身体障がいのある子の成長と特別支援学校の友達

身体障がいのある子の成長と特別支援学校の友達

小学生時代からよく知っている男の子、A君の実例です。生まれつき身体に障がいがあります。特に下肢の障害が重い子で、自立歩行は出来ずに車椅子利用です。

小学校は、小中一貫の規模の小さい特別支援学校に入学しました。同級生は他に1名。平均して1学年が3人程度の規模の学校です。

A君は上肢の運動能力はあり、知的な障がいは軽度な少年です。A君の入学した学校は、重度障がいがある児童生徒が多い学校です。そのなかでA君の能力は際立っていました。

小学1年生の運動会で、上腕の力を使ってグーンと台車を押して疾走し、他の重度障がいのある子とは異次元の動きを見せ、喝采を浴びました。

A君はしゃべることができます。ただし目立つ場面の人前では、絶対に喋りたがらないタイプです。家に電話をしたらA君が電話に出た、というようなこともあり、皆さんA君の能力に気がついてきました。

学校では内向的で、勉強面、運動面とも積極的に本来の能力を発揮することは少なく、言われるまでは黙っていることが多い子です。

中学生になると、この子は出来る、という学校側の判断で、中学部唯一の準ずる授業受講者、つまり普通校的な授業を受けるようになり、中学生レベルではありませんが、小学生の高学年レベルの授業を、先生と1対1で受けるようになりました。

そして中学部を卒業。人前ではほとんどしゃべることもなく、A君を知る人は皆、本来の潜在能力をうまく伸ばせなかった、という思いがある卒業式でした。

高校は、規模の大きな特別支援学校に入学。肢体不自由部門だけで同級生が20人ほどいます。その中には、A君と知的な能力が同じレベルにある、同じ高校生として、話が出来る子が数人いました。初めて友達と出会えたA君です。

高校に入って最初の1学期で、A君の印象が随分変わりました。お昼休みはいつも仲良しの車椅子3人組でおしゃべりをしています。遠くから見ていると、ゲラゲラ声を出して笑っています。小中学校ではみたことがない場面です。

高校2年生になると、一つ下の学年にも二人、同じレベルの生徒が入ってきました。この子たちとも仲良しです。授業も彼らと同じクラスで、ほぼ普通高校の授業に準ずる学習をしています。

A君高校2年の運動会。友達と一緒に自主応援団を結成して、曲に合わせて上肢で踊っていました。

身体障がいがあることで、友達との出会いが限定されるA君。良き友達との出会いによって、明るい車椅子高校生に成長しました。

(本稿は2019年11月に執筆しました)

別稿で「特別支援学校 準ずる授業を受けるクラスは少数精鋭」を掲載しています。ご参照ください。