神奈川県大磯町の「神奈川県立大磯城山公園」は、「旧吉田茂邸地区」と「旧三井別邸地区」があり、また「大磯町郷土資料館」があります。
車椅子での利用は簡単ではありません。車椅子からみた現地のバリアフリー状況を紹介します。大磯城山公園の地区別のバリアフリー概況です。
海沿いの「旧吉田茂邸地区」は、再建された旧吉田茂邸の周囲は車椅子で利用できます。ただし「七賢堂」や「心字池」方面は、車椅子では無理なルートです。
山側の「旧三井別邸地区」第一駐車場からのバリアフリールートは、物凄い急坂の連続で、一般的な車椅子利用者の登坂は困難です。
「旧三井別邸地区」の高台に建つ「大磯町郷土資料館」は、第二駐車場からのアクセスルートが悪路です。それを通過出来れば館内はフラットです。
各エリア、施設の状況を紹介します。
「旧吉田茂邸地区」
大型バスが駐車可能な駐車場があります。身障者用駐車区画は、バススペースの隣に1台分あります。
駐車場からスロープルートが整備され、やや傾斜はありますが車椅子での通行は可能です。
そのまま「バラ園」の横を通り、敷地内へ進みます。入口近くの「管理休憩棟」に、バリアフリートイレがあります。
駐車場は週末有料になりますが障がい者減免制度があります。「管理休憩棟」で障害者手帳と駐車券を提出すると駐車料金が無料に減免されます。園内に新しく整備された歩道は、車椅子で通行可能なバリアフリー仕様です。
「旧吉田茂邸」のバリアフリー状況です。2009年に原因不明の火災で焼失し、2017年4月に再建された「旧吉田茂邸」内の見学は有料です。障がい者減免制度があり、障害者手帳の提示で本人と介助者1名の観覧料が無料に減免されます。
「旧吉田茂邸」の正面入口は階段です。裏に回ると車椅子で利用できる入口があります。
「管理休憩棟」から「菜園広場」方面へ、園内通路を進みます。その先が迂回スロープになり、「旧吉田茂邸」の裏側に続きます。
そこにバリアフリー出入口があり「車椅子の方はお知らせください」と掲示があるインターフォンがあります。この後はスタッフの誘導に従ってください。
館内にはエレベーターがあります。旧吉田茂邸の詳しいバリアフリー情報は、別稿の「大磯 旧吉田茂邸 車椅子見学ガイド バリアフリー情報」をご覧ください。
庭園のバリアフリー状況です。庭園の入園は無料で、車椅子で散策できる範囲は庭園の約半分です。「菜園広場」の先を真っすぐに進むと、西湘バイパスの隣、相模湾岸沿いに出ます。
ここに一か所、5mほどの短い急坂があります。車椅子では力が必用な坂です。そしてその先の「吉田茂銅像」までが車椅子での利用可能範囲です。「七賢堂」や「心字池」方面へは、段差があり車椅子では行けません。
「旧三井別邸地区」
1990年に全面開園した、大磯の高台を利用した入園無料の公園で、その名の通り明治期から三井家の別荘として整備された場所です。
正式なパンフレットに「バリアフリーで回れるコース」が記されていますが、決定的な段差が無い急坂で、現実的には車椅子での登坂は無理です。旧三井別邸地区は超難関のバリアフリーコースです。
来園者は「第一駐車場」を利用します。平日は無料、土日祝は有料ですが障がい者減免制度があり、障害者手帳等と駐車券を管理事務所に提示すると、駐車料金が無料に減免されます。
第一駐車場からバリアフリールートを探しても、急坂しか見えませんが、その坂がバリアフリールートの始まりです。
急坂に加え、路面は舗装路ながらデコボコがあります。また定間隔で溝があり車椅子の進行を妨げます。ただし溝は右端か左端がセメントで埋められ、幅70㎝ほどは溝による段差が解消されています。
駐車場から管理事務所までの距離は50m程度ですが、ここまでたどり着けない車椅子利用者が多いと思われる急坂です。
管理事務所の横が「南門」。ここからが「旧三井別邸」の内部です。ここから最奥部にある「ひかりの広場」に向かい、スイッチバックして「北蔵ギャラリー」の横を通過し、最高地点「展望台」を目指します。この間のルートは、急坂で路面には軽度のゴツゴツがあり、そして5mおきに溝が連続します。
展望台からは雄大な相模湾と真鶴半島、条件がよければ伊豆半島、伊豆諸島までを眺望します。三井家はこの地を接待所として活用していました。展望台付近にある公衆トイレには、バリアフリートイレがあります。
帰りも同じ道を戻ります。車椅子での坂下りはたいへんです。
「旧三井別邸」には、東西南北四つの門があります。ここまでご紹介したのはメインルートである「南門」ルートです。
車椅子利用の場合「西門」または「北門」から入ると、範囲は狭く「不動池」の周辺だけですが、段差なく且つアップダウンなく、車椅子で散策ができます。その場合は「北門」横に1台分だけ無料で利用できる身障者用駐車区画があります。
「大磯町郷土資料館」
入館無料の町営資料館です。2016年に展示内容をリニューアル。明治以後、別荘地として発展した大磯の紹介が加わりました。一般的な町の郷土資料館と同じく、出土した土器などの展示から始まります。
近現代の大磯の紹介コーナーでは、大磯海水浴場が医師松本順の呼びかけで、明治18年に開設されたことや、その当時を写した絵が展示されています。また著名人30人の大磯別荘マップの展示があります。
利用する駐車場は「県立大磯城山公園第二駐車場」です。分かり難く狭い道を進みます。無料駐車場で、1台分身障者用駐車区画があります。
駐車場から資料館までの区間は、ほとんどが荒れた未舗装路面で、車椅子では慎重に進む必用があります。
むしろ荒れた未舗装路通路よりも「ふれあい広場」という芝生広場の中を通行したほうが楽かもしれません。当日の路面の状況で判断してください。このあたりは三井家別荘の茶室の跡地です。
「大磯町郷土資料館」は1988年に開館しました。建物はクラシックですが、館内はワンフロアのフラット構造で車椅子での見学に大きな問題はありません。
館内にバリアフリートイレがあります。今回取材時の状況では、設備はかなり古いものでした。
資料館の正面には三井家別荘の「欄間」が展示されます。また吉田茂はもちろん、伊藤博文、松本順、島崎藤村、大隈重信・・・、と大磯別荘族が紹介されています。
再建された旧吉田茂邸とその周囲はバリアフリーです。大磯城山公園は、車椅子での利用が難しい箇所がある公園です。
「旧大隈重信別邸」や「旧陸奥宗光別邸」がある「明治記念大磯邸園」を別稿で紹介しています。ぜひご覧ください。
(本稿は2017年6月の取材に基づいています)