2020年5月に道路法等の一部が改正され、同年11月25日に施行されます。法改正のポイントは、「歩行者利便増進道路」「自動運行補助施設」「特定車両停留施設」が法律上規定されたことで、それにより道路と交通のバリアフリー化の推進が期待されます。具体的にどのようなことが想定されるのか。そのイメージを簡潔に紹介します。
なお解りやすさを優先して、網羅的な説明は省略させていただきます。ご承知おきください。
「歩行者利便増進道路」
○広い歩道にカフェやベンチ
これまでの法律では、車道と歩道が道路として規定されていましたが、この度の改正で新たに「歩行者の利便増進を図る空間」が追加されました。
歩行者利便増進道路のイメージとしては、都市の道路の車道を狭めて、歩道を拡張し、拡張された歩道にオープンカフェやベンチが用意された、歩行者が滞留して賑わいがある道路です。
○税制特例や規制緩和で応援
詳述は避けますが、道路法改正に加えて、税制上の優遇措置や占用制度の緩和、各種行政手続きの簡素化や一本化などを併せて推進し、官民一体になった新しい公共空間の創出を後押しします。
国土交通省は「5年で概ね50区画」の「歩行者利便増進道路(ほこみち)」創出を目標にしています。
○「ほこみち」はバリアフリー基準を適用
そして「ほこみち」は、バリアフリー法の基準に適合することが「道路構造令」で定められました。障がい者にやさしい、滞留して賑わいがある道路がこれから誕生します。
「自動運行補助施設」
○車の自動運転のための施設や設備を設置
新しい技術「自動運転」を推進するための、道路の利用方法が規定されました。もちろん自動運転技術を発展させ、実用化することが目的です。
現時点で目玉政策としてイメージされているのは「トラック隊列走行」です。運転者は複数台数のトラックの先頭車両だけで、後続車両は無人運転する技術です。
そのための自動運転を補助するセンサーを道路上に設置し、トラックの隊列を切り離す施設などを設けます。
○工事費用の無利子貸し付けで推進
そのような施設や設備を車道上に設置できる要件を決め、また占有料を「道路法施行令」で定めます。
また「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律施行令」などにより、自動運転推進事業者への資金支援を行います。
○インフラは身体障がい者の運転支援へも活用
現在の活用イメージは商用利用ですが、自動運転の道路側のインフラが整備され、車側の技術が上がれば、将来的に一般車両への応用が広がることが期待されます。運転のバリアフリー化が進むはずです。
「特定車両停留施設」
○バスタ新宿はバリアフリー法適用外だった
バスやタクシーの専用ターミナルを法的に規定しました。これまでは法律がなく、例えば「バスタ新宿」は、法的には道路上の駐車場という定義でした。そのため、バリアフリー法の対象外で、バスタのためのバリアフリー基準はありません。
○バリアフリー基準は2021年3月に施行予定
現在、国土交通省の「道路空間のユニバーサルデザインを考える懇談会」で、「旅客特定車両停留施設の道路移動等円滑化基準」(バリアフリー基準)について議論されています。
ハード基準とソフト基準を整備し、令和2年度末までに施行される予定です。
○全国のバス・タクシー乗り場がバリアフリーに
様々な障がいのある人にとって、バス・タクシーの利用はまだまだ困難が多いのが現実です。
今回の法律が適用されるのは「道路管理者が整備・運営するバス、タクシー等の専用ターミナル」です。全てのバス停、タクシー乗り場にバリアフリー基準が適用されるわけではありませんが、これから専用ターミナルのバリアフリー化は進みます。
2020年の道路法改正により、道路と交通のバリアフリー化のいっそうの推進が期待されます。
(本稿は2020年11月に執筆しました)