年10月14日から11月24日の開催。ミュージアムシアター「正倉院」は2019年10月9日から12月22日までの上映です。

ミュージアムシアター「正倉院」

トーハクへはJR上野駅公園口から向かうと、アップダウンが少ないルートでアクセスできます。現在公園口は改良工事中です。連絡橋の完成後は更にバリアフリーになる予定です。

身体障害者手帳をもっている人に限り、トーハクの駐車場が利用できます。事前予約が推奨されています。利用する場合はトーハクに電話で問い合わせてください。

特別展「正倉院の世界」

特別展「正倉院の世界」とミュージアムシアター「正倉院」は、障がい者減免制度があります。障害者手帳の提示で本人と介助者1名の観覧料が無料に減免されます。

どちらも受付で手帳を提示する運用です。ミュージアムシアターは観覧を希望する上映時間の観覧券が発行されます。開場は上映時間の5分前です。

ミュージアムシアター「正倉院」

会場は平成館2Fです。一般来場者はエスカレーターを利用。車椅子ではスタッフの誘導によるエレベーターの利用になります。

平成館の1Fと展示会場の2Fにバリアフリートイレが各1つあります。ややスペースが狭いトイレです。広いトイレを借りたい場合は、本館B1の多機能トイレがスペースに余裕があるトイレです。

特別展「正倉院の世界」

第1会場と第2会場に分かれて第1章から第6章までの展示です。

「国家珍宝帳」など平面的な展示品のほとんどは、ショーケース内に傾斜をつけて展示されています。車椅子からの低い目線でも、鑑賞できます。

大型の展示品、立体的な展示品は、問題なく車椅子から鑑賞できます。

展示会場内の通路はフラットでスペースに余裕があり、車椅子で移動できます。

特別展「正倉院の世界」

「五弦琵琶」の展示は混雑するので、行列ができるスペースがあり、順番で鑑賞する運用です。車椅子で順番待ちの列に並ぶことはできます。

全体的に車椅子での鑑賞に問題のない展示です。今回取材時、会場は混雑していました。その状況では、壁面ケース内の小さい展示物の車椅子での鑑賞は苦戦します。それでも順番を待って鑑賞することは出来ました。

特別展「正倉院の世界」

第1章「聖武天皇と光明皇后ゆかりの宝物」のコーナーは、「国家珍宝帳」など平面的な展示品が壁面ケース内にある展示が多く、混雑時の車椅子観覧は苦戦します。

第2章以後は、大型の展示品が多く車椅子での鑑賞はそれほど困りません。

第5章では小型の工芸品の展示がありますが、展示室内の中台ショーケースを用いて360℃鑑賞可能なので、混雑時でも車椅子から見やすい展示です。

第6章の後半は写真撮影エリアで、大画面による動画放映もあります。スペースに余裕があり、車椅子で鑑賞しやすい展示です。

混雑時は第1章の鑑賞をどうするかが、車椅子利用の最大のポイントです。あまり執着せずに、第2章から先をしっかり鑑賞するのも作戦です。

特別展「正倉院の世界」

ミュージアムシアターは東洋館のB1にあります。東洋館のバリアフリートイレは1Fにあります。B1にはありません。

観覧には上映時間指定の観覧券が必要です。トーハク正門のチケットセンターかミュージアムシアター前の受付で手続きを行います。

開場は上映の5分前。車椅子利用者は最初に案内をしていただけるので、開場前にシアターに着くことをお薦めします。上映時間は約35分間です。

ミュージアムシアターのVR作品「正倉院」

車椅子用の鑑賞スペースが、最前列に1席分用意されています。その横に一般シートがあるので、介助者と並んで鑑賞できます。

正倉院の内外の様子と五弦琵琶の紹介を中心にしたプログラムです。特別展「正倉院の世界」の観覧よりも先に、ミュージアムシアターで「正倉院」を観覧したほうが、より特別展の内容を深く理解できるかもしれません。

ミュージアムシアターのVR作品「正倉院」

国立博物館の特別展「正倉院の世界」とミュージアムシアターでのVR作品「正倉院」は、車椅子で楽しめるプログラムです。特別展は混雑に注意して下さい。

別稿で「東京国立博物館 東洋館 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報」「東京国立博物館 平成館 車椅子観覧ガイド バリアフリー情報」を掲載しています。ぜひご覧ください。

横浜市立金沢動物園 車椅子利用ガイド バリアフリー情報

神奈川県横浜市の金沢自然公園は、激しいアップダウンがある地形です。中核施設の金沢動物園を中心に、車椅子からみたバリアフリー状況を紹介します。

金沢動物園

「金沢市民の森」や「横浜自然観察の森」などがある自然エリアの一角にある、約60万㎡の広大な敷地の公園が「金沢自然公園」です。金沢自然公園を拠点に、周囲の森まで続く複数のハイキングコースがありますが、これらは未舗装で段差があり車椅子では無理なコースです。

金沢自然公園

金沢自然公園は無料の「植物区エリア」と有料の「動物園エリア」に分かれます。

植物区エリアの半分以上は急斜面で、そこに大型遊具があるコーナーやバーベキュー場、梅林など様々な施設があります。このエリアは舗装された散策路が整備されていますが、急坂なので車椅子向きではありません。どこまで行けるかは、その人や介助者の体力次第です。

動物園エリア内は、すべて舗装された見学通路が整備されています。入口付近はフラットですが、その先はアップダウンがあります。一部傾斜が急な箇所があり、そこをクリア出来ないと園内の周回路を廻ることはできません。

したがって一般的な車椅子利用者の場合、「植物区エリア」の平坦な一部分と、「動物園エリア」を無理のない範囲で利用するのが標準的コースになります。

金沢自然公園

アクセスと駐車場の状況です。徒歩圏内に駅はありません。アクセスは車が便利です。

有料駐車場が2か所用意されています。駐車料金は障がい者減免制度があり、障害者手帳等の提示で無料に減免されます。

高速道路である「横浜横須賀道路」から直結する「高速側駐車場」と、一般道路から利用する「正面口駐車場」があり、車椅子での利用方法が大きく異なります。

「高速側駐車場」は上り線からの入庫、下り線への出庫しかできません。障害者減免を受けるには、入庫時に駐車料金支払い機の横にある緊急電話をかけて指示に従ってください。カメラ付きインターフォンではありません。後続の車が続き、電話連絡で時間がかかるのが迷惑な場合は、いったん前金制度に従って料金を支払い、動物園入口の発券所で返金を受けることも出来ます。駐車場には10台分程度の身障者用駐車区画があります。駐車場から公園入口までは、極端な傾斜路を通らずに移動できます。

高速側車場

一般道路から利用する「正面口駐車場」にはスタッフが常駐しています。駐車料金支払い機の手前で、スタッフに障害者手帳等を提示して車椅子利用を申告します。身障者用駐車区画は一般駐車場とは別に坂の上にあります。車両通行止めの柵をあけていただき、公園スタッフのバイクの誘導に従って坂道を上ります。公園入口とほぼフラットな高さの場所に、身障者用駐車区画が3台分用意されています。

正面口駐車場

一般利用者は正面口駐車場から公園入口まで、無料で利用できる「コアラバス」で上ることができます。現在のところ「コアラバス」は車椅子乗車が出来ない仕様です。

「コアラバス」が運行される正面口駐車場から公園入口までの坂道は、細い舗装路で車のすれ違いが出来ません。そのため来園して坂を上るときは、公園スタッフが運転するバイクの誘導を受けます。帰るときは、坂上のバス停から出発した「コアラバス」の後ろについて坂を下ります。

バリアフリートイレの状況です。園内各所にバリアフリートイレが用意されています。現時点で10カ所あります。バリアフリートイレがないトイレは、動物園エリア内の「アメリカ休憩所」の階段の下にあるトイレだけです。

今回取材時の状況では、トイレによって設備更新の状況がバラバラで、ウォシュレットなど付加設備のあるトイレもあれば、老朽化が目立つトイレもありました。チャック出来た限り、ユニバーサルベッドのあるトイレは見つかりません。

障害者用トイレの状況

植物区エリアのバリアフリー状況です。駐車場から公園入口に向かうと、最初にあるトイレ休憩施設が「にこにこプラザ」です。駐車場からここまでのルートおよび「にこにこプラザ」周辺はほぼフラットで、車椅子で問題なく利用できます。

にこにこプラザ

そのままフラットな舗装通路を進むとカフェやショップが入る「ののはな館」があります。ドアは手動ですが館内はフラットで、車椅子で利用できます。館内にバリアフリートイレがあります。

ののはな館

「ののはな館」から動物園エリアに向かう通路は、多少のアップダウンはありますが車椅子で通行可能です。

動物園エリアに向かう通路

「こども広場」や「梅林」、「うきうき林」などがあるゾーンは、車椅子では辛い急坂を下ります。

動物園エリアに向かう通路

動物園エリアのバリアフリー状況です。横浜市立金沢動物園は有料の施設ですが障がい者減免制度があり、障害者手帳等の提示で本人と介助者2名まで入園料が無料に減免されます。入口の発券所で障害者手帳等を提示して無料入園券を発券していただく運用です。

動物園エリアのバリアフリー状況

入口から「なかよしトンネル」を通ります。トンネル内はフラットで、車椅子で通行できます。

なかよしトンネル

トンネルの先「わくわく広場」の周辺や「アフリカ区」は、ほぼフラットです。車椅子で問題なく利用できます。

アフリカ区

「オセアニア区」に行くには坂道を上ります。元気な介助者がいれば何とかなる坂道です。

オセアニア区

「オセアニア区」内のカンガルー舎に近づく見学ルートは、カンガルーの移動を防止するための2枚の手動ドアを開閉して出入りします。見学路はフラットな舗装路です。

「オセアニア区」内のカンガルー舎

コアラ舎内はフラットな構造です。車椅子で問題なく見学できます。

コアラ舎内はフラット構造

「ユーラシア区」と「アメリカ区」は、車椅子ではつらい急坂があります。

「ユーラシア区」と「アメリカ区」

急坂が始まる箇所の路面にサインがあるので、体力の範囲で無理なく利用して下さい。

「ユーラシア区」と「アメリカ区」

金沢自然公園は整備されていますが、車椅子では辛いアップダウンがあります。車で来園して、急坂を避けた無理のない移動範囲だけでも、車椅子で自然や動物を楽しむことが出来ます。

近隣にある豊かな自然に囲まれた山の中の施設「上郷森の家」を別稿で紹介しています。ご参照ください。

(本稿は2019年10月の取材に基づいています)