発生率は0.17% データでみる脳性麻痺児の実態

発生率は0.17% データでみる脳性麻痺児の実態

2018年に脳性麻痺児に関する調査結果が公表されています。そこで明らかになった脳性麻痺児の実態を数値で紹介します。

公表されている調査は「公益財団法人日本医療機能評価機構」の「脳性麻痺児の実態把握に関する疫学調査プロジェクトチーム」がまとめた「脳性麻痺児の実態把握に関する疫学調査報告書」です。

調査対象は、鳥取県、徳島県、栃木県の3県で、2009 年1月から 2013 年 12 月までの5年間に誕生した子供。データの最終確定は2018年3月です。したがって5歳から9歳の脳性麻痺児が調査対象になっています。

○多くは早産低体重児

3県5年間での脳性麻痺児の平均発生率は、1000人あたり1.7人です。

県別年別での最小値は0.4人、最大値は2.4人。

県別の最小値は1.4人、最大値は2.1人。年別の最小値も等しく1.4人、最大値も等しく2.1人です。

同じく1000人あたりの発生率を在胎週数と出生時体重でみると、

在胎週数27週以下は102.6人、28週から31週が56.1人、32週から36週が6.1人、37週以上は0.8人です。

出生時体重は、1000g未満は81.5人、1000~1500g未満が54.1人、1500~2000g未満が15.3人、2000~2500未満が4.2人、2500g以上は1人未満で、4000g以上の巨大児は1.7人と多少発生率が上がります。

誕生した赤ちゃん全体での脳性麻痺児の発生率は1.7人ですが、そのほとんどは在胎週数が31週以下で出生時体重が2000g未満の早産低体重児です。

○痙直型が70%

いわゆる脳性麻痺のタイプ別には、圧倒的に痙直型が多く70.6%。

低緊張型16.5%、アテトーゼ型4.8%、混合型3.5%、失調型1.3%です。

○原因は分娩時の疾患が7割

脳性麻痺になった原因と思われる要因を複数回答ありで調査したところ

分娩時の疾患が70.6%、分娩前の疾患が32.5%、分娩後の疾患が17.3%です。

分娩時の疾患の詳細は

新生児仮死が 50.2%、脳室周囲白質軟化症 が 28.6%、低酸素性虚血性脳症が 18.2%です。

○重度の障がい児が多い

運動能力のレベルを示すGMFCSでは、最重度のレベル5「車椅子での移動」が42.4%と圧倒的に多数です。

また身体障害手帳の等級は1級が40.3%です。5歳から9歳の子どもが調査対象であり、身体障害手帳の保有者が全体の54.5%なので、手帳をもっている子どもの約75%が1級ということになります。

介助の状況は、「全介助」が52.4%、「一部介助」が24.7%、「介助不要」が14.3%です。

○重複障がい児も多い

知的障がいも伴う子どもが79.7%です。

知的障がいのレベルは、最重度が26.8%、次いで重度が22.5%で、ここまでで約半数になります。

合併症のある子どもは68.8%で、その内訳は重複回答ありで「てんかん」が最も多く41.1%。次いで「嚥下障害」が31.2%、「呼吸障害」が29.4%です。

○7割の子どもは経口摂取ができる

食事の状況は、経口摂取が71.9%、経管栄養が23.4%です。

排せつの状況は、おむつ使用が59.7%、おむつ不要が28.6%。ただし5歳から9歳の子どもが調査対象なので、最終的にはもう少しおむつ不要が増加する可能性はありそうです。

○生存率は9割以上

1歳時点での死亡率は1.3%。

3歳時点での死亡率は3.0%。

調査時点での全体の死亡率は5.6%です。

脳性麻痺児は早産低体重児に多く、その多くは重度重複した障がいを負って生まれています。

(本稿は2020年7月に執筆しました)

別稿で「脳性麻痺児に総額3千万円 産科医療補償制度をやさしく解説」を掲載しています。ご参照ください。