公立特別支援学校1,096校の教室不足 都道府県別の状況

令和4年3月1日付で文部科学省より「令和3年10月1日時点」の「公立特別支援学校における教室不足調査の結果について」が公表されました。

集計単位は都道府県で、全国で3,740室が不足しているとしています。

前回の調査は令和1年5月1日時点で、3,162室の不足。2年5か月で教室の不足数は、全国で578室増加しています。

都道府県別では、人口と学校数が多い大都市圏の教室不足数が多く、東京都が514室、大阪府が528室などとなっています。

特別支援学校の教室不足数が少ないのは以下の県です。

・鳥取県 0室

・高知県 1室

・秋田県 3室

同調査では、各都道府県の「教室不足の解消に向けて集中的に取り組むための計画」の有無が確認されています。教室不足数が50室以上で、計画がないのは以下の府県です。

・神奈川県 不足教室数 161室  計画無

・三重県  不足教室数  90室  計画無

・京都府  不足教室数 115室  計画無

同調査では、校舎と運動場の「必要面積を満たしている学校数」も公表されています。

全国1,096校の内、校舎の面積が不足している学校数は329校(30.0%)、運動場の面積が不足している学校数は479校(43.7%)でした。

全ての特別支援学校が「校舎」の面積を満たしているのは以下の県です。

・石川県 全11校

・鳥取県 全  9校

この問題に対して文部科学省は「公立特別支援学校の新増築等の施設整備に対し、優先的に国庫補助を行っている」としています。

《生きるちから舎ニュース 2022年3月2日付》

別稿で「特別支援学校設置基準が公布 施行は令和4年4月」を掲載しています。ご参照ください。

特別支援学校設置基準が公布 施行は令和4年4月

令和3年9月24日、文部科学省より、令和3年文部科学省令第45号「特別支援学校設置基準の公布等について」が通知されました。

校舎の面積、1学級の児童生徒数、運動場の面積、学科の種類、教諭等の人数、校舎に備えるべき施設や校具及び教具などが規定されています。

例えば、小中学校のクラス人数は6人(重複障がいの児童生徒は3人)以下で、クラスに1人以上の教諭を配置するとしています。

校舎には、教室、自立活動室、図書室、保健室、職員室を備え、幼稚部、小学校、中学校、高校別に、児童生徒数に応じた校舎と運動場の最低面積が決められています。

この設置基準は「特別支援学校を設置するのに必要な最低の基準として位置付ける」とし、「この設置基準より低下した状態にならないようにすることはもとより、これらの水準の向上を図ることに努めなければならない」と定められています。

一方「設置基準の特例」が認められ、「都道府県の教育委員会」が「この基準に準じて、別段の定めをすることができる」と弾力性のある運用が認められています。

施行は「総則及び学科に係る規定については令和4年4月1日」です。

「編制並びに施設及び設備に係る規定については」、「現在建設計画中の特別支援学校もあることから、急な計画変更等により建設や開校の時期が遅れたり計画変更のために追加の費用が生じたりすることを避ける観点から、他の建築関係法規の例に倣い」、「令和5年4月1日から」としています。

《生きるちから舎ニュース 2021年9月24日付》

別稿で「新時代の特別支援教育の在り方 答申案がまとまる」を掲載しています。ご参照ください。

新時代の特別支援教育の在り方 答申案がまとまる

中央教育審議会の令和3年1月26日第127回総会において「令和の日本型学校教育の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申)」がまとまりました。その中から「特別支援教育」に関する答申のポイントを抜粋して紹介します。

○インクルーシブ教育システムの推進

2013年の学校教育法施行令の改正により、教育委員会は保護者や専門家の意見を聞き、総合的な観点から就学先を決定する仕組みが導入されました。今回の答申では「引き続き,障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けられる条件整備」を着実に進めていく必要があるとしています。

そのための要件の一つとして「文部科学省において設定した令和7度末までのバリアフリー化の整備目標の達成に向けて,学校設置者の取組が加速するよう支援」することが提言されています。

○特別支援学校の設置基準を策定

懸案事項である設置基準は、「国として特別支援学校に備えるべき施設等を定めた設置基準を策定」すべきとしています。ただし基準の難しさに対して複数の注意書きがあります。

「全ての特別支援学校に概ね共通する内容と個別に応じて配慮が必要な内容を併せた,特別支援学校を設置する上で必要な最低基準とすることが重要である」

「現存する特別支援学校のうち基準を満たさない施設等が直ちに使用できなくなること がないよう,国は必要な手当てを講じつつ,設置者は可能な限り基準に適合させるための措置を講じるよう努める必要がある。」

「他の学校の余裕教室を特別支援学校の用に供する場合であっても,必要なバリアフリー化のための整備に配慮すべきである」などです。

そして基準設置の検討に並行して「在籍者の増加に伴う教室不足の解消に向けて,特別支援学校の新設や増築を行ったり,他の学校の余裕教室を特別支援学校の教室として確保したりする等の集中的な施設整備の取組を推進することが求められる」としています。

○寄宿舎は維持

特別支援学校の寄宿舎は「特別支援教育における教育的意義も踏まえ,引き続き,その機能の維持に努めるべきである」とされました。

○就学前から高校卒業後までの切れ目のない支援

義務教育の期間を超えた支援の充実が提言されています。主な答申内容を紹介します。

「5歳児健診を活用した早期支援や,就学相談における情報提供の充実」

「小中学校から高等学校への適切な引き継ぎ」

「本人や保護者が障害の可能性に気が付いていない場合の支援体制の構築」

「高校卒業後の進路に対する情報の引継ぎなど,関係機関等の連携促進」

○教師の専門性の向上

すでに特別支援学校教師の「特別支援学校教諭免許状取得」はもとめられていますが、特別支援学級や一般の学級や通級による指導の増加に対応するために、全ての教師を対象に特別支援教育の専門性を高めることが提言されています。

「都道府県において特別支援教育に係る資質を教員育成指標全般に位置づける」

「小学校等教職課程において特別支援学校教職課程の一部単位の修得を推奨する」

また特別支援学校の教師には「幅広い知識・技能の習得,専門的な知見を活用した指導」ができ、特に「複数障害が重複している児童生徒への対応」ができる専門性をもつことが求められています。

○医療的ケア児への配慮

医ケアが必要な児童生徒のために「学校長の管理下において,担任,養護教諭,関係する医師,看護師などがチームを編成し,一丸となって学校における医療的ケアの実施体制を構築」すべきとしています。そして2つの提言があります。

「学校に置かれる看護師を法令上位置付けることの検討」

「中学校区に医療的ケア拠点校を設ける検討」

《生きるちから舎ニュース 2021年1月27日付》

別稿で「公立特別支援学校1,096校の教室不足 都道府県別の状況を掲載しています。ご参照ください。