静岡県富士宮市の名瀑。「音止めの滝」など周辺地を含めた場合は「白糸ノ滝」と表記されます。「白糸ノ滝」には観光駐車場があり、車椅子で利用できる展望台が3ヵ所あります。しかし「白糸の滝」の滝壺に近づくには、100段の階段を下ります。
2016年に、階段を回避して「白糸の滝」の滝壺に近づける通路が開通しました。ただし距離は550mで高低差が40mある長距離急坂路です。今回の取材では、車椅子1台と介助者2名で、実際に長距離急坂路を通行しました。現地の状況を紹介します。
アクセスは車です。「白糸の滝観光協会駐車場」ではなく、その奥にある「白糸自然公園」の無料駐車場を利用します。
「白糸自然公園」には広い駐車場があります。観光シーズンでも満車の心配はあまりありません。駐車場内の長距離急坂路に近いエリアには身障者用駐車区画はありませんが、車椅子で乗降しやすい場所に駐車できるはずです。
車両の駐車場入場口から外に出て、長距離急坂路のスタート地点を目指します。
公園の駐車場を出て右に進みます。「この先通り抜けできません」という案内がある舗装路を進みます。
ほどなく下り坂になります。まだこの付近の傾斜は緩く、車椅子での通行に問題はありません。
まもなく車両通行止めの柵と富士山柄のパイロンが置かれる横道があります。ここが長距離急坂路の始まりです。
「白糸ノ滝」まで550mという案内版があります。その先から下り坂が始まります。
この付近は駿河湾を眺望できる高台です。
ここから滝壺の近くまで、急坂が続きます。車椅子は後ろ向き、そしてジグザクに走行すべき傾斜です。しっかりとしたベルトがない車椅子の場合は、絶対に前向き走行はしないようにしてください。危険です。
安全にジグザク走行をすると、直進する場合の倍の距離を走行します。したがって500mの2倍、約1㎞の走行距離になります。
途中に休憩できるフラットな区間はありません。中間地点に「展望場」が整備されていますが、小さな段差の上に傾斜したスペースがあるだけです。
しっかり効くブレーキがある車椅子なら楽ですが、一般的な車椅子の場合、元気な介助者が体力を使い果たす急坂路です。
坂を下り終わる50m手前から、傾斜は少し弱くなります。ここから滝壺まで約100m。最後の50mは未舗装路と上り坂です。ただし、ここまで来ることが出来る人なら、最後の50mはなんとかなります。
滝壺周辺の状況です。最後の坂を上がると、橋の横に出ます。
橋の上から、車椅子で「白糸の滝」を鑑賞することができます。
橋の先は「音止めの滝」方面へ上がる階段路です。
「白糸の滝」の滝壺に最も近い見学台までは、途中に階段があるので車椅子では行けません。
車椅子で最も滝壺に近づけるのは、一般見学者が観光駐車場から下りてくる階段路の手前までです。
この付近からでも、車椅子で利用できる高台の展望台からの眺めとは、全く違う「白糸の滝」が楽しめます。
名瀑鑑賞を楽しんだ後は、来た道を帰ります。上りは体力勝負です。介助者1名ではバテます。複数名で車椅子を押す。または交代で押す。坂の途中で休憩しながら押す。工夫して坂上がりに挑戦する必要があります。
観光案内では健常者の徒歩をイメージして550mの所要時間を「下りは8分、上りは20分」としています。今回の取材では「下り10分」「上り15分」で走行できました。
急傾斜で距離があり、かつ途中に平坦な場所が全くない坂道なのが、堪えます。歩ける人でも、体力に自信のない方にとっては、かなり辛い急坂路です。
これまで車椅子では遠目でしか見ることが出来なかった「白糸の滝」に、「白糸自然公園」からの通路を利用すれば車椅子で近づくことが出来ます。ただし大変な急坂路です。体力に自信のある車椅子利用者と介助者に限り、お薦めします。
富士宮市にある「静岡県富士山世界遺産センター」情報を別稿で掲載しています。ぜひご覧ください。
(本稿は2022年8月に加筆しました)