人形の街、埼玉県鴻巣市で開催される「鴻巣びっくりひな祭り」は、複数の施設が会場になります。その年により会場が変わることもありますが、よく利用されている主な会場の、車椅子からみたバリアフリー状況を紹介します。
なお本稿は「2016年鴻巣びっくりひな祭り」の取材に基づいています。

○「エルミこうのすショッピングモール」のバリアフリー状況
2016年からメイン会場になっています。1Fのセントラルコートに日本一高いピラミッドひな壇が展示されます。

ショッピングセンター(SC)なので、基本はバリアフリー施設。車椅子での利用に大きな問題はありません。鴻巣駅直結のSCで、立体駐車場があります。
立体駐車場は7階建てで、1Fと2FがSCの1Fと2Fにほぼフラットに直結します。
3Fと4FはSCの3Fにスロープで連結。各階に障害者用駐車区画があります。
5F以上に停めた場合は、エレベーターでSC連結階へ移動します。
車椅子利用者は、エレベーターに乗らずにSCへ移動できる、4Fまでに駐車するのが便利です。
駐車料金は、1円でも買えば2時間無料です。

SC内のエレベーターは1系統の2基で、あまり混雑はしません。
障害者用トイレは2Fと3Fに用意されます。広くて綺麗なトイレです。
SC内の床はフラットで通路幅は余裕があります。車椅子での利用に大きな問題はありません。
1Fのセントラルコートの巨大なひな壇は、職人さんが組み立て、人が乗っても大丈夫な強度があります。この壇にボランティアが登って、ひな人形をセットし、地震に備えた落下防止のピン止めをして飾ります。
セントラルコートは、SC3Fまでの吹き抜け構造です。2016年の7mひな壇で、2Fプラス1m程度の高さ。吹き抜け構造を目いっぱい使うと、高さ15m程度までは可能かもしれません。

○「鴻巣花久の里」のバリアフリー状況
正式名称は「花と音楽の館 かわさと 花久(かきゅう)の里」。運営はNPO法人「花と文化のふるさと委員会」です。「花・物販事業」「食の事業」「音楽・芸術の事業」を行っている施設、という案内です。
地元の名士である青木家の屋敷が旧川里村に寄贈され、鴻巣市になってから再整備され、2007年に一般開放された施設です。
常設店舗としては、野菜中心の小さな産直ショップ、それよりはやや規模の大きい園芸品ショップ、そして「うどん」の食事処。母屋はコンサートホールを兼ね、有料貸出の会議室や茶室があります。
堀や庭園も整備された、公民館機能もある施設です。
アクセスは車で、無料駐車場があります。障害者用駐車区画は、一般駐車場とは離れた施設の出入口付近に1台分用意されています。
駐車場から「長屋門」へ向かうルートはバリアフリーで、横に堀があり水が流れ、花壇が綺麗に整備されています。

門をくぐり屋敷内へ入ります。前庭は舗装されてバリアフリー。正面が母屋。前庭を囲むように建物が配置され、門の横手が小さな産直ショップ。母屋の手前が園芸品の販売コーナーです。いずれも車椅子での利用は可能です。
母屋の横から裏手にかけては綺麗なお庭があり、茶室の前は竹林。屋敷内の庭もバリアフリールートが整備されていて、車椅子で散策できます。
母屋に入るとエントランスホールがあり、総合受付があります。右手はコンサートホールになる空間。120名程度までは収容可能ということです。
障害者用トイレは、母屋の中にあります。
母屋とつながる「離れ」には、食事処「花音里(かおり)うどん」。この食事処は1段高いお座敷に上がって、座卓に腰かけて食べる方式。車椅子のままでの利用は出来ません。利用できるのは、靴を脱いで座敷に上がり、椅子に腰かけることが出来る人です。
ただし希望をすれば、エントランスホールやコンサートホールに置いてある、フリーのテーブルや椅子まで「出前」をしてもらえるそうです。車椅子で「うどん」を食べたい場合は、スタッフに相談してください。
この食事処の更に奥にある第二の「離れ」は有料の会議室で、和室の座敷です。
「長屋門」の脇にも会議室があり、こちらは一般的な椅子席で、車椅子で利用できます。
四段組みの梁など建築上の匠の技も面白く、手入れされた庭の花は四季折々とても綺麗です。

○「鴻巣パンジーハウス」のバリアフリー状況
メインは花木の販売。それに農産物も加わり、敷地内には「パン屋」と「うどん屋」がある商業施設です。
1988年開業で2002年に大改装されました。障害者用トイレはあります。
施設出入口近くに障害者用駐車区画が2台分あります。
花の産地鴻巣で、最初に栽培された草花種が「パンジー」。市の花に制定されています。

当初は花木専門の産直ショップでスタート。後に農産物の販売が加わりました。
パンジーハウスは2棟連結の施設。一棟は花木と農産物、奥のもう一棟は花木専門の売り場になっています。
いずれの売り場も、車椅子で回遊することができる通路幅は確保。レジは一か所集中方式。花も苗も、野菜も味噌も、同じレジで同時精算できます。
店前の障害者用駐車区画に停められれば、バリアフリー上の大きな問題はありません。
ここが満車だった場合、一般駐車場から店舗入口までの路面は、デコボコのある未舗装路面です。
お店の入口横に別棟で「鴻巣うどん てらや」があります。車椅子での利用に大きな問題はない店舗です。店内システムは、セルフ+トッピングオーダー方式です。
一般駐車場寄りに、独立店舗でパン屋「ベーカリー オリーブ」があります。「パンジーハウス」からこのお店に行くルートは、短いながらも未舗装路面を通ります。

販売場所は狭く、店に入ると商品が並ぶケースと販売台があり、そこで店舗スタッフにオーダーする方式。店舗出入口のドアは手動です。車椅子では介助者がいないと苦戦する構造です。
店舗内にはイートインコーナーあり。店舗外にもテラス席があります。
うどん屋とパン屋は「鴻巣産の小麦粉」を使用した、地産地消のショップです。
全国に花木の名産地としての鴻巣は、「西洋サクラソウ=プリムラ」は全国生産量第一位、鴻巣市で最も長く栽培されているのは「シクラメン」、そして店名の市の花「パンジー」、この3種はどこにも負けないそうです。隣は花木の卸売市場「鴻巣フラワーセンター」があります。

○鴻巣産業観光館「ひなの里」のバリアフリー状況
旧中山道沿いにある元人形屋の蔵屋敷です。
2012年にオープンした鴻巣市観光協会が運営する施設で、施設の前に障害者用駐車区画が1台分あります。一般駐車場は道の反対側です。

メイン棟と中庭、そして明治期に建造された蔵で構成される施設です。
メイン棟は大きな2階建ての建物で、障害者用トイレとエレベーターがあります。古い外観を残しながら、内部はバリアフリーに改装されています。
入口付近は観光案内所とショップで「川幅うどん」など地元の商品が並びます。
建物の奥は「ひな人形」の展示コーナーで、江戸時代のひな人形から、年代順に希少なひな人形が展示されています。
丁寧な解説があり、ひな人形の歴史をまとめた年表もあります。ひな人形について、深い知識を得られます。
車椅子からでも見やすい高さの展示です。
それぞれの時代によって流行があり、民間信仰や行政政策なども絡んで、現在の「ひな人形」に繋がっていること。三人官女や五人囃子がいつごろから現れたのかなど、わずかな時間の見学で「ひな人形」の知識が高まります。
中庭があります。庭の奥にはイベント開催用の「ステージ」があり、庭の周囲は舗装路で、庭の中心部は芝生です。

そして中庭を挟んでメイン棟の反対側には明治30年代から40年代に建てられた「蔵」。正確には「西蔵」「座敷」「東蔵」という三棟構造。この三棟が一体化して「蔵」になっています。
「蔵」の中は見学自由ですが土足禁止で、「蔵」の中はバリアフリーではありません。車椅子利用者は、蔵の中の見学は出来ません。
解説によると、蔵の中には、人形の原材料や、途中まで加工された状態の人形のパーツ、そしてもちろん完成品など、この蔵が鴻巣市に引き継がれたときの状態が保存されているそうです。
「産業観光館ひなの里」の住所は「鴻巣市人形1丁目」です。現在でも、施設の前を通る旧中山道沿いには「人形屋」がいくつも点在しています。「産業観光館ひなの里」の元のオーナーは、江戸時代から約300年続いた人形屋「吉見屋人形店」です。
この施設は「雛屋歴史資料館」という名称で、2009年まで一般公開していましたが、ついに人形店を廃業することになり、資料ともども蔵屋敷が鴻巣市に譲られたそうです。
そしてバリアフリー改装されて産業観光館「ひなの里」に転換。歴史的な価値のある文化財を、現代の観光に活用しています。
また2Fの会議室や中庭を、低料金で市民へ貸し出している公営施設でもあります。
「ひなの里」は、蔵の中以外は車椅子で利用できる施設です。

鴻巣びっくりひな祭りの各会場は、ほとんどが車椅子で利用できます。