STはSpeech-Language-Hearing Therapist の略、訳して言語聴覚士です。
言語障害、音声障害、嚥下障害がおもな担当領域になり、医療チームの一員として医師やケアマネージャー、PT、OTなどと連携して活動します。
国家資格になったのが1998年と、日本ではまだ新しい資格です。
一次的には、患者の状況を検査し、評価をして、対処法を見出すことが任務で、二次的に医療チームの中で嚥下訓練など実際の対処法の実施も担当します。
お世話になる患者の疾患は様々。
脳性麻痺などの出生時からの問題を抱えている方、脳疾患などにより中途障がいを負った方、特にこれといった病気がなくても高齢化により嚥下障害が起こっている方なども対象になります。
STの活躍の場は、医療機関、特別支援学校などの教育機関、デイサービスなどの福祉機関に広がります。
あまりにも活動領域が広いので、本稿では言葉のでない小児のSTと、嚥下障がいのある高齢者へのSTの2つのケースをご紹介します。
《言葉のでない小児のST》
脳神経科や小児科の医師と連携した活動が基本です。小児に直接接して検査と評価を進めます。
よく行われる手法としては、絵本を読み聞かせる、絵カードなどを利用してコミュニケーションを図る、スイッチを押すと音声の出るボイスマシーンなどを使って遊ぶ、などがあります。
患者との直接コミュニケーションを通じて、言語は聞こえているか、理解の度合いはどうか、発生が無い真因はなにか、などを探ります。
一回の診療は1時間以内が基本。STの先生は、患者を評価し、今後の家庭での取り組み方を指導します。診療は月に1回程度が標準的。家庭で取り組んだ行為の結果を、次の診療で評価し、次の段階に進む、これの繰り返しになります。
脳や聴覚の障がいが原因の場合、自閉症の場合、発語器官に障がいがある場合、育児放棄や虐待など家庭環境が問題な場合など、実に様々なケースがありえます。
検査、評価、対処法の決定と家庭での取り組みにより障がいの改善を目指します。
《嚥下障害のある高齢者》
食道ではなく、気管に食べ物が入り肺にたまる可能性が高い患者の場合です。
積み重なると誤嚥性肺炎になり、命とりになります。
STは患者の摂食状況の観察からスタート。水分の摂取、食事の咀嚼の状況を見て、評価をして、対処法を決定します。
主なテーマは、食事を初期食や中期食にするか、トロミ材の使い方は、摂食の姿勢や方法は、スプーンのタイプはどうするか、などになります。
舌をだして動かすなどの、咀嚼する能力を高めるためのリハビリテーションの方法も考案されます。
本人が自覚して対処できるなら、本人と介助者への指導になります。
家庭内介護の場合は、食事や飲み物を用意するご家族の協力が不可欠。家族に正しい知識を教えます。
最後にST倫理規定の一節を紹介します。
「言語聴覚士は、訓練・指導・援助を受ける人々の人格を尊重し、真摯な態度で接するとともに、訓練・指導・援助等の内容について、適切に説明し、信頼が得られるよう努める。」
言語聴覚に障がいのある人は、STのリハビリテーション指導を積極的に受けてください。
(本稿は2019年11月に執筆しました)