国連総会で「障害者権利条約」が採択されたのが2006年。日本は2014年に国連に条約の批准書を提出し、141番目の締約国になりました。これにより障害者を取り巻く環境、制度、社会的な意識は大きく変わり、現在につながっています。
第二次世界大戦後、国際社会が国連でどのような取り組みをしてきたのか。障害者の権利に係る歴史をダイジェストで紹介します。
もちろん本稿では紹介を省略した重要な条約、宣言などがほかにもあります。以下が全てではないことはご承知おきください。
また本稿では歴史的に国連採択を和訳した際に使用されてきた「障害者」という漢字表記を使用します。ご了承ください。
1948年「世界人権宣言」
この宣言が全ての出発点といえます。
第1条は「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳及び権利について平等である。人間は、理性及び良心を授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」
第2条は「この宣言に掲げるすべての権利と自由が、差別なく、すべての人に享受される。」
人種、性別、年齢そして障害など、すべての差別を否定する宣言です。
1955年「障害者の職業リハビリテーションに関する勧告」
障害者が職業訓練や雇用の機会に参加する権利に関する文書です。障害者と仕事の問題に関して原点となる勧告です。
1960年「教育における差別を禁止する条約」
ユネスコ第11回総会で採択されました。障害者と教育に関する最初の一歩となった条約です。
1971年「精神遅滞者の権利に関する宣言」
これが国連における障害者を対象とした最初の宣言です。
1975年「障害者の権利に関する宣言」
障害者を主体にした歴史的な宣言です。総会では無投票採択されました。
1976年「国際障害者年の宣言」
第1項で「1981年を国際障害者年」と宣言し、第2項で「この年(1981年)を以下を含む諸目的の実現にあてることを決定する。」とし、5年間で解決すべきテーマを定めています。
1981年「国際障害者年サンドバーグ宣言」
ユネスコがスペインで開催した「教育、予防、統合のための行動および方略に関する世界会議」で採択された宣言です。障害者の社会生活参加と統合教育の実施を基本方針として、具体的に進むべき方向や方法を定めています。
1982年「障害者に関する世界行動計画」
障害の予防やリハビリテーション、障害者の社会生活および社会の発展への参加と平等の実現を目標にした文書です。目標達成のための具体的な内容や方法を、国際的レベル、地域レベル、国内レベルで明示した内容で、具体性が高い計画書です。
また「1983年から1992年を国連・障害者の十年」と宣言し、加盟各国に「この期間を障害者に関する世界行動計画を実施する手段の一つとして活用すること」を勧告しています。
1989年「児童の権利に関する条約」
この条約の第23条は「障害児の権利」で、「締約国は、精神的または身体的な障害をもつ児童が、その尊厳を確保し、自立を促進し、社会への積極的な参加を容易にする条件の下で、十分かつ相応な生活を享受すべきであることを認める。」としています。
1993年「ウィーン宣言および行動計画」
ウィーンで開催された世界人権会議で採択されました。第22項では「障害者が社会のあらゆる面に積極的に参加することを含め、障害者への非差別、あらゆる人権の平等な享受と基本的自由を保障することに特別な注意が払われる必要がある。」としています。
歴史的な国際社会での取り組みが、現在の社会につながっています。
(本稿は2020年5月に執筆しました)