脳性麻痺は残酷な病気です。成長と共に新しい問題が起こります。
正しい姿勢を保ちにくい病気なので、骨や関節などの変形が進みます。それに伴い痛みや痺れが起こり、排尿、排便、自律神経などに悪影響を与えるケースもあります。不随意運動や体の緊張が強まる人もいます。
現在の日本の脳性麻痺患者に対する医療体制は、一般的に幼児期に手厚く、PT、OT、STなどのプログラムは小学生年代までが中心で、遅くとも18歳までに、多くの医療機関で受診を切られることが珍しくありません。しかし一般的にPTと離される年代からが、二次障がいとの戦いが本格化します。
自分で症状を訴えることが出来る脳性麻痺患者の場合、早い人は20代から、ほとんどの人が30代で痛みや痺れなどの症状があるそうです。一般的なコミュニケーションが難しい重症心身障がいの人では、20歳までにほとんどの人に骨や関節の異常がみられるといわれています。
家族として痛ましいことの一つが、運動面で本人が頑張るほど二次障がいリスクが高まることです。
例えば、クラッチ歩行がなんとか出来る人。あるいは、自立歩行がギリギリで出来る人。脳性麻痺の人で、正しい姿勢で歩行が出来る人は、まずいません。努力して歩くほど、体への負担が増し、二次障がいへとつながる可能性が高まります。
頑張って車椅子で仕事をする人。多くの人は首や腰にダメージが起こります。また側弯が進むと、内臓器官への悪影響も起こりえます。
運動面に加えて、知的な面、コミュニケーション面でも重い障がいがある人の場合、例えば、ズリバイやトンビ座りが態勢や姿勢として悪いとしても、それを禁ずる生活となれば、寝たきりに近い状態を強要することになります。
二次障がいを恐れるあまり、本人の前向きな努力、本人にとっての日常生活を規制してよいのか、という悩みになります。
骨や関節などに起因する二次障がいの治療方法は、多くの場合手術です。手術は必ず痛みが伴います。また一定期間は安静、あるいはギブスやハローベストなどで固定されること多く、そのことによる筋力の低下、運動能力全般の低下が起こりえます。本人が選択する場合も、家族が判断する場合も、手術をするか否かは通常悩ましい問題です。
脳性麻痺の二次障がいをどのように予防するかは、脳性麻痺の子どもが成長してから始まる、家族にとっての大問題です。
(本稿は2020年7月に執筆しました)