中央教育審議会の令和3年1月26日第127回総会において「令和の日本型学校教育の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)」がまとまりました。その中から「特別支援教育」に関する答申のポイントを抜粋して紹介します。
○インクルーシブ教育システムの推進
2013年の学校教育法施行令の改正により、教育委員会は保護者や専門家の意見を聞き、総合的な観点から就学先を決定する仕組みが導入されました。今回の答申では「引き続き,障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けられる条件整備」を着実に進めていく必要があるとしています。
そのための要件の一つとして「文部科学省において設定した令和7度末までのバリアフリー化の整備目標の達成に向けて,学校設置者の取組が加速するよう支援」することが提言されています。
○特別支援学校の設置基準を策定
懸案事項である設置基準は、「国として特別支援学校に備えるべき施設等を定めた設置基準を策定」すべきとしています。ただし基準の難しさに対して複数の注意書きがあります。
「全ての特別支援学校に概ね共通する内容と個別に応じて配慮が必要な内容を併せた,特別支援学校を設置する上で必要な最低基準とすることが重要である」
「現存する特別支援学校のうち基準を満たさない施設等が直ちに使用できなくなること がないよう,国は必要な手当てを講じつつ,設置者は可能な限り基準に適合させるための措置を講じるよう努める必要がある。」
「他の学校の余裕教室を特別支援学校の用に供する場合であっても,必要なバリアフリー化のための整備に配慮すべきである」などです。
そして基準設置の検討に並行して「在籍者の増加に伴う教室不足の解消に向けて,特別支援学校の新設や増築を行ったり,他の学校の余裕教室を特別支援学校の教室として確保したりする等の集中的な施設整備の取組を推進することが求められる」としています。
○寄宿舎は維持
特別支援学校の寄宿舎は「特別支援教育における教育的意義も踏まえ,引き続き,その機能の維持に努めるべきである」とされました。
○就学前から高校卒業後までの切れ目のない支援
義務教育の期間を超えた支援の充実が提言されています。主な答申内容を紹介します。
「5歳児健診を活用した早期支援や,就学相談における情報提供の充実」
「小中学校から高等学校への適切な引き継ぎ」
「本人や保護者が障害の可能性に気が付いていない場合の支援体制の構築」
「高校卒業後の進路に対する情報の引継ぎなど,関係機関等の連携促進」
○教師の専門性の向上
すでに特別支援学校教師の「特別支援学校教諭免許状取得」はもとめられていますが、特別支援学級や一般の学級や通級による指導の増加に対応するために、全ての教師を対象に特別支援教育の専門性を高めることが提言されています。
「都道府県において特別支援教育に係る資質を教員育成指標全般に位置づける」
「小学校等教職課程において特別支援学校教職課程の一部単位の修得を推奨する」
また特別支援学校の教師には「幅広い知識・技能の習得,専門的な知見を活用した指導」ができ、特に「複数障害が重複している児童生徒への対応」ができる専門性をもつことが求められています。
○医療的ケア児への配慮
医ケアが必要な児童生徒のために「学校長の管理下において,担任,養護教諭,関係する医師,看護師などがチームを編成し,一丸となって学校における医療的ケアの実施体制を構築」すべきとしています。そして2つの提言があります。
「学校に置かれる看護師を法令上位置付けることの検討」
「中学校区に医療的ケア拠点校を設ける検討」
《生きるちから舎ニュース 2021年1月27日付》
別稿で「公立特別支援学校1,096校の教室不足 都道府県別の状況を掲載しています。ご参照ください。